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ボイスリアクト  作者: 夕村奥
第一章
2/31

想定外

俺たちはギルドの頼りにはならない。しかし、武器や防具がなければ危険なたびになるだろうし、なければとても危険なものになるだろう。ボイスリアクトいうのはどうやら対象について詳しく知らないと一から作れないらしい。それで、武器屋を探そうという話になった。俺としてはボイスリアクトがあるので武器は必要ないと考えているのだが彩子を危険から守るための武器は必要かもしれない。とにかく、油断は禁物だ。備えあれば憂いなしというのはこのことだ。俺たちがその武器屋に入ると、剣や盾、杖や弓などが小さなものから大きなものまで売り物として店中に飾られていた。俺はゲームのことはほかの人よりは詳しいものと自負してはいるが、俺はさっきも自分のことでさえ評価できていなかったからそれについては少し自信がない。自信過剰なのかもしれんが。俺自身のことでさえ理解出来ない俺自身が世界観に影響を及ぼし得るのか。俺はあれからずっと悩んでいるがこんなことでぐずぐずしている場合ではない。それより、今は武器の話だ。俺がしたことのあるゲームは戦闘系ゲームとロールプレイングゲームで戦闘系はやりこんだものだ。俺には相棒がいて、ロングソードと腕に装備するバックラーだ。ロングソードは重くて俊敏性に欠けるが、それはバックラーで補い、ロングソードの攻撃力で一刀両断する戦法が俺のスタイルだった。たまに出現するボスがいたのだが、俺は当然何度も立ち向かった。ソロとして俺一人でボスという難攻不落の壁に立ち向かえるのだからあれほどワクワクするものは当時見当たらなかった。ボスを倒したときは大はしゃぎで喜び、よく母親に話したものだ。当時は中学生だったこともあり、母親からはよく子ども扱いされたものだ。たとえ子ども扱いを受けても俺はゲームの世界に立ち向かった。俺がもしここでゲームを何の理由なく辞めたら、あとで絶対後悔すると思ったからだ。俺は現実では毎日誰かには怒られていて、自分には価値がないとおもっていた。けれどもどんな小さなことでも途中であきらめたら、俺が俺じゃなくなると思った。俺は俺自身がなぜゲームに向き合っているのか気づくまでは、続けてもいいと思っていた。俺は現実ではこんなだけど、ゲームの世界ではこんなことができるんだ。あの現実は嘘に決まってるし、俺の価値はあんなものではない。そんなことを考えながらよくゲームをしたものだった。振り返れば、とても熱中していたのだと思う。あそこまでゲームをやりこんだのだから、絶対にこのゲームの世界でも活躍できると思っている。俺は彩子をサポートできるように早く強くなって彩子に一人前の男として認められたい。早くレベルを上げて一人前のプレーヤーにならないと俺自身に俺までの説明をできない。しかし今の俺のレベルは24だ。俺のステータスは550くらいで、少し強い敵が現れるだけで負けてしまうだろう。負けないにしても役に立たない可能性の方が高いだろう。俺はパーティーを組んだ方がいいと考えてみたことはあるが、俺は中途半端なプレイヤーは欲しくないと思っている。俺の目的は強くなるためではなく、世界観に貢献する事が叶うような存在になることだ。やはりこの目的のためになる人物パーティーを組みたいと思っている。少しわがままかもしれないが昔から俺はこんな性格だ。この武器屋の武器や防具には様々な施しをされているようだ。俺の昔使用していた白銀に輝くロングソードもここにあるんだろうか。俺の使っていたロングソードを実際にふるえればこんなに幸せなことはない。

「彩子、好みのものはあった?」

「私に似合う武器ってあるのかな?」

「俺に似合う武器はあるかなあ?武器って本当に必要なのか?」

「武器はとても重要だと思うよ。この店の品物も売れているから売り物として売られているんだと思うよ」

「そうだよな、俺そこんとこわからなくて」

「少し見ていこうか」

「そうね」

この武器屋にはロングソードはないのか?せっかく武器屋に来たのだからロングソードに一度お目にかかりたいと思う。ここは結構大きな武器屋なのだから見つかるはずと思うのだが。俺の装備していたバックルに似ているものはあったんだが、どうもロングソードがないとしっくりこない。

「すいません、ここにロングソードは置いてませんか?」

「そうですね、ここに置いてあるロングソードは高価なので奥にあります。見ていきますか?」

「お願いします」

「少しお待ちください」

「そういえば彩子手先が器用だったよな。両手剣なんてどうか?」

「私にも盾みたいなのも欲しいわ」

「そういうのは俺に任せてよ。これでもゲームの熟練だったんだぞ」

「あなたの手ばかり借りたくない。自分だけでも守れるようにならないといけないと思わない?」

「鎧だってあるぞ。できるだけ強力なものを選べばいいじゃん」

「鎧だけじゃ十分に守り切れないな」

「それよりあなた、ゲームやってたとか言ってたけど、全然詳しくないねー」

「詳しすぎて細かい知識なんて忘れちまったんだよ」

「うそでしょ、それ?」

智也はたまに嘘をつくことがある。智也はなぜゲームをしていたのかはわからないが智也はいつもゲームのことになれば人一倍熱くなって語り始める。何がそんなに熱くさせたのだろうかいまだにわからない。一度も負けたことないとかギルドの団長だとかゲームの話になると私に語る。彼の行動を見てるとそんなことはないと思うのだが、彼はたぶん私に見栄を張りたいのだと思っている。

「そういえばあなた、お金持ってるの?」

「そんなもんボイスリアクトで出せばいいだろ!」

「簡単に言うけど」

「任せろ!」

「クリエイト・・・・マネー」

彼らの目の前には突然日本円の100万円の束が出現した。彼らは驚きを隠せず、その光景に見事に心酔した。

「すげえ」

「そうね」

「でも、これって、日本円じゃん。このギルドで変えてくれるのか?」

「わからないけど、とりあえず武器屋の人が来たら聞いてみましょう」

「おう!」

「お待たせしました。これがロングソードです。全部で6本あります。ぜひご覧ください」

「こちらのロングソードは表面には龍の牙が使われており、結構な攻撃力を秘めています。最低装備レベルは44で中級冒険者用です」

「こちらはとある一流職人が作成の携わっており、攻撃力、耐久力も抜群です。ただ、一流職人が関わっているので値段がほかの5つに比べて比較的高いです」

「こちらは国のギルド戦で7位の剣豪サルトさんが愛用している通称サルトアイとよばれるロングソードです。しかし、こちらは案外量産されていて安く手に入ります。そういうこともありたくさんの冒険者に使われています」

「こちらは私特注で防御力に磨きに磨きをかけて作った防御力においては類を見ないほどの剣です。ただ、防御力を上げ過ぎたため攻撃力は通常よりも少し劣ります。しかし攻撃力は盾よりも圧倒的に高いので攻撃も防御も兼ね備えたい方によいです」

「こちらは他国から取り寄せたものですが、性能は普通で特徴がないことが挙げられます。しかし、他の5つと比べれば結構安いのでお勧めです」

俺は5つのロングソードを吟味したのだが、何かピンとこない。結構いいものぞろいだが、俺に見合う武器はないものなのかと落胆したのだった。しかし、彩子は防御力の強化された剣が好みのようで、購入したいようだ。もちろん俺も防御力も欲しいのだが、攻撃力も欲しい。そうではなく、俺の望みはそのステータスには関係ない俺専用の武器なのだ。

「こちらは初心者おすすめのロングソードです。初心者には短剣や片手剣などがおすすめなのですが、どうしてもロングソードが使いたい人の為の比較的に軽くて使いやすいものです」

「そういえば、6つ目のものはどうなんですか?」

「それなんですが、こちらは随分特殊で別の世界から来た冒険者がこの武器屋に寄付くださったもので、何か特殊なものが付与されているようで、紹介したいのですがよくわからず」

「そうなんですか。それで、この武器の特徴は?」

「この武器はある人物がボイスリアクトで創ったものらしく創造値というものをより引き上げてくれるらしいです。しかしこれはそのボイスリアクトの所持者でないとただの普通の剣でその所持者が現れないのでずっとここに残っているのです。

驚きだ。先にこの世界に来た人物の中にボイスリアクトを持っていた人物がいたなんて。それで気になるのはなぜその人物はわざわざ武器屋にボイスリアクトを寄付したのだろう。俺だったらそんな武器をつくったら絶対自分で使うものを。世の中には自分の理解できないこともあるものよ。

「またあなた、ボイスリアクトって単語が出てきたね」

「そうだな。ここでもその言葉が聞けるなんて思ってもみなかったな」

「やっぱりボイスリアクトって結構有名なのかな?」

「そうかもしれないな。今度使うときは警戒したほうがいいかもしれない」

「お待たせしました」

俺たちは突然武器屋のある場所に連れていかれた。この単語はそこまで恐ろしい言葉なのか。もしかして俺たちがすれ違った人たちにも持っている人がいたのかもしれない。有名になっているということはそれなりの理由があるはずだ。多分なにかこのアイテムはとてもこの世界の重要な役割を果たしているのだろう。しかし俺はそこまで詳しいことはわからない。結構強い言葉なのはまちがいない。俺たちの身は俺たちだけで守らないといけないな。

「この町でボイスリアクトという言葉を使うのは危険です。何時何人がその言葉を聞いているのかわかりません。あなたにこのロングソードを差し上げます。これは2か月前に来た冒険者がこの武器屋に寄付したものです。その人物によれば、この町はとても危険で街はどことなくにぎやかなのだが、少し不審な動きをすれば、標的になる恐れがあるとのことです。ボイスリアクトはこの世界でとても貴重なものです。この世界で1000個ほどしか存在しないと言われています。この世界には100億の人間と1000億のモンスターが生息します。その中で1000個なのでその貴重さはわかるでしょう。ウェダーボイスリアクトはその中でも5つしか存在しないと言われています。これは世界を変えることのできる力を持ったものすごく貴重なものです。一般人が使用することは不可能だと言われています。このロングソードの強さは言って差し上げたとおり、創造値というものに依存します。創造値は単純にステータスによるものではありません。むしろステータスとは全く異なり、反対と言っていいほどです。ボイスリアクトは普通の人は知っているわけありません。この町は異世界から召喚される人物が多いから知っているひとも多いのですが、それでもほとんど知らないはずです。ギルドならまだしも、普通の店員が知っていることはまずありません。これでボイスリアクトのことを言って反応されたら、間違いなく罠といってもいいでしょう。十分注意してください」

「この剣はボイスリアクトで創造できる創造力を引き上げることができます。これで新たなものを生み出せるハードルが下がりましたので助けになるはずです。道を踏み外さないように注意してください」

「そうなんですね・・・・」

「いやあ、いかんいかん。つい重い話をしてしまった」

「わしも、騙されたことあったからのう」

「ある朝、ある人物がやってきて武器を交換してくれとのことだったのだが、その武器の値段を高く売ってくれといわれたことがあってなあ。わしが鑑定してみてもこの剣が銅貨3枚ほどしかなかったのだ。その武器と交換できるものがわしの店にはなくて、でもその男がこれは銀貨8枚の価値があるなんてぬかしやがって」

「いや、いいです。まさかこんな方だったなんて。つい、まじめなおじいさんだと拝見しましたが、そうではなかったのですね」

「わしはむしろ変人なんじゃよ。他人のことなんて全く気にせず毎日武器を打ちつづけてきたんじゃ」

「わしの話も本当とは限らんから、もし違うようでも怒らんでくれ」

「あたりまえですよ。こんな優しいおじいさんに怒りませんよ」

「それはよかったぞい」

「それでもよかったんですか?こんな高価なもの。俺なんかが」

「いいですよ。それが寄付差し上げてくれたひとの要望なのですから」

「ありがとうございます」

「礼なんていいですよ。それなら冒険者に言ってください。その冒険者はウェーゼというところに行ったみたいですよ。だいぶ前ですけど」

「その街なら俺たちも行くんですけど大丈夫なんでしょうか?」

「その街までの道中に2つの難所が待ち受けています。一つ目には湖で中級冒険者でも歯が立たないベンドラという絶大王イカなるものがいて、通行人を待ち伏せて人を食っているようです。2つ目はそこには上級冒険者でも太刀打ちできないものがいるらしいです。参考にしていただけると幸いですが上級冒険者のステータスが最低800最高1550です。その上には超級冒険者という階級があり、ステータスは最低1550最高2300です。超級冒険者には獣人の英雄サルシャや剣豪サルト、勇者の側近賢者ドドンといものがおります。ちなみにいずれもステータスは2000を超えています。遭遇すれば直ちに洞窟から出て、できれば洞窟の前に高速で逃げれる何か残しておくことをお勧めします」

「そうですか。わかりました。それで私はその化け物から逃げることができるのでしょうか?」

「上級冒険者でもほとんど逃げ帰ることができなかったのですから、ステータスは最低1000は欲しいですね。それとボイスリアクトをなるべく使えるようにしておくのがおすすめです。これは新たなものが生み出せるみたいですからステータスが低いとしても遭遇しても逃げることができるかもしれません。この町のギルドは参考になりませんがこの町から大都市のウェーゼまでの道中に中規模の都市オルガというところがあります。そこの裏のダンジョンでステータスとレベルを上げておくことをお勧めします」

「しかし、私が言うことももしかしたら間違いであるのかもしれません。これは参考までにしてください」

「わかりました」

「頼みますよ。何が起こるのかわかりませんから」

「それで一つ聞きたいことがあるのですが、普通の店でボイスリアクトというなが通った時、その人がした話を信じますか?」

「変な質問ですな。私であれば十分注意してその人の質問に耳を立てて聞きますな。そして、間違いがあれば、その人の話は聞きませんな」

「そうですか。もう行きます」

しかし俺はどうすればいいのか?あの店主を信じればいいのか、武器屋の人の話を信じればいいのか?どうしてもあわないところがある。あの店主が言っていた話だとボイスリアクトの数は50個らしい。しかし武器屋の人の話だと数は1000。二人の話にも共通点はあった。俺にはどちらの人の話も本当だと感じる。どうした、俺。ここで悩んでていいわけがない。あの店主の性格もとてもいい人そうだったが間違いがあるのかもしれない。しかしこの武器屋の人が嘘を言っているとは思えない。異世界から来た人がこの武器をくれたと言っているのだ。それに別の世界から来る人のことも知っていた。いいや、どちらもだ。どうすればいい。どうすれば・・・・・

「大丈夫?」

彩子が口を開いた。

「あなたが何を考えるのかわからないけど、そんなに頭を悩ませなくてもいいんじゃない?入念に準備をしておけば何とかなるんじゃない?」

「そういう問題じゃない。命がかかわっているから簡単に決めていいとは限らない」

「そうじゃない。そんなに頭を悩ませても決められることも決められないよ。自分が何をしたいのか思い出せない?」

そうだ、俺は自分の周りの世界が気に入らなかったからそれを変えるために旅を始めた。それに俺は彩子と共に旅をすると決めたんだ。これまでの自分の身の回りの状況がつくる自分を認められなくて俺はこの世界を変えたいと思った。でも俺一人で変えられる世界なんてちっぽけだから仲間をつくるために俺は旅を始めたんだ。命だけあれば後はなんでもできるのは極論だと思うがそれでもやってやりたい。こんなところで止まってたまるか。

「私この剣買いたいんですけどお金がなくて、・・・」

彩子が突然こう言ってさっきのロングソードに興味があるとさりげなくいった。

「だったら立て替えで大丈夫ですよ。あなたたちもこの世界に来たばっかりでお金もないようですから」

「ありがとうございます」

「この剣は俺の特注でね。攻撃もできて防御もたやすい代物なんだ。この剣があれば人を守れる剣士なんてのも夢じゃない。ぜひ大事に使ってくれ」

武器屋の職人は彩子に満面の笑みをこめてそういった。俺もそれを聞いて多少ムズムズしたがうれしかった。パートナーが褒められるというのはここまでうれしいものなのか。

「俺はバッグラーを探しているのですが」

「それだったら、これなんかがおすすめです」

「いいバックラーだな。俺のゲームで使っていたものそっくりだ」

「じゃあ、彩子にもおそろいの一つお願いします」

「あいよ!」

「お金は建て替えといてくれ」

「あいよ、じゃねえよ」

「ははっ」

武器屋の中で談笑が響いた。智也が笑うことは珍しい。毎日笑っているふりをしているが、ほんとに笑っているのかわからなかった。でも、今はほんとに笑っているようだった。

「いいの?でもあなたとおそろいって何か違和感がある」

「彩子これ欲しくなかった?」

「そうじゃないけど」

「いいじゃん俺の使っていた装備そっくりなんだ。一生のお願いだと思って」

「そうなのね。しょうがないわね、つけても減るもんじゃないし」

「おお、つけてくれるのか」

「今度は私のお願い聞いてよね」

「おう!」

彼らは武器屋を出て、そのままあの町を出た。武器屋を出て何となく怖くなった。あの町で今現在何が起こっているのだろうか。武器屋の職人の言うとおり悪い街である可能性も捨てきれない。いや、彼は悪いとは言っていなかったから大丈夫なのかもしれない。しかし気を付ければなんてことはないだろう。と智也は考えながら、あの大都市まで向かうために歩き出した。これまでいろいろとこのゲームの世界のことを体感して少し驚嘆する部分もあり怖くもなった。だからこそ旅というものは意味を持つのかもしれない。彼はそういうふうに考え事をしながら、湖へと続く道を彩子とともに歩み続けるのだった。


「湖っていつ見えるんだ」

「さあ」

「あの店主や職人によれば、湖や洞窟が難所だということらしいが、そこに着くまでに疲れ切ってモンスターに襲われてしまうんじゃないか?ここまで2時間は歩いたけど湖なんて全く見えないぞ。あいつわしのことは信じるなとか言ってたが湖があるというのも嘘なのではないのか」

「まさか。さすがにあんな嘘誰もつかないと思う。」

「くそ、ここまで旅路がつらいとは思わなかったぜ。それより少しづつあたりの林が騒々しくなってきたが、大丈夫なのか?」

「あ、あそこにすこし空き地があるよ。休憩していきましょう。」

俺らは待ち望んでいた旅はこうも予想と反するのか。旅に想定外はつきものだ。厳密にプランを立てても、当日の不備や天候の不調で容易に計画が変更される場合がある。俺はこんなことでへこたれるやわな人間なのか。彩子が俺に朝、家でつくっておいたスープが入った水筒を俺に渡してくれた。彩子はこういう時いつも助けてくれるし俺が落ち込んだ時に気づいてくれる優しいところが好きだ。俺はこういう時彩子に何か返せないかと考えるがどんなに考えても俺は彩子の気持ちのことを理解することはできない。でも俺をサポートしてくれた分必ずいつか俺は返してやる心づもりでいる。そのために彩子に俺が世界観を変えうるリアクターにならないといけない。そうやってこれまで俺にくれた借りを返してやる。

「サンキュー」

「まさかここまで遠いとは。そういえばあの店主は湖迂回するだけで丸2日かかるとか言ってたよな。その湖を迂回するんだったらその絶大王イカに見つからないまで遠くから迂回すればいいんじゃないか?そうすれば被害をさけることができるかもしれないし」

「そんな簡単にはいかないと思うな。旅になれた中級冒険者でさえもあのモンスターに襲われるのだから、何かあるんでしょう」

「そうだな。俺も何かがあると思う。遠くから迂回できないようにする何かがあるんだろう。やっぱり準備しないといけないな」

「そうね」

「そういえば店主が旅の地図を渡してくれたのよ」

「で、その地図には湖まではあの町からすぐそこだと書いてあったのよ。正確に言うと歩いて15キロくらいだと。2時間かけて何も見当たらないとかおかしいと思ってる」

「地図が間違うなんてよっぽどの理由があるんだろうな。このぶんだと洞窟についても警戒しておかないとな」

「そうね」

全然すぐそこじゃないじゃないか。あの店主が嘘つきやがったのか。いや結構な数の中級冒険者が勝てない相手に挑んで負けているなんて状況がありえない。何か理由があるとしか思えない。このゲームの世界は案外明るくないところも多いな。俺がこのボイスリアクトを早く使いこなせるようになって、一つ一つ問題を解決していきたい。

「もうすぐ日が沈むわ。どうしましょう。」

「とりあえず、俺なんか出してみる。」

「お願い」

「クリエイト・・・・・スターディーテント」

俺たちが座っていた空き地の芝生の目の前にいかにも丈夫そうなテントが出現した。

「実は俺キャンプ大好きで友達とそこそこキャンプをしていたんだ。そういえば彩子もキャンプに誘ったときあったっけ?」

「あったね。その時あなた時間があればすぐ友達と追いかけっこしてたわよね。その時のあなたって子供みたいにはしゃぐからとても新鮮だったわ、あなたのそういう子供っぽいところも面白いね」

「少なくともあの時よりは俺は確実に成長しているんじゃない?」

「強がってるでしょ」

「俺はいつも本気だと思うが」

「そんなウソ見え見えですよ」

「お前だって、よく見え透いた嘘をつくことだってあるぞ。この間だってコップの水をこぼしたときにさりげなく袖でふいて俺がそれに言及したけど、こぼしてないとか言い張ったじゃないか。」

「わたしなんてそんなみじめなことしません!」

「はははは・・・お前だって・・ははは」

「あなただって・・・はははは・・・ははは」

彼らはこれまでの旅の疲れが吹き飛ぶくらいに笑いあった。その笑い声は近くの林の木々が干渉となり、林全体にいきわたったようだった。そのとき森から一匹の狼が現れた。そのモンスターは何か言いたいことがあるらしいが俺にそれを理解することはできない。未熟者だからだ。俺はモンスターの言うことを理解したいと努力したのだが、俺には無理だった。ボイスリアクトを使っても何も伝わらなかった。彼はこの機にボイスリアクトの利用条件を理解しようと試みたのだが、それはなかなかうまくいかない。俺には何が足りないか。何が必要なのかと彼は悩みながらも長時間奮闘したのだが、伝わらなかったので彼はあきらめてそのモンスターに森に変えるようにジェスチャーをした。それでも狼の外見をしたモンスターが帰らないのでどうしようかと途方に迷っていたところ、彼女が口を開いた。

「ボイスリアクトには何かしらの条件があるのは確かだけど、これまでどんなものを出せたのか一度整理してみない?」

彩子はいつも冷静だ。それに比べて俺は・・・。俺には彼女を支えてあげることさえできないのかとまで思ってしまう。彼女は私を好いているのだろうかと考察することはあれど実際に彼女に言及することはない。俺だって彼女が俺を少しくらい好いてくれていることは考えてはいる。しかし、それを現実にしたくない。まだ駄目なんだ。俺がわがままなのかな、俺が一人前になるまで待っておいてほしい。だから、俺は彼女に会えて面を向かって好きだと言わない。俺は嫌われるのを怖がって言わないだけなのかもしれない。でも、俺は曲げたくない。こんな性格だからいつもみんなに怒られてばかり。多分めんどくさいやつだと思われていると思う。しかし俺にやらないといけないことが・・・。それはそうと俺はこれまでボイスリアクトでバッグとお金とテントを出せたことはある。多分これは見たことがあるかどうかなのだろう。しかしあの町の店主や職人は新しいものを生み出せると言っていた。そんなことが本当にできるのだろうか。少なくとも今の俺には無理だ。しかし、そのために旅を続けているというのもある。こんなことでくよくよしてはいられない。俺よ、しっかりしろ。

「バッグと自分の国の現金とテントだよな。その共通点は何度も使っていてよく知っている」

「それだけではないでしょう。他にはないの?」

「他には、自分の好きなもの」

「それ以外には?」

「それはみんなが使っている」

「それと?」

「それ以外なんてあるか?俺には他はわからないが」

「私の仮説だけど、これはなぜ存在しているのか知っているからだと思うの。バッグだって手で持ち歩けないものを持ち歩くためにあるものだし、お金は人がものを等価交換するためにあるものだし、テントだって人が野外で簡単に立てれて、しかもそれにしては結構丈夫だからつかえるところとか。これは存在意義を知っているかどうかだと思うの」

「それだけじゃその犬の存在意義はわからないから、仮説には適当だとおもうけどギルドのときに日本円が出てきたときだったらそうはいかない。あんときだって最初にジェントルマン出そうとした時もうまくいかなかったし」

「あなたそんなの出そうとしたの?私がいるのに?」

「おまえだけじゃ物足りないと思っただけだよ!」

「そうなの!ふんっ」

彼らは喧嘩をした。彼らは特にお互いの意見が食い違ったときに喧嘩をする。どちらもするつもりはないのだが、物事が悪い方にいくとけんかをすることがある。しかし彼らはその時本当に嫌っているのではない。どちらかというとお互いに愛しているのだがそれがゆえによく衝突が起こるのである。彼らはそれは十分承知であるが、時々意図せずそれが起きてうんざりしている。このまま、結局ボイスリアクトの条件はよくわからず、狼が一向に離れてくれないので、一緒に旅をすることになった。犬はそれにとても喜んでいたようで尻尾を上下左右に振っていた。智也と彩子は少し胸にわだかまりはあったが、狼の外見をしたモンスターなので少し怖いが、でもかわいかったのでとりあえず旅をしてみることにしたのだった。彼らはともにテントの中で一夜をともにした。犬の寝顔はどことなく安心した様子だった。彼らはなんだかんだで旅の仲間が増えて少し安心したようで、モンスターが寝たのを見て、そのまま就寝したのだった。


「朝だ!」

俺は朝日が昇ったのをなんとなく感じて飛び起きた。俺は一番に起きたんだ。少し清々しい気持ちになる。布団から出ると、すかさず俺はテントから抜け出て、一目散に朝日を浴びに行った。昨日は1日目でとても疲れたが、今日は朝日を浴びて決して苦労させられるなんて思いもしない。昨日はたまたまうまくいかなかったのだ。今度こそうまくいくに決まっている。信じろ、彩子―。俺はテンションが上がってくる。彩子にもこの朝日を浴びせてみたい。テントの中で寝ているんだったな。彩子ー。俺は一番に起きたぞ。どうだーすごいだろー。あいつ呼んで来たら、どんな絶叫が待ってるんかなー。いやーたのしみだなー。俺は朝日を浴びて気持ちを整えたらすかさずテントに戻って、彩子を呼んだ。

「おはよー彩子。朝だぞー」

「わんわんわん!」

「わんわんわーん」

「うっるさいわねー。誰がこんな朝に起こすのよ。」

「おう!朝だぞ!」

「うっさいわねーまだ寝たいのよ私は」

「わんわん!」

「うっさーーーーい!」

「うわー!逃げろ!」

彩子の叫び声を聞いたら俺はテントから一目散に逃げた。彩子は今日は調子がいい。なぜなら本当に怒っているときは俺が起こしに行っても何一つ返事がないからだ。しかし、今日はつまらないことをした。

「今日は何?いいことでもあったの?」

「いいや、逆さ。昨日は散々な目にあったが今日はうまく切り抜けていこうという証だ」

「つまんな」

「いいじゃん。それで」

「今日の智也なんか調子いいわね」

「そうか?」

「長話はいいから、今日はもう少し寝かせて」

「いいや、彩子に朝日を見せようと思って」

「いいよ。そんなの」

「寝かせてよ」

「そうか!じゃあ後で起きて来いよ」

そんなことよりも湖はまだなのか。俺たちがずっと湖を目指して歩いているのだが一向につく気配がないのだ。昨日は4時間も歩いたのだが結局何も見えなかった。これから俺たちはどうなっていくのか。先ほどは少し気が緩んだが、気持ちを立て直さなければ。

「おはよう。あなた。今何してるの」

「何か新しいもの作れないかと思っていろいろ試しているんだ」

「クリエイト・・・・カー」

「クリエイト・・・・ブック」

「やっぱり何も作れない。そこまで役に立つものをつくれるとは思えないな。それよりあのモンスターは?」

「あのモンスターならテントで眠ってる」

「結局あのモンスターの目的は何だったのか分からないの」

「だが仲間が増えたのは心強いよな。俺はうれしいけど」

「でもあのモンスターの目的は結局わからず仕舞いだけど」

「心配いらないだろ。あのモンスターなにか俺たちに親近感持っているらしいから」

「それならいいわ」

「ああ、ボイスリアクターのことだけど。あの木を出してみて?」

「クリエイト・・・・ウッズ」

「・・・・・・・・・・」

「やっぱり何も出ないね?」

「さっきのはどういうこと?」

「いいえ、さっき出したのは目で直接見ているものだから直接見ているものだったらどうなのかな?と思っただけ」

「直接見てでもダメなのか。いったい何をすれば出せるのか?」

「結局何もわからなかったね」

「ボイスリアクトなしで強敵に挑むのは危険だよ。わからなかったけどどうすればいいと思う?」

「俺はたとえ分からなくても、突き進むべきだと思う。立ち止まっても何も始まらないと思う」

「そうね」

「・・・・・」

「何?」

「いや、ちょっと気になっただけ」

「そう」

俺と彩子と犬は再び旅を始めた。ボイスリアクトで車でも出せれば旅が楽になると思ったのだが、物事はそう単純ではないらしい。いろいろなものが複雑に絡み合って成り立っているんだと感じた。こんなのでこれからの強敵に立ち向かっていけるのか。それとやっぱり気になる狼の外見をしたモンスター。彼は結局何者なのか。とても気になる所存である。やはりいくら歩いても歩いても湖は見えてこない。本当にその湖はあるのだろうか。俺たちはそれについて疑問を持ち始める。旅を始めて2日目だが、2日目にしてもう不安に取りつかれている。俺たちはこれからどうなっていくのか。

「あれ、見て」

「あれ湖じゃない?」

「おう!あれ絶対湖だよな!」

それからしばらく時がたち、あの町を出発して4日目のことだった。俺たちはやっとこさ湖にたどり着いた。やはりあの地図は全く間違っていた。距離が10倍は違うぞ。あんなおかしな地図をなんであの店主は渡したのか。俺たちはわからなかった。その湖はとても大きくあの店主の通り2日で迂回しないといけないつくりになっていた。しかし、見たところ遠回りできる構図である。俺はどうやら頭を悩ませた。どうして中級冒険者である彼らがあんな強敵と真正面きって戦ったのか。彼らであれば迂回路をとおって湖を超えればよかったのではないか。俺たちはそのことが妙に気にかかった。

「たしか結構な数の中級冒険者がこの湖の強力なモンスターに襲われているらしい。どう思う?さすがに俺だけじゃわからん」

「中級冒険者ってのが気になる。なぜ上級冒険者でないのか。あれほどのモンスターであれば上級冒険者でもひとたまりもないはずだし」

「この世界に来たばっかりでもよくわかるな。彩子」

「絶大王イカって最低でも体長30メートルはあると思う。しかも中級冒険者が結構襲われているということは集団で襲われているということだから、たぶん中級冒険者数人がかりでも勝てない相手なんだと思う」

「お、おう!」

「彩子ってほんとに頭いいな」

「そう?」

「に決まってるだろ。少なくとも俺よりはあたまいいぜ」

「それはそうでしょう」

「いや、今のは嘘。俺よりは頭悪い」

「それはないでしょ!」

「わんわんわん」

彼らが言い合いをしている最中に湖のモンスターに気づかれたようで、少なくとも全長50メートルはある、巨大な塊が彼らめがけて押し寄せてきた。とっさに彼らはその場から離れて湖か距離を取った。するとその巨大な塊は湖の底に姿を消していった。

「さすがにあの化け物にこの装備で挑むのはきついわ。たぶん勝てねーわ」

「そうね。私がギルドで結構なステータスだとわかったけど、たぶんそのモンスターは比べ物にならない相手だと思う」

「迂回路に行かざるを得ないのは確かだな」

「わんわんわん」

急に俺たちの仲間の犬というかモンスターが吠えてきた。そのモンスターは迂回路に行くなと言わんばかりに俺たちを引き留めようとする。しかし、他に迂回路はないので、さすがにあの巨大なモンスターに立ち向かうよりはましだと思うので、その犬というか狼のモンスターを無視して迂回路に進んでいこうとすると、急に狼のモンスターの吠え方が変わったと思ったら、そのモンスターがこっちとその鼻を反対側の迂回路の方に指示している。正確に言うと迂回路から少しずれていた。俺たちはそのモンスターを信用していたので、モンスターの後をつけていった。モンスターは迂回路の沿って進むと思いきや少し離れて、大きく違うところを進んでいき、ある一つの家の中に入っていった。

「大丈夫かな。彩子」

「うーん。とりあえず入ってみましょう」

俺たちは犬がその家に入っていくのを見てすかさず俺たちもその家に侵入した。家の中は様々なアトリエで飾られていて、とても神秘的だった。彩子がアトリエに夢中になっている最中、俺はこの家の主人あるまじきおばあさんが家の奥の方の椅子に座っているのを発見した。犬は家の主らしいおばあさんの方に向けて走っていった。その犬がおばあさんのもとに駆け寄ると同時におばあさんはあたりを見回し、俺と彩子を見た。

「おお、お客さんですか、ヘンリー」

「わんわんわん」

「そうですか、ヘンリ―。あんたの見つけたい人が見つかりましたか。」

「わんわんわん」

彼らは人間の言葉の犬というか狼の言葉をつうじて話しているように見えた。というか話していたのだ。驚きだ。彼らがまさかこのような所業をなせるとは。その光景が何よりの驚きだった。

「そうですか、彼らはボイスリアクトの持ち主でその所持者はとても良い感性をお持ちのようで」

「わんわんわん」

「それで、一緒に旅をしたいと思ったのだが、残念ながら私は人語を話せなくなったので私の言いたいことが伝わらずにどうしようか悩んだのだが、彼らは私を連れて行ってくれたと」

「しかし、あの危険な迂回路に行こうとしたので、制止してやめてもらったのだ。と」

「まあ、あななたちそんなすばらしい方たちなのね。驚いたわ」

「ヘンリー。なぜあの迂回路は危険なのですか」

「わんわんわん」

「あの迂回路は中級冒険者を狙った策謀なのです。何者かが上級冒険者、場合により超級冒険者などを10名ほど雇ってそこを通った人物を襲うのです。しかし、上級冒険者は襲いません。ここを通る冒険者は大都市リューズとウェーゼを通す一つの街道でとても需要があるのです。その需要を狙って、ここで中級冒険者、そしてとある洞窟ウィリオメトルで上級冒険者を襲わせるのです。目的は冒険者の高価な武具と防具、それと情報です。その冒険者を雇った人物も襲われて身ぐるみをはがされて、場合によっては殺されます。あの絶大王イカを倒そうと思っても、あの化け物はステータスが飛びぬけて高く、中級冒険者なんて太刀打ちできません。上級冒険者でも超級冒険者でもほとんどあの化け物の前には無意味で何もすることはできません。1年前、レベル88でステータスが1790とレベル90でステータスが1860の超級冒険者2人組がその化け物に挑みましたが、傷を数か所負わせるだけでほとんどダメージを与えられませんでした。それで、迂回路を見回ろうにも、いつ、何処に誰がやってくるのか見当がつかず、そのまま放置されているのです。そのような迂回路に行かせるわけにはいかず、わたくしが制止いたしました。おそらく誰にもつけられなかったはずです」

「それで、迂回路は全部で3つありまして先ほどあなたたちが進もうとした迂回路はとても危険で超級冒険者が結構出没する迂回路でもあるそうです。冒険者には階級別である紋章が武器に刻まれており、外からで判別は容易です。どちらも下級冒険者でしょう。彼らはここで上級冒険者以外は身ぐるみをはがしてどこかに逃がすか、場合によっては殺されてしまう場合もあるでしょう。あなたはボイスリアクトを所持しているので、これを見逃すことはできないと思いまして、仲間になり、ここまでご案内したわけです」

「この迂回路は何か臭いと思っていましたけど、そんなこともあるんだな」

「そうだわ。ここまでだとは思ってもみなかったよ」

「くそくらえだ。いくらお金がなくてもそんなことしていけないに決まってるじゃないか」

「それはそうだよ」

「こんな事みすみす見逃すわけにはいかない。本拠地に乗り込んでやる」

「落ち着いてください。今現在どんな冒険者を雇っているのかわかりません。もし、超級冒険者がいたら、あなたたちも危険です。わたしたちはそのようなことを許しません。ボイスリアクターはとても貴重なのです。特にあなた様みたいなリアクターはめったにいないのです。これほどの人物をみすみす死なせに行くような真似は致しません。私たちは必ずあなたたちを守ります。あなた様には一番安全な迂回路に行っていただきます」

「そういえば、この声、誰の声ですか。」

「私の声です。ヘンリーは昔、異世界から来た剣士でとても強かったそうです。ある日何者かに魔法かそれ以外かわからないが狼の姿にされてからずっとこの姿なんです。彼が人間のままであれば、迂回路なんてそうでもないのですが。狼の姿になりステータスが急激に下がってしまいました。彼の力ではせいぜい超級冒険者の足止めができるくらい。でもヘンリーは人一倍優しい方であなたたちを絶対に守り抜くでしょう。ぜひ、ヘンリーのいうことを聞いてやってください」

「わかりました。ヘンリーさんの言うことに従います」

「彩子!」

「いいじゃない。ヘンリーさんもあなたを守りたいな。したがってやったら?」

「ふん。いいですよ。ありがとうございます」

「いいんですか二人とも?ありがとうございます」

ヘンリーはおばあさんの能力の一つ念話をつうじて彼らの通訳をしたのだった。彼らが出会ってからここまでで彼らの仲が大きく深まった。智也と彩子にとってもとても有意義でためになる時間だった。もしかしたら同時に命までも助けてくれたのかもしれない。もし、彼らがあの迂回路のまま進んでいったら1人以上の超級冒険者がいた場合、高確率で生命の危機に瀕していたのかもしれないのだ。彼らも犬か狼かよくわからないモンスターのヘンリーに感謝しなければならないのかもしれない。彼らはそれから少し話をして家を出た。もちろん、ヘンリーも一緒に。彼らの家は特殊な魔法で結界がかけられており、相当のことがない限り安全なようだ。

「元気で、ヘンリー」

おばあさんがヘンリーに別れの挨拶をした。

「わんわんわん」

「じゃあ、お元気で。」

「いつでも、いらっしゃい」

「そうですね。余裕があれば、ヘンリーと一緒に帰ってきますよ。じゃあ。」

部屋を出ると夕焼が空を覆っていて、とてもきれいだった。空の下で彼らは今日の出来事について整理をして、一番安全な迂回路に向けて歩いて行った。

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