表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第7章 魅惑の宿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/385

訳あり物件

デポは魔族なので、中魔法がデフォルトです。

夕方になると、食事を取るお客さんで、お店が混み合い始めた。

エプロンをしたシャンヴィル・デポトワールさんが忙しく行き来している。


アヤメはお昼を食べた後に[五芒星]から離脱した。

お姉さんとお義兄さんが経営している商店にしばらく、滞在するという。


厨房では年若いハーフエルフさんが、泣きそうな顔で注文を捌いている。

デポさんが予備の椅子を3脚撫でると椅子がゴーレムになって料理を運び始めた。


「デポで良いわよ〜。」

自己紹介の後、気さくに笑って話してくれたが、その正体は[魅惑の伯爵夫人]の二つ名を持つ魔族だった。


お店の名前からきた二つ名かな?と思ったけど、マドウが言うには第一次魔王戦争の頃についた二つ名みたい。


何でも南方方面軍団の軍団長の娘さんで、この街がハルピアになる前、イブスル王国の王都だった時に、この街を陥落せしめたんだって。


う~ん、第一次魔王戦争ってすごく前だよ。

ロバートさんの言うとおり、見た目は別として、お姉さんには無理があるかな。


「もう少し良い〜ハーフエルフ買おうかしら〜」

デポさんが休憩しながら、家電でも買う様に話す。


「あの子はハーフエルフ屋で〜半額だったから買ったのよ〜。」

「ハーフエルフなのに病弱で〜長く持たなそうだったからって〜」

デポさんの声が聞こえているのか、若いハーフエルフさんは酷く怯えた顔を見せた。


なんでも、ハルピアにはハーフエルフを繁殖して売る店があるんだって。

捕虜から奴隷になった男性エルフが繁殖期になったら、引退前の娼婦をあてがうそうだ。

ハーフエルフを産めば、娼婦には良い退職金になるとか。


『冷夏、郷に入っては、だ。変な倫理感は無駄だぞ。』

理性ではわかっても、感情は別物。

だけど、アプリのマドウには伝わらない。


「種馬も種エルフも〜偉い人間様には同じよね~。種エルフが手に入りづらいだけ〜。」

人は馬ではないと言う考えは傲慢なのかな?


ピークを過ぎるとお店は徐々に空きはじめた。

[まわる水車亭]と違って宿泊客が少ないからだ。

この店は全室個室で結果、パーティーでは使いづらいのが原因だろう。

個室と言っても、料金は安いのだから。


「あの、ご主人さま、僕、もっと働きます、働きますから、買い替えないでください。」

厨房でデポさんが懇願を受けている。


「あらあら〜、あなたの料理目当てのお客さん〜多いのわからないかな〜?」

デポさんはハーフエルフの少年を売り払う気はない様だ。

少しだけど、ほっとした。

でも、買い主の気まぐれに振り回されるんだろうな彼は。


「さて、部屋に戻るわ。あなたは油断しちゃ駄目よ。」

ミケさんがジグさんにウインクして、笑って部屋に戻った。

部屋に戻るのに変な言い方?

大人の合図かな?

でも、ジグさんも変な顔をしている。


「そういえば、言ってなかったな。」

「この店、年に一度ぐらいの割合で客室に魔物が出るんだよ。」

え?

ロバートさんどういうこと?


「安いのに宿は空いてるだろう?まあ大丈夫。ここ一年ぐらい誰も見ていない。」

「それに襲われるのは必ず一人さ。」

それって、そろそろなんじゃ……。


「では、明日また会おう、なに、お嬢ちゃんは大丈夫。夜更しせず消灯前に部屋に戻れよ。」

ロバートさんも、笑いながら部屋に戻った。


ジグさんも、デグさんも知らなかったみたい。

デポさんに聞いても

「お客様〜、変な噂立てられては困ります〜。」

と言って笑うだけ。

この時間からまともな宿は探せないよぉ。


「消灯です〜。食堂は閉店です〜。」

え〜!

魔族が店主で椅子が働く店。

魔物が出ると噂される部屋。

ホラーにもコメディにもなりそうなのが、[魅惑の伯爵夫人]です。


私の黒歴史がまた1ページ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ