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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第6章 商隊護衛

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二つ名

商隊護衛は進む街道にもよりますが、新米冒険者向きの仕事です。


「ほら、出禁のデグよ。」

殿馬車のさらに後、本当の一番後ろを進む慰安馬車の妓女達が弟を指差して騒ぐ。


慰安馬車を除く商隊の馬車は10台。

護衛の冒険者は10組。

ロバート、弟と共に殿馬車の近くを歩く。


ミケがレイカを上手く商隊の前方に誘導している。

夜営時以外は、パーティーで固まる理由はない。


保存食は朝晩支給だが、日当1日銅貨10枚。主要都市到着時支払い。

入札を経て示された条件は最低だった。

大地母神殿からの[人狼斬り]同行依頼がなければ受けない条件だ。


こんな最低条件をのむのは、移動目的地が一致している冒険者以外は新米か、訳有りかになる。

10組中、5組が新米、3組が訳有りだった。


訳有り組の2組は商会への借金だ。

依頼に失敗し、神殿への治療費用を借りて返せない。

商会の荷物を破損してしまい賠償金がわりに働いている。

そんな感じだ。


訳有り組も、新米組も、レイカにそれとなく引抜きのアプローチをしてくる。

実力ある歩き巫女には、それだけ価値がある。


アヤメは雑馬車の御者台に載せられて[先生]と呼ばれている。

街に居るときに商隊に金をせびりにきたチンピラ達が、アヤメを見ただけで逃げ出したからだ。

本人は不本意そうな顔をしている。


「[出禁のデグ]ってなんだい?」

弟に尋ねる。

弟にいつの間にか不名誉そうな二つ名がついている。

弟は答えず、顔を赤くして首を振る。


「そのままさ、リキタの娼館で3つ、デグは出禁になっている。」

ロバートが答える。


どういうことだ?

普通、娼館で暴れるとかしないと出禁にはならない。

行為中に首を絞めるなど、何か問題ある性癖でもあるのだろうか?


「デグの好みは清楚な感じの……って、これはわかるか。」

デグは首から頭のてっぺんまで赤い。


「で、デグが買った妓女は3日は役に立たなくなる。」

ロバートがニヤリと笑う。

「一晩で声が枯れちまうし、しばらく惚けちまう。」

で、やり手ババアが言うわけだ。

「隣りの部屋の客からはうるさいと苦情がくるし、商売道具を3日も壊されたら、商売にならない。出禁だよ。」


そういえば、文字が読めないデグに何通も手紙がきていた時期があった。


「デグ、さっきの清楚っぽい娘『一回目はロハでいい』って言ってたぜ。」

ロバートがデグをからかう。


そんな緊張感のない旅の日々が何日か続いている。

国境を越えるまではこんな感じだろう。

商隊護衛の一番の敵は人間です。

ゴブリンは商品にはあまり興味がありませんから。


私の黒歴史がまた1ページ。

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