魅惑の伯爵夫人
変更しました。
〜は歌う様に喋ってます。
商業都市ハルピアは名目上は魔族領になっている。
魔族シャンヴィル・デポトワールの領土。
だが実際は違う。
魔族は君臨はしているが統治はしていない。
実質的にハルピアは豪商達が合議制により統治している。
フォレスト商会の本店に商隊は無事到着した。
商隊長ゴルツが珍しく皆を労い、冒険者のリーダーに報酬を渡してゆく。
商隊では絶対者のゴルツも商会では一人の責任者にすぎない。
傲慢さは隠しているのだろう。
国境を越えてからは、ゴブリン1匹出ず新米冒険者達は皆、笑顔だ。
「[五芒星]の皆さん。ジナリー王国方面に戻る際にはお声掛けて下さい。」
「その際は報酬も倍にしますよ。」
ゴルツが商人特有の笑い方をしながら言う。
「依頼変更が疑われる場合、無条件で契約解除出来る条項が入るなら検討しますよ。」
ロバートが皮肉を返す。
冒険者を効率よく使い捨てるのも商才。
ミケが言うには、大きな商会には魔獣より厄介な責任者がごまんといるという。
護衛依頼がようやく終わり、ロバートとミケが常宿にしているという冒険者の店に向かう。
ミケが大地母神殿に寄るといって1人離れた。
もう一つの依頼の報酬を受け取るつもりだろう。
1人で大丈夫かと聞いたら
「この街は普通に気をつければ、私でも大丈夫よ。」とかえされた。
あの後ミケもロバートも普段通り変わらない。
[魅惑の伯爵夫人]は、この商都ハルピアの中心街にある小さな冒険者の店。
ここまで歩いてくるまでに、リザードマン、ダークエルフ、竜人族、ドワーフとすれ違った。
ミケがハーフエルフでも、誰も気に留めないだろう。
扉を明け中に入るとエプロン姿で給仕をしている、顔色悪い女性がにこやかに迎えてくれた。
魔族だ。
魔族の血液は青いので顔色が悪く見える。
「あら〜。ロバート〜。久しぶりですね〜。」
「とりあえずエール5つ。奢らせてね〜。」
厨房に立つハーフエルフの少年に声をかける。
「1つはジンジャー水にしてくれ、このお嬢ちゃんは酒が駄目なんだ。」
ロバートが注文に訂正を入れる。
「それに後からミケもくる。」
「じゃあ〜今回も生き延びられたのね〜新しい仲間いっぱい連れてるからつい〜。」
空いているテーブルにつくとエールとジンジャー水が運ばれてきた。
ロバートは流したが、メンバーが替わるのは冒険者の常。
常連で姿がないのは、そういう事と勘違いしたのだろう。
「後でミケが手続きするが、[五芒星]と名乗っている。」
「こいつらはドグの息子だ。」
エプロン魔族にロバートが自分と弟を紹介する。
口調からすると、この魔族は父と面識があるらしい。
「あらあら〜、こんなに大きくなって〜。」
「じゃあ君がジグ君で〜君はデグ君よね〜。」
自己紹介する前に名前を言われた。
驚いた顔をしたのだろう、エプロン魔族が続ける。
「病弱さを治す為に頭髪を[妖魔の神]に捧げたのがデグくん〜お父さんそっくりの赤い髪がジグ君〜お姉さんの事は覚えてないよね〜。」
レイカとアヤメが驚きを隠しきれず顔を見合わせる。
弟の秘密を知るのだから、確かに幼い頃合ってはいるはずだ。
「見た目はともかく、お姉さんは無理ないかデポ」
ロバートが冗談を飛ばして場を和ませる。
「無理ありませんよ~私は魅惑の伯爵夫人〜シャンヴィル・デポトワールなのですから〜。」
冗談を被せてきたと思い笑った。
エプロン魔族本人も笑っていた。
そしてミケが到着し魔族の自己紹介が冗談でないとわかると、ミケとロバート以外の全員が唖然とした。
皆さんは信じないかもしれませんが、魔獣より厄介な責任者、経営者に会ったことが私はあります。
え?会社のパソコンから読んでるから、すぐ近くにいるって?
(苦笑)
私の黒歴史がまた1ページ。




