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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第7章 魅惑の宿

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93/385

魅惑の伯爵夫人

変更しました。

〜は歌う様に喋ってます。


商業都市ハルピアは名目上は魔族領になっている。

魔族シャンヴィル・デポトワールの領土。

だが実際は違う。

魔族は君臨はしているが統治はしていない。

実質的にハルピアは豪商達が合議制により統治している。


フォレスト商会の本店に商隊は無事到着した。

商隊長ゴルツが珍しく皆を労い、冒険者のリーダーに報酬を渡してゆく。

商隊では絶対者のゴルツも商会では一人の責任者にすぎない。

傲慢さは隠しているのだろう。

国境を越えてからは、ゴブリン1匹出ず新米冒険者達は皆、笑顔だ。


「[五芒星]の皆さん。ジナリー王国方面に戻る際にはお声掛けて下さい。」

「その際は報酬も倍にしますよ。」

ゴルツが商人特有の笑い方をしながら言う。


「依頼変更が疑われる場合、無条件で契約解除出来る条項が入るなら検討しますよ。」

ロバートが皮肉を返す。


冒険者を効率よく使い捨てるのも商才。

ミケが言うには、大きな商会には魔獣より厄介な責任者がごまんといるという。



護衛依頼がようやく終わり、ロバートとミケが常宿にしているという冒険者の店に向かう。

ミケが大地母神殿に寄るといって1人離れた。

もう一つの依頼の報酬を受け取るつもりだろう。

1人で大丈夫かと聞いたら

「この街は普通に気をつければ、私でも大丈夫よ。」とかえされた。

あの後ミケもロバートも普段通り変わらない。


[魅惑の伯爵夫人]は、この商都ハルピアの中心街にある小さな冒険者の店。

ここまで歩いてくるまでに、リザードマン、ダークエルフ、竜人族、ドワーフとすれ違った。

ミケがハーフエルフでも、誰も気に留めないだろう。


扉を明け中に入るとエプロン姿で給仕をしている、顔色悪い女性がにこやかに迎えてくれた。

魔族だ。

魔族の血液は青いので顔色が悪く見える。

「あら〜。ロバート〜。久しぶりですね〜。」

「とりあえずエール5つ。奢らせてね〜。」

厨房に立つハーフエルフの少年に声をかける。


「1つはジンジャー水にしてくれ、このお嬢ちゃんは酒が駄目なんだ。」

ロバートが注文に訂正を入れる。

「それに後からミケもくる。」


「じゃあ〜今回も生き延びられたのね〜新しい仲間いっぱい連れてるからつい〜。」


空いているテーブルにつくとエールとジンジャー水が運ばれてきた。

ロバートは流したが、メンバーが替わるのは冒険者の常。

常連で姿がないのは、そういう事と勘違いしたのだろう。


「後でミケが手続きするが、[五芒星]と名乗っている。」

「こいつらはドグの息子だ。」

エプロン魔族にロバートが自分と弟を紹介する。

口調からすると、この魔族は父と面識があるらしい。


「あらあら〜、こんなに大きくなって〜。」

「じゃあ君がジグ君で〜君はデグ君よね〜。」

自己紹介する前に名前を言われた。

驚いた顔をしたのだろう、エプロン魔族が続ける。


「病弱さを治す為に頭髪を[妖魔の神]に捧げたのがデグくん〜お父さんそっくりの赤い髪がジグ君〜お姉さんの事は覚えてないよね〜。」

レイカとアヤメが驚きを隠しきれず顔を見合わせる。

弟の秘密を知るのだから、確かに幼い頃合ってはいるはずだ。


「見た目はともかく、お姉さんは無理ないかデポ」

ロバートが冗談を飛ばして場を和ませる。


「無理ありませんよ~私は魅惑の伯爵夫人〜シャンヴィル・デポトワールなのですから〜。」

冗談を被せてきたと思い笑った。

エプロン魔族本人も笑っていた。


そしてミケが到着し魔族の自己紹介が冗談でないとわかると、ミケとロバート以外の全員が唖然とした。

皆さんは信じないかもしれませんが、魔獣より厄介な責任者、経営者に会ったことが私はあります。


え?会社のパソコンから読んでるから、すぐ近くにいるって?


(苦笑)


私の黒歴史がまた1ページ。

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