夜明け前
兄弟は蚊帳の外です。
総勢31名。
メンバーの内訳をメモにまとめたものをロバートと各パーティーのリーダーが眺めている。
魔術師が2名。
魔術士が1名。(ミケ)
神官が4名。(レイカ、アヤメ)
聖戦士2名。(デグ)
戦士22名。(ロバート、ジグ)
食堂での作戦会議から3日。
山賊の関所近くまで進んできた。
「ジグ、[五芒星]を本隊から離して予備戦力にする。指揮はお前が取れ。」
「[黒い鬣]らしき人物にはお前があたるんだ。」
他のパーティーリーダー達を交えた作戦会議でロバートから指示をされる。
ロバートが総リーダーなので、[五芒星]代表で出席している。
「本隊は俺が陣頭指揮をとり前進する。」
斥候に出したパーティーからは、山賊達が迎撃準備を整えていると情報が入っている。
山賊側も街に斥候をおいているだろうから、こちらの情報はつかんでいるだろう。
裏切り者がいる可能性も捨てきれない。
こちらの士気は低い。
「正面から当たるのかよ。」
「しばらく様子見の方が良くないか?」
パーティーリーダーの面々が意見する。
みんな弱腰だ。
「食料の余裕がない。」
ロバートがこちらの窮状を明かす。
ゴルツは日数経過による経費の増大を恐れている。短期を決戦させたいのだ。
「どうせなら、あっちにつかねえか?」
とうとう、リーダーの1人が皆が言いづらいことを切り出した。
「止めときな、寝返り組は最前線が相場だ。」
「どちらにしろ戦うんだ。山賊より、商隊の冒険者の方がマシだぞ。」
ロバートが一蹴する。
「だからよ~。あんたを頭にこの人数で寝返れば無下にはできねえだろ。」
他のパーティーリーダー達は成り行きを見ている。
「[黒い鬣]さえ討てば、勝算はある勝負なんだ。」
「不利な方に寝返るバカはないだろう?」
パーティーリーダー達は不承不承ながら了承した。
「明日の夜明けと共に攻撃開始だ。」
作戦会議は終了、リーダー達はパーティーに戻る。
夜明け前
夜営地から本隊が出発した。
[五芒星]は時間差で出るので、皆を見送る。
「ジグ、頼んだぜ。嬢ちゃん、よろしくな。」
ロバートに声をかけられる。
(何故、レイカに声をかけてゆく?)
何か自分が知らないことがある様だ。
「そろそろ始めましょう。」
本隊の背中が遠くなる頃、ミケがレイカに言う。
[視力共有](使1)
[遠話](使1)
[遠視](使1)
[空中浮遊](使1残3)
ミケが次々と魔法をかけて上空にふわりと浮かびあがった。
「レイカ関所はわかる?」
ミケの囁く様な声が、風の音と共に聞こえる。
「……」
レイカが何か答えたが、聞こえない。
「なら始めて。」
ミケの声が再び聞こえる。
レイカが黒い小さな板、スマホとか呼んでいた魔導具を手に声無き詠唱を始めた。
逃げ出す選択肢を気づかせないのはロバートの腕前ですね。
嫌なら去れと言ったら失敗です。
それにさり気なく自分のパーティーを切り離しているのも策士です。
私の黒歴史がまた1ページ。




