白布を掲げる
転生者が降伏の合図として伝えたのですが、意味合いが変化しはじめてます。
全員で森を出て村を見る。
村長の家に白布が掲げてある。
「戦闘は終了したみたいだな。」
ロバートが言う。
昔の転生者が魔王軍と取り決めた戦闘終結の合図。
そんな古風な合図を掲げるのだからメデューサが勝ったのだろう。
ミモザ・リヒテは旧魔王軍の生き残りだと弟から聞いている。
村を迂回し領都に戻る。
その選択肢もあったが、ロバートの指示は違った。
「ジグ白布を掲げて、降伏交渉に行ってくれ。話が早いはずだ。レイカも連れてゆけ。」
弟がレイカを心配そうに見つめる。
「デグ、降伏の使者は神官などが勤めるのが慣例なんだよ。」
「だが嬢ちゃんは交渉が得意ではなさそうだからな。」
ミケが、こちらを心配そうに見つめてくれた。
白布を掲げて、村に入ると石仮面をつけたメデューサに広場で出迎えられた。
レイカは集められた死体に祈祷を始めている。
「しんかんがいなくてこまっとった。とむらいができんかって。そのこがレイカはん?」
自己紹介が終わったあと、魔女ミモザは訛の強い共通語、彼らの言う人間語で話しかけてくる。
降伏交渉はすんなり進んだ。
魔女ミモザは穏やかな人物だった。
村人の半数以上を石化させるか、殺害したメデューサとは思えない。
様々な条件を出されたが、いくつかの譲歩も織り交ぜられており、そこまで厳しい条件はなかった。
・伯爵と交渉したいので[五芒星]には親書を領都まで運んで欲しい。
・大地母神殿には[五芒星]が仕事を果たしたと証明書は書く。
・誰か1人は人質として残ってもらいたい。
・老神官には講和文書に署名し村人をまとめて欲しい。
・講和すれば石化した村人を徐々に治すし、一揆を起こしたことも許す。
全員で協議し、魔女ミモザの条件を受け入れ降伏した。
人質としてはククルを残す事にした。
「わ、私は[五芒星]ではないです。人質として何で残されるんですか?」
ククルが半泣きでミケにしがみつく。
「私は[五芒星]と関係ない村長派の冒険者です。ってミモザに話しに言ったら?止めないわよ。」
「レイカ、広場の村長の首は3日経ったら埋葬してって言われてたわよね?」
レイカは黙って頷く。
「大丈夫、しばらくは使い走りで領都と聖女ミモザ村を行き来するから。」
「タイミング見て拾ってあげるわよ。」
こうして推薦依頼は無事達成した。
ロバートに、なぜ逃げずに降伏したかを尋ねたが、かえってきた答えは良くわからなかった。
「軍服が旧魔王軍の下士官の制服だったからだ。」
気のせいだと思うがミケが、ほんの一瞬見透かす様な目をした。
ロバートの勘の良さは無意識に洞察しているので、理由をきいても無駄です。
探偵にでも転生すれば相棒が解説してくれるかも(笑)
私の黒歴史がまた1ページ。




