良く眠れましたか?
魔導具ない場合、サキュバスは厄介な相手です。
翌朝、デポさんがトライアングルを鳴らすと澄んだ音がした。
弟の目覚めに自分だけが立ち会う。
魔音を聞くと覚醒し眠れなくなるからだ。
ほぼ朝まで起きていたので、疲れが残るが、これで明日の夜までは眠れない。
眠気がとんで覚醒しないのは、元は拷問器具だからだろう。
弟が飛び起きる。
「朝ですよ〜デグさん〜。」
「良い夢見れましたか〜」
デポさんがからかう様に話す。
弟はまわりを見渡し、残念なそれでいて、安心した様な表情を見せる。
(デポさま、空腹が癒えたので、またしばらく眠ります。)
どこからかミケの甘い声がした。
サキュバスの黒幕が微かに微笑む。
「今朝は滋養ある料理をペティが作ったので、お二人ともどうぞ〜」
ペティとは、あのハーフエルフの少年の名前だろう。
階段を降りて食堂に向かうと、食欲をそそる匂いがする。
「おう、デグ目が覚めたか?」
ロバート声をかけてきた。
食堂は混み合い始めていたがミケとレイカの姿はない。
「レイカはアヤメを訪ねている。ミケは珍しく寝坊をしてるみたいだ。」
女性陣が居ない理由を説明してくれた。
隣にいたデポさんが慌ただしく厨房に戻る。
テーブルにつくと、香料の効いたスープを簡易ゴーレムが運んできた。
「サキュバスはどうだった?」
「実在の聖女には出来ない様な事を色々試しただろうし、望んた事は全て叶えてくれただろう?」
弟は赤くなり狼狽している。
「心の奥の願望を見つけて、叶えてくれる。サキュバスはそういう魔物だ。」
ロバートは今日は酔ってなく、口調に揶揄する調子もない。
「この店でなく、次があったら適当に楽しんだ後に殺すんだ。サキュバスは夢の中でしか殺せない。」
サキュバスは想い人の姿をしているはずだ。
声も姿も同じで迫ってくるはず。
その想い人を殺せるのか?
「殺せなければ、死ぬのは自分だ。」
何故か、ロバートは弟ではなく、自分の方を真っ直ぐに見る。
(ロバートの勘は何故か当たるのよ。)
ミケの言葉が不意に思い出された。
「[出禁のデグ]の武勇伝は終わった?」
ミケが階段を降りてくる。
ミケも弟の二つ名を知っていた。
「レイカだったんでしょ?あの娘に聞かせたり、ましてや試したりしたら駄目よデグ。」
唖然とする弟の代わりにロバートが答える。
「夢と現実の区別はついてるから大丈夫だそうだ。試すのは後日に改めるってよ。」
「あらあら〜レイカちゃんは、どんな、いやらしい事されちゃうんですか〜。」
「お姉さんにだけ、そっと教えてくれませんか〜。」
エプロン姿のデポさんがミケさん分のスープを運んできて口を挟む。
「だから、お姉さんは無理があるだろ。」
ロバートが混ぜっ返した。
私の黒歴史がまた1ページ。




