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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第6章 商隊護衛

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夜明け前

兄弟は蚊帳の外です。


総勢31名。

メンバーの内訳をメモにまとめたものをロバートと各パーティーのリーダーが眺めている。

魔術師が2名。

魔術士が1名。(ミケ)

神官が4名。(レイカ、アヤメ)

聖戦士2名。(デグ)

戦士22名。(ロバート、ジグ)

食堂での作戦会議から3日。

山賊の関所近くまで進んできた。


「ジグ、[五芒星]を本隊から離して予備戦力にする。指揮はお前が取れ。」

「[黒い鬣]らしき人物にはお前があたるんだ。」

他のパーティーリーダー達を交えた作戦会議でロバートから指示をされる。

ロバートが総リーダーなので、[五芒星]代表で出席している。


「本隊は俺が陣頭指揮をとり前進する。」

斥候に出したパーティーからは、山賊達が迎撃準備を整えていると情報が入っている。


山賊側も街に斥候をおいているだろうから、こちらの情報はつかんでいるだろう。

裏切り者がいる可能性も捨てきれない。

こちらの士気は低い。


「正面から当たるのかよ。」

「しばらく様子見の方が良くないか?」

パーティーリーダーの面々が意見する。

みんな弱腰だ。


「食料の余裕がない。」

ロバートがこちらの窮状を明かす。

ゴルツは日数経過による経費の増大を恐れている。短期を決戦させたいのだ。


「どうせなら、あっちにつかねえか?」

とうとう、リーダーの1人が皆が言いづらいことを切り出した。


「止めときな、寝返り組は最前線が相場だ。」

「どちらにしろ戦うんだ。山賊より、商隊の冒険者の方がマシだぞ。」

ロバートが一蹴する。


「だからよ~。あんたを頭にこの人数で寝返れば無下にはできねえだろ。」

他のパーティーリーダー達は成り行きを見ている。


「[黒い鬣]さえ討てば、勝算はある勝負なんだ。」

「不利な方に寝返るバカはないだろう?」

パーティーリーダー達は不承不承ながら了承した。


「明日の夜明けと共に攻撃開始だ。」

作戦会議は終了、リーダー達はパーティーに戻る。


夜明け前

夜営地から本隊が出発した。

[五芒星]は時間差で出るので、皆を見送る。


「ジグ、頼んだぜ。嬢ちゃん、よろしくな。」

ロバートに声をかけられる。

(何故、レイカに声をかけてゆく?)

何か自分が知らないことがある様だ。


「そろそろ始めましょう。」

本隊の背中が遠くなる頃、ミケがレイカに言う。

[視力共有](使1)

[遠話](使1)

[遠視](使1)

[空中浮遊](使1残3)

ミケが次々と魔法をかけて上空にふわりと浮かびあがった。


「レイカ関所はわかる?」

ミケの囁く様な声が、風の音と共に聞こえる。

「……」

レイカが何か答えたが、聞こえない。

「なら始めて。」

ミケの声が再び聞こえる。


レイカが黒い小さな板、スマホとか呼んでいた魔導具を手に声無き詠唱を始めた。

逃げ出す選択肢を気づかせないのはロバートの腕前ですね。

嫌なら去れと言ったら失敗です。

それにさり気なく自分のパーティーを切り離しているのも策士です。


私の黒歴史がまた1ページ。

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