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ボイスリアクト  作者: 夕村奥
第二章
11/42

怠惰

昨日、王宮でもパーティがひと段落したところでオリビアがあの少年の話をしてくれた。その少年はとても絵が上手だった。単純にうまいということではなく、表現すべきものが表現されているところが評価された。智也はその理由を理解できていなかったが、彩子はその少年について少し理解できていたみたいだった。王宮でのイベントの後、3人はオリビアと馬車で一晩を過ごした。2回目の馬車での就寝だったが、他人の車に寝泊まりするという行為は智也には慣れない様子だった。彩子は今日の疲れもあったのか、食事をとってからはすぐ寝ることが出来たのに対し、智也は上手には寝られなかった。オリビアは彩子の寝顔を見て、智也に顔を向けてきてこう言った。

「彩子さん智也さんのことを本当に信頼しているみたいですよ」

「この前にも同じことを言われました」

「彼女は私からは自分と少し壁があるみたいなんですが、智也さんには何も隔てがないように感じます」

「そうなんですか。俺そこんとこ疎くて」

「私も彩子さんに気に入られるために頑張っているんですが、まだまだですね」

オリビアは自嘲をしたが、智也はそれを訂正した。

「そんなことはないですよ。オリビアさんとても私たちに親切にしてくださってますよ」

「私、皆さまは成長力があるようにお見受けしています。個人で考えて行動できるので、危険な状況も積極的に避けることが出来るでしょう。私なんて危険を避けるのも難しいです。だからオリバーに甘えている部分もあるんです」

「オリビアさんも十分よくやってますよ。俺なんてすぐでしゃばるし、この世界では比較的弱いしみんなに迷惑かけてますよ。俺に比べればなんてことないです」

オリビアを必死に擁護する智也。彼女は自分自身に自信がない様子で、見かねた智也が積極的にフォローをした。

「智也さんはメンバーを元気づける役割を担っていますし、ボイスリアクトでいろいろ出してくれてますよ。役に立ててないのは私の方です」

「この装置がなくてはただのポンコツですよ。もっとステータスが高ければもっとみんなの助けになれるのに」

「智也さんは彩子さんの心の支えになっているんです。彩子さんも同様であなたの支えになっているはずです」

「オリビアさんは優しいですね。いや、ものすごく優しい方ですね。俺もこんな方と旅をできてよかったと思ってます。うれしいです」

「それは私もです。皆さまの助けになりたくて私達から志願ですから。これから頑張っていきましょう!」

「そうですね。頑張りましょう!」

オリビアと智也は二人で拳を上げる動作で、お互いにガッツポーズをとる。

「なんかオリビアさん面白いですね」

「そうですか?私はいつもオリバーとしていましたから」

「オリバーさんって結構のりがいいんですね。見た感じとてもまじめな方だと思ったんですが」

「オリバーはまじめなところもありますが、とにかく共感性に長けていていろいろな人の気持ちを感じることが出来ます。私もその共感性を身に着けようと奮闘しているところです」

「もう夜ですね」

智也がそういうとオリビアがカーテンを窓から眺められるように開いて外を眺めた。外の景色を一度見ると彼女はカーテンを元に戻して再び俺の方を向いた。

「そのようですね。私はあなたともう少しお話ししたいのですが」

「オリビアさんは見た目に反して積極的な方ですね」

「私これでも昔はやんちゃでして、結構親から怒られていたんですよ。でもその時もオリバーが世話をしてくれたのですが」

「そうなんですね。今日結構びっくりするところを聞けました。有意義な時間に感じます。オリバーさんが先日馬を撫でて笑っていたところでも人柄を少し垣間見れたのですが、もっと知れました」

「あら、もうお眠りになりたいのですか?」

オリビアはウトウトしていることに気づいた。

「おお、それにお気づきになりましたか。すみません、ちょっと眠くなってしまいました」

「では部屋の明かりを消しましょう」

「パンッ」

客車内にいる彼らが静かに就寝した時、馬車はほとんど音を立てなくなった。静寂な都市の中心で客車から覗くまばゆい光は部屋の電気が消された時、あたり一面は真っ暗闇に変貌した。やがて朝になり、智也はオリバーの一斉で目覚めた。


俺はまれに夢で見た記憶を覚えていることがある。今日はヘンリーと草原で駆け回っている夢を見た。そしてヘンリーが遊具の上に乗りあがったのを見た時、目を覚ましたのだった。その時は彩子とオリビアはぐっすり眠っていて、俺は寝ようとしたのだが昨日のオリビアとの会話を思い出し、俺は馬車の外に出た。すると素振りをしているオリバーを見かけた。

「どりゃっ」

「ブンッ」

彼の発声と共に繰り出される剣筋は俺の心を動かした。これまで出会った中で最も技術に長けた人物の一人であろう。

「ふんっ」

「ブンッ」

「ブンブンッ」

「おお、オリバーさんおはようございます」

オリバーは素振りを一時中断した。

「おはようございます、智也さん」

早朝からオリバーの首元には汗がただれていて、彼の努力がわかる瞬間だった。俺はオリバーを少し尊敬できた気がする。

「オリバーさんは結構素振りをするんですか?」

「はい、基本的に毎朝行っています。お嬢様の安全を守るための執事の務めです」

「毎朝欠かさず行うなんて今の俺には難しいです。俺だってこのボイスリアクトを毎日練習してるんですが、結局気が向いたときにするくらいです。早起きしたのにもったいないですよね」

「いいえ、その心構えがすばらしいのです。私も昔はさぼり癖が抜けないところもあったのですが、年を重ねるごとに少しづつ継続できるようになってきたんです。その心構えがなければここまで続かなかったでしょう」

「俺も考えてみます」

「決して無理をしないでください。何かあれば私に」

「ありがとうございます」

俺はその場を去ってから、馬車の中に戻った。戻るとオリビアと彩子はすっかり眠気を覚ましていた。俺が戻ってくるまで二人で何やら談笑をしていたようだ。

「何話してたの?」

「いや何でもない」

「そうか?」

前から気になっていたが二人は必ず企んでいる。俺に何かするつもりなのか。中央広場の件でも、二人にバカにされたような気がしないでもない。

「皆さん今日の行程の話をしましょう。今日は昨日言った通り王国のギルドで冒険者を申請します。ケントにはギルドが100はありますからどのギルドがいいのか見当もつかないと思いまして、私が事前に大きく信用できるギルドを選びましたのでそこに一軒ずつ回りましょう」

「わかりました」

しばらくして馬車が走り出し、事前に決めていた一件目のギルドの前で馬車が止まる。

「ガチャンッ」

馬車が停止するとオリバーが馬から降りたのを確認し、オリビアが客車のドアを開けた。

「タタッ」

俺と彩子はこれまでに見たことのない規模のギルドを目の当たりにし、ハワント王国の王都であるケントが中世の都市とは思えないほど大きな都市であるのと共に、冒険者の層の厚さを感じた。

「ここが一件目のギルドですか。ここまで大きいのは見たことがないです」

「ここは王国3番目のギルドです。所属冒険者は有名なものでドーシャンというものがおりましてレベルが94もありましてステータスが2090の魔導士です。他にもレベル80~90程度の冒険者が数十人登録している結構規模のあるものです。ここなら頼りになる冒険者が見つかるかあもしれません」

「チリン」

入るといかにも強そうな冒険者がゴロゴロいるのを発見した。彩子もキョロキョロしながらその冒険者らを見ていた。早速オリビアは受付で冒険者を申請した。パーティーの名前を申請な用紙に記入しなければならない。申請用紙には、パーティーは俺と彩子とオリビアとオリバーと記入した。それから二件目に向かった。

「ここのギルドは規模は小さいですが、信頼のおける冒険者が多数在籍しているギルドです。有名なもので剣豪サルトというものがおりましてステータスは2070あります。レベル、ステータスを問わないのでどなたでも在籍できるのが特徴です」

俺たちが訪れた2件目のギルドも町ギルドにはない規模だった。

「カラン」

「いらっしゃいませ」

「ここで冒険者申請をしたいのですが」

「じゃあこの申請紙に記入お願いします」

今回も4人のパーティで申請した。このギルド内はとても居心地がいい。信頼のおける冒険者が所属しているとオリビアは言っていたが、本当にそうなのかもしれない。記入が終えると名残惜しいが3件目のギルドに向かった。

「ここが王国5番目の規模を誇るギルドです。ここに在籍している冒険者はとても強く、国のギルド戦で3位の古代兵器を操るデスターという冒険者でレベル96でステータスが2120の強者も所属しています。しかしその冒険者からはあまりいい噂を聞きません。ここのギルドはあまり信頼のおける冒険者が少ないですが、強力な冒険者が多数在籍しています。ここは平均レベルが70の強大な戦力を持っているギルドです。レベルが80以上の人物が数百はいると言われています。とても頼りになるでしょう」

「チリン」

中に入るといかにも強そうな冒険者がいた。その冒険者はものすごいオーラを放っていて、少しあちらを向けばすぐに委縮してしまいそうだった。

「すみません、冒険者申請をしたいのですが」

「でしたらこちらの用紙にご記入ください」

オリビアが記入しているうちにギルド内を見渡すと、やはりあの人物のオーラが部屋全体を覆っていて、それ以外の冒険者がとても強い人物だと感じられなかった。しかしこのギルドの平均レベルは70でステータスも上級冒険者並みはあると肌で感じられた。その後俺たちは申請結果を待つために馬車に戻った。

「申請結果はいつごろになるのでしょうか?」

「そうですね。あと5時間ほど待つことになるでしょうからそれまで馬車の中で待機しておきましょう」

「ガタンッ」

「ゴロゴロゴロ・・・」

「動き出しましたがどこかへ向かうんですか?」

「ああ、私の屋敷に行こうと思いまして。もしかして行きたくありませんか?」

「そうではないのですが、いいんですか?」

「もちろんです!私の家にも見てもらいたいものがたくさんあります」

「そうですか。少し楽しみです。オリビアさんの家、何か気になります」

「見た時のお楽しみですよー」

「オリビアさんなんか張り切ってません?ね、智也」

「そうですか、私はいつも通りですよ」

「またまたー」

オリビアの馬車が彼女の屋敷に向けて進んでいるとき、俺たちは談笑した。まるで昔のように。オリビアと出会えて本当によかったとその時思った。やがてその馬車は王都の中心部から離れていき深い林を抜けて、大きな屋敷群が姿を現しだした。全部で30はある感じだ。馬車はとある一軒の屋敷の前に停車した。

「さあ、つきましたよ」

「これが私の屋敷です」

そう言って彼女が客車のドアを内側から開けて馬車から降りて俺たちにその大きな屋敷を見せてきた。彩子はその屋敷を見て口を大きく開き、まさに開いた口が塞がらないという状態になっている。俺は彩子が驚いたわりにそこまで驚きはなく、いたって冷静を装っていたような気がする。しかし内心驚いていたような気もする。

「ご案内します。こちらです」

なぜ彼女がここまで俺たちに親切にしてくれることは結局わからず仕舞いだ。彼女の愛情に押されて俺は馬車を降りてから彼女の後についていく。彩子もその大きな屋敷に気を取られていて少し足取りがおぼつかなかったが、俺たちの後についてきた。

「ガチャンッ」

先頭のオリバーがカギを開けて、俺たちはその屋敷の中に入った。その時目の前に大きな石の階段が現れ、彼女はその階段を横切ってしばらく屋敷の廊下を進んでいくと、右手に大きなドアを見つけた。彼女はその大きなドアを開いてから広い部屋に案内した。部屋中央にはテーブルがありテーブル周りにはいかにも高そうな格調高い椅子が並べてあった。部屋には大きな窓がそこら中に張られていて、外からの光が内部に十分に入るように組まれていた。天井にはシャンデリアが飾られてあり、値段が高過ぎず低すぎずこの部屋によく似あうような品が選ばれていた。でも俺はそのシャンデリアは正直高いと思っている。シャンデリアからは暖かく心地よい光が霞むように少しだけ部屋を覆っていて、我々もすこし心が和んだ気がする。床は質の高い絨毯で覆われていて、部屋の隅には家具が絶妙な角度でおかれており、その配置に趣味を感じた。

「ここが私のお気に入りの部屋です。ここに客人を呼んでお話ししたり、一緒に過ごしたりするんですよ。皆さまもどうぞおくつろぎください」

「おお」

俺たちの反応はいまいちだった。それはもちろんいきなりこのようなところに案内され、おくつろぎくださいと言われたのだから、何をすればいいのかわからず対応に困ってしまったのだ。

「ここの家具の配置がとてもいいです。誰が考えたの?私も部屋の模様替えをすることがたまにありますが、ここまでしっかりと決めたことはないのでそのように決めているのかがとても気になります」

部屋の模様替えは彩子の趣味である。家具の置き場所によって彩子はいつも俺に難癖を立ててくる。誰しも趣味に関しては譲らないのだ。

「それは私が考えました。気に入ってもらえてうれしいです」

「オリビアさんでしたか!とってもいいです!」

「それはうれしいです。今度一緒にどうですか?そういえば皆さまはこの世界に来てから一度も家に戻ってなかったですよね。余っている家具が結構ありますから、そのとき皆さまに差し上げます」

「本当にいいんですか!」

「はい。喜んでいただけるなら幸いです」

「でも家具ってあの家まで送れるんですか?」

「ケントからは異世界召喚場所近くの町まで貨物船があります。その他にも普通の船もあります」

「しかしその町にはそんなものは見当たりませんでしたよ」

「あの町のはずれに小さな港がありまして、その港はここケントまで船が出ているんです。ケントは基本的にどの町とも交通手段が確立されているんです」

「そんなことがあるんですね。すると王都許可証ってものすごい価値があるんではないですか?」

「そうなんです。しかし一般には入手ルートは存在していません。基本的には貴族や国の重鎮などだけ王国許可証を得ることが出来ます。しかしこの制度は100年前にできたものなので、その前は普通に移動できてたみたいです。ケントで生まれた人は基本的には王国許可証を発行することが出来ます。この制度は不公平ですが、いまだにこの制度は変わりません」

「王国許可証ってそんなにレアなんですね。でもそれだったら王国許可証はものすごい値段で取引されているんじゃないんですか?」

「鋭いですね。王国許可証はとても高額で取引されています。金貨50枚はくだらないでしょう」

「そこまでなんですか!でも売る人は何を考えているんでしょう」

「おそらく許可証がいらなくなったのでしょう。この許可証を売ってからどこかに移住するのでしょう」

「俺だったら絶対に売らないけどな。そういう人もいるんだなあ」

「でもあの家に家具を置けるから俺はうれしいぜ」

「彩子!よかったな!」

「ええ!少しあの家にこの屋敷の家具を置くことができる!」

「あの家に戻った時に手紙を送ります。その時にぜひお願いします」

「はい!任せてください!」

彩子はオリビアさんに模様替えについて教わり、俺はすることがなかったので窓から外を眺めていた。そのまま3時間ほどが経ち、初めのギルドに申請してからの結果が来る時間がやってこようとしていた。

「そろそろ時間が来ますので馬車に戻りましょう」

「はい」

部屋を出ると、階段を横切り屋敷を出た。その時少し名残惜しい気持ちになった。オリバーが屋敷の鍵を閉めると馬車に乗った。オリバーが馬に乗った感触を感じて、馬車は進み始めた。

「ゴロゴロゴロ・・・」

馬車は1件目のギルドに向けて出発した。

「結果が出るとどうなるんですか?」

「冒険者名が詳細情報と共に紙に書きだされます。その中から連れていく仲間を決めます。詳細情報の中には一日雇用するのにかかる金額も含まれます。基本的に冒険者の階級が高くなればなるほど金額は高くなります。下級冒険者はど銅貨3枚~、中級冒険者は銅貨8枚~、上級冒険者になると少し高くなり銀貨2枚~、超級冒険者はとても高く、金貨2枚~が標準的です。冒険者の中には注意すべき人物も存在します。特に評判の悪い冒険者はどんな危険なことをするのかわかりません。しかし評判だけではその人物のことを測れないのも事実です。十分に考えて決めるべきと言えるでしょう」

「そのような仕組みになっているんですね。信用できる人物に何か共通点は何ですか?」

「いろいろありますが特に金額の適当さと詳細情報の正確性が挙げられるでしょう。様々な環境や条件が重なりますが、主にこの2つでしょう」

「オリビアさん。私たちたまにギルドから討伐の依頼を受けて稼いでいたんですが、金貨1枚と銀貨銅貨が合わせて5枚くらいしかないのです。大丈夫なんですか?上級冒険者を1人くらいなら雇えそうですが、それでは戦力が不安です」

「私も貴族ですが使える金額は決まっていますので超級冒険者は簡単にはいきませんね。1日で2枚ほどなら何とかなりそうです」

「オリビアさんでもそんな感じなんですね。俺でもなるべく頑張ってみます」

「大丈夫です。皆さまがお金を払う必要はありません」

「いいですよ。私たちも助けになりたいです」

「しかしあなたたちのお金は貴重ですから、今回は私たちで払わせてください」

「悪いですよ。これまでも頼りになってばかりですし」

「私たちで払わせてくださればとてもうれしいです」

「これは俺たちの問題でもあります。俺たちで払います。上級冒険者なら俺たちでもなんとかなります」

「ありがとうございます。そんなに気遣ってくれる優しさとても好きです」

「そんなこと言わないでくださいよ、オリビアさん」

話し合いの結果、このままオリビアたちに頼ってばかりだったら自分たちの成長もないと思い、今回は少しくらい自分たちで払うことにした。しかし列車で合わせて数週間ほどの期間を雇うとなると上級冒険者でも厳しいだろう。なので俺たちはおそらくギルドで冒険者としての仕事をしてから出発したいと考えている。しかしなるべく時間をかけたくない。あの冒険者に出会うことが出来なければこの旅は半分が無意味になる可能性がある。少しでも早く大都市ウェーゼに到着しなければあの冒険者が他の都市に移動する可能性も出てくる。そうなれば我々もその都市まで行かなければならない。


俺が悩んでいると馬車は1件目のギルドに到着した。俺たちは馬車を降りギルドに入って、用紙を受け取った。結果を馬車の中で確認した。すると、超級冒険者が1人、上級冒険者が3人、中級冒険者が4人、下級冒険者が5人その用紙に詳細情報と共に表示されていた。超級冒険者の方はレベル89でステータスが1870で頼りになりそうな冒険者だったのだが、1日金貨4枚だったので無念の断念だった。上級冒険者は一人目がレベル67でステータスが1260の冒険者だったのだが、銀貨5枚必要、2人目はレベル55でステータスが1320の冒険者で銀貨4枚必要、3人目はレベル70でステータスが1400の冒険者で銀貨6枚必要、中級冒険者の一人目はレベル61でステータスが730の冒険者で銀貨1枚必要、2人目はレベル50のステータスが690の冒険者で銅貨9枚必要、3人目はレベル49のステータスが650で銅貨9枚必要、下級冒険者は割愛。それからこの人たちの詳細情報を確認したが、職業、収入、名前を確認したが、全く怪しいところが見当たらない。この世界にきて少ししかたっていなので全く分からない。俺はどの冒険者を選べばいいのか。俺は全く分からないまま彩子に発言を仰いだ。

「なあ彩子、どの冒険者がいいと思う?」

「私もさっぱりわからないわ」

「オリビアさんはどう思いますか?」

「この人は職業と収入が合致しませんので怪しいですね。冒険者にも本業と兼業のパターンがあるんですよ。基本的には上級冒険者以上でないと本業の冒険者としての討伐依頼や護衛依頼だけでは生活していけないのですが、この人は本業と書いてあるんです。しかも結構収入がある。これはなにかあると考えるのが自然でしょう。しかし何か私たちに知らないことがあるかもしれないので、決めつけはよくないのですが。この方は結構信頼できそうですが、銀貨6枚で少し高いですね。この方は少し信頼できそうですね。1件目はこれで終わりですね。2件目にも行ってみましょうよ」

「そうですね。まだ2件もあるんですからね」

馬車は一件目を離れ街路を進み2件目のギルド前で止まった。

「カラン」

「いらっしゃいませ」

オリビアは2件目のギルドで申請結果の紙を受け取った。

「こちらが申請結果ですね」

すぐ馬車に戻って結果を共有した。そこには超級から下級まで様々な冒険者の名前と情報が書いてあった。超級冒険者は1名、上級冒険者は1名、中級冒険者は2名、下級冒険者は6名だった。超級冒険者はレベルが90でステータスが2070の剣豪サルトで金貨2枚だった。上級冒険者はレベルが78でステータスが1440で銀貨4枚だった。中級冒険者はレベル60でステータスが670で銅貨8枚、レベル56でステータスが660で銅貨9枚だった。下級冒険者も良心的な人が多かったのだがなにやら気になるものを見つけた。その顔を確認すると先日、川で絵を描いていた少年の名前があった。一応ステータスを確認すると490で銅貨は2枚だったようだ。俺はその名前を見てすかさず反応した。

「もしかして、この人あの川の少年じゃないか?」

「そうだね、なんか見たことある」

「あ!あの子じゃないですか!なんでいるんですか?」

「わかりません。一応聞いてみたいのですが。どうやって契約するんでしょうか?」

「その人物写真の上部分にチェックを入れてギルドに提出するんですよ」

「話し合うこともできますかね」

「もちろんです。まずチェックを入れて提出して、いつから始めるのか決めましたら、多少時間はかかりますが会うことはできます」

「私もあの少年のこと気になっていたんですよ」

「そうなんですね。じゃあチェックしますね」

オリビアはあの少年の空欄に申請結果の用紙にチェックを入れた。

「他になにかいい冒険者っていますかね。俺には選ぶのは難しいんです」

「そうですね。剣豪サルトはなぜ私たちの申請を承認してくれたのでしょう?」

「剣豪サルトってどんな人物なんですか?」

「剣豪サルトは幼いころから才覚に溢れ、若くして超級に昇格した数少ない冒険者です。得意技はバーンスラッシュで剣に火を纏わせ、剣を振り回すとその方向に炎の剣の化身が放射される技です。ステータス的にも勝る相手にもこの技で倒してきました。国のギルド戦では毎回上位に食い込み、国中に名をとどろかせている人物です。そんな方がなぜ私たちに。それに金貨2枚なんて安すぎる。これほどの人物であれば金貨5枚でも安いのに。私なら多少無理しても金貨5枚は払うのに」

「なにか事情があるのでしょう。一応相談してみましょう」

「そうですね。じゃあチェックしますよ」

オリビアはサルトの空欄にチェックを入れた。

「じゃあ提出してきますよ」

「いいんですか。一緒にいかなくて」

「全然いいですよ。じゃあ」

馬車のドアを開け、オリビアは外に出た。

「私、あの少年のことがとても気になるな」

まだあの少年のことが気にかかる彩子。川辺で一人絵を描いているところに惹かれた彩子。俺もあの少年は他の人と何かが違うと思っている。

「もう一度あの少年と会えるって考えるとなんかワクワクするな」

「私もなぜかわからないけど気になるの」

「なにやらオリビアと仲が良いらしいってのも理由の一つかもな」

オリビアが用紙を提出し戻ってきたようだ。

「とりあえずあの用紙出してきましたよ。期間を今からで設定してきましたので」

「ありがとうございます」

「それでは3件目に行きましょう」

オリビアは窓から顔を外に出してオリバーにこう言った。

「もう一軒お願い!」

すると馬車が動き出した。

「ゴロゴロゴロ・・・」

3件目に到着すると、もう一度オリビアが申請結果を受け取ってくれるらしい。オリビアは振り返ってとても親切だ。たぶんオリバーに似たのだろう。彼女はオリバーのような人間になりたいようだ。俺たちは少し待つとオリビアが申請結果をもって馬車に戻ってきた。俺たちはその申請結果にくぎ付けになるようにじっと見つめた。結果は超級冒険者が2人、上級冒険者が3人、中級冒険者が1人、下級冒険者が0人。超級冒険者についてはレベル85のステータスが1810で金貨3枚、レベル96のステータスが2120で金貨3枚、上級冒険者、割愛。レベル96の冒険者が金貨3枚というのはとても気になったが、それよりもこのギルドは何か不気味だとは思った。中級や下級冒険者がいないのだ。

「あのオリビアさん、このギルドって何かあるんですか?」

「このギルドは片っ端から強力な冒険者を雇いまくっているんです。なのでこのような割合になるのでしょう」

「それでその冒険者はどうなのですか?」

「おそらく超級冒険者の1人は大丈夫そうですが、もう一人はなにか変な感じがしますね。まずこのレベルの冒険者が金貨3枚というのが変ですね。それとこの冒険者はあまりいい噂を聞きません。しかも謎が多い人物なので、やめておく方が無難でしょう。しかしなんども言いますがそれだけで決めることはあまり良いものではありません」

「それでは今回はどうしましょう。剣豪サルトを雇えるんですから、ここは無理に決めなくてもいいんじゃないんですか?」

「どうします、皆さま?」

「じゃあスルーで決めちゃいますよ!」

「でもあなたその冒険者のことも考えなくてもいいの?一概に悪いときまったわけではないんでしょう?」

彩子は嫌な予感を感じとった。このまま簡単に決断していいものなのか。冒険者選びは慎重に行うべきではないのか。彩子はその時そう思った。

「そうだが、もう仲間も決まったようなもんだし。いいじゃん」

「またあなたの悪い癖が出た。あなたって調子に乗るといつもこうなんだから」

「そうなんですか、智也さん?」

「気にしないでください、オリビアさん」

「私なにか気になる。ちょっと相談してみない?」

「彩子がそこまで言うんだったら考えてもいいけど」

「1日に金貨3枚は難しそうですか?オリビアさん?」

「そうですね」

「結局どちらがいいんだろう」

「とりあえずそのままにしときますよ」

「そのままでいいんですか?」

「申請結果はすぐに提出しなくてもいいんです」

俺たちは3件目のギルドで冒険者を決めることはできなかった。俺は昔から嫌な感じがしたものは理解しようとしたのだが体がそれを受け付けないことが多かった。俺は考えを放棄しているわけではない。曲がっていることが嫌いで、俺の認められないことに関しては認めることがなかった。これは俺の怠惰なのだろうか。俺も認められる努力が足りないというのもあるだろうが、それが間違っている場合もあるので一概に悪いとはいいきれない。だから俺は怒られてばかりでみんなからモテないのかもしれない。でも彩子は俺のことを好いてくれている。今でもなぜ彩子が俺のことを好いてくれたのかわかっていない。でも俺は彩子のことがちょっぴり好きなので彩子を大事にしたいと思っている。俺は傲慢なのだろうか。怠惰なのだろうか。強欲なのだろうか。俺は結局自分自身のことを理解することさえまるでできていないらしい。こんな俺ではいつ一人前のリアクターになれるのだろうか心配になる。このままでいいのだろうか。

「智也さん!智也さん!」

「おお、オリビアさん。どうしましたか?」

「そろそろ屋敷に着きますよ。今夜はここで休みましょう」

「今回もいいんですか?」

「はい!今日は疲れましたよね。今夜はゆっくり休んでいってください!」

そういってオリビアは客室のドアを開けて外に出て、こちらを覗いてきてさっきのように屋敷に案内してくれた。

「こちらです」

「ガチャ」

「ここが寝室です。皆さまここでゆっくりおくつろぎください。私たちオリビアとオリバーはあちらの寝室にいますのでご用があればいつでも呼んでください。それでは」

「ガチャ」

オリビアはそう言って寝室のドアを閉めた。

「あなた大丈夫?なにか顔色が悪いわよ」

「大丈夫だ。ちょっと考え事してただけだ」

「そう」

俺は全く頭の中の考えがまとまらなかったので、ベッドに潜り眠ろうとした。ベッドから外を眺めると彩子がベッドに横たわった姿があった。ちょうど俺がそちらを見ているときに彩子と目が合った。とっさに俺は顔をそむけたのだが、それに彩子が笑いやがった。

「クスッ」

「なに?」

「なんでもない」

そのまま俺は彩子の方を振り向かず、窓のカーテンを眺めながら眠りについた。




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