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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第6章 商隊護衛

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慣れてゆく

ゴムと板バネのない世界の馬車は乗り心地は最悪なはずです。

領都を出て順調に商隊は進んでいる。

移動速度は普通に歩くのと変わらないので助かっている。

前世よりは体力ついたけど、まだまだだからね。


馬車には荷物を積んでいる荷馬車と、輸送に必要な飼い葉とか、食べ物とかを積んでいる雑馬車があり、商隊の偉い人も雑馬車に乗っている。


私とミケさんは商隊の前の方を歩き、アヤメは雑馬車の御者台に乗せられ、ロバートさん達は後の方を歩く、[五芒星]は何故か分散した。


商隊の1番後ろには10人ぐらい女の人を載せた馬車がついてきている。

建前上は商隊でない馬車だけど、そういう馬車。

「女性陣は近づかないのが暗黙のルールよ。」

ミケさんから教わった。


突然、ミケさんが、[先生]を呼んでくると言って、慌てて雑馬車に走っていった。

アヤメは商隊では、リザードマン語で[先生]と呼ばれている。


私からみても、杜若を手に佇むアヤメは、時代劇に出てきた腕利き用心棒に見える。

実際アヤメは腕利きだけど。


しかしミケさんどうしたんだろう?

アヤメに急用?


『先程から馬が怯えている。何かいるのかも知れん。』


「何か待ち伏せしてるのマドウ?」

私はあたりを見渡す。

なにも潜んでいるようには見えない。

ミケさんがアヤメを連れて戻ってきた。


「レイカ、アヤメ、追尾されている。」

「ゴルツが叫んだら一緒に森に走れ。」

ミケさんの口調と態度が戦闘モードだ。



「冒険者上を見ろ!」

後の方で商隊長のゴルツさんが叫んだ。

アヤメに手を引かれて走る。


「グリフォンだ、狙われてるぞ。」

誰かが叫ぶ。

あれ?護衛なのに逃げるの?


「馬車から馬を外し、森に追い込め」

馬車の御者を勤める商会の人などが馬車を止め、馬を外している。


『グリフォンは馬肉が好物だからな。』


ミケさんが隠れている私達の所に駆け寄ってくる。

「グリフォンと戦うなんて考えちゃ駄目よ。」


「はい。」

アヤメが素直にうなずく。

え?護衛だよね。


「レイカ、グリフォンは馬の2〜3 頭も食べれば満足して去ります。」


「もし、戦うとなればグリフォンは強力な身体能力に魔獣としての魔力を乗せて戦います。」


「充分準備した待ち伏せをしても勝敗は五分です。」

アヤメの説明にミケさんは満足そうにうなずく。


「でも、ゴルツさん戦えって言ってるよ。」

実際何組かのの冒険者が武器を構えて準備している。


「グリフォンが馬肉の次に人肉が好物だからよ。」

ミケさんが、さらっと怖い事を言った。


商隊の後方にグリフォンが襲いかかったみたい。

悲鳴、怒号が聞こえる。

ロバートさん達がいる方だ。


「ジグ、デグなら、ロバートがいるから大丈夫よ。」

ミケさんが私の心を読んだ様に話す。

実際魔法で読まれてる?

小声でマドウにきいてみる。


『その心配はない。魔法を使われたらわかる。』

『冷夏が、わかり易いだけだ。』

マドウにディスられる。


結局、一刻程グリフォンが去るのを待った。

飛び去り間際にグリフォンを見たけど、均整のとれた美しい生き物だった。


小さな象ぐらいある大きさの魔獣が魔力を帯びた翼で羽ばたいていく。

残酷で凶暴な美しさ。

貴族の紋章になるのも納得。


襲撃の後片付けが始まる。

「レイカ、私達は祈祷にいきましょう。」

アヤメに呼ばれた。

「戦闘状態でない時の回復魔法はミケさんに聞いてからでないと……。」

奇跡はただじゃない。

神殿でも習ったけど、腑に落ちないよ。


魔獣についばまれた複数の遺体を見て、気分の悪さと罪悪感を感じたけど、その夜の夕食は普通に食べる事が出来た。

グリフォンの馬肉好きの話はすっかり忘れ去られてしまった気がします。

ピポグリフの話とかも。


私の黒歴史がまた1ページ。

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