消去法
依頼条件は54話を参照してください。
朝
食事を取りながら、今後の対応を話し合う。
魔女と村人に見つからない様に森から脱出するにはどうしたら良いか?
魔女に見つからない様にしばらく森に潜伏できないか?
助かる可能性を探る話し合いだ。
「魔法で眠らせるとかすれば街道見張る村人は突破できませんか?」
ククルが提案する。
「時間がたって村人の熱狂が去れば可能ね。でも2〜3日は無理よ。」
「今は直ぐに次の村人が追ってきて、魔力が尽きる方が早いわ。」
ミケが否定する。
扇動された村人が余所者に容赦ないのは皆知っている。
「ユウ坊がこんな事を……」
老神官はすっかり肩を落としすっかり意気消沈していて、泉を眺めているばかり。
議論に参加する様子はない。
「デグさんを助けるのは難しいですか?」
レイカが俯き加減に訊ねる。
いや呟いたのか。
誰も答えない。
「魔女から隠れて森へ潜伏し村人が落ち着くまで待てないかなミケ?」
改めて確認する。
「ジグ、頭にお花畑でも咲いてるの?」
「ここは魔女の森。敵対したままなら、入りこんだゴブリンと同じく処分されるだけよ。」
厳しく言葉を返された。
「魔女さんに味方になって貰えれば、村長さんとも話し合いできるかも知れない。」
いきなりレイカが大胆な提案をしてきた。
「面白いわね。味方につけなくても敵対しないだけでも助かるわ。」
ミケが反応する。
「村人とメデューサ比べたら話し合いになるのはメデューサのほうでしょう?」
可能性を消去して残った方法。
「しかし、交渉には材料がないと駄目だろう?」
ロバートは現実的だ。
「もし話し合いに応じなければ、泉に毒を投げ込むって言ったら?」
話しながらミケが妖艶な視線をロバートに送っている様に見える。
からかう様な笑顔だ。
ロバートは一瞬こちらに視線を投げてくる。
「こっちはデグが捕まってるんだぜ。ミケ。」
ロバートは少し呆れた口調で返す。
「ジグにククルを口説けと進めていた人の台詞には思えないわね。」
ミケは笑顔を変えないが、攻める様な冷たい視線が少しのぞいた。
レイカが驚いて顔を上げ、ククルがこちらに視線を飛ばしてくる。
ククルの頬がこころなしか紅い。
「メデューサに直談判してみましょう。」
ミケがはっきりと言った。
「戦うのではメデューサにも村人にも勝てない。手詰まりなのだから。」
「石像として、デグと仲良く魔女の食卓を飾る可能性の方が高い。」
ロバートは反対の様だ。
「メデューサさんに謝罪して、[昔からの約束を守りたいんで協力して下さい。]ってお願いするしかないよ。」
レイカがロバートに訴える。
正直、ロバートの意見が正しく思える。
魔獣メデューサに話し合いを持ちかけるなど、狂っているとしか思えない。
「嬢ちゃん。もしゴブリンが2〜3日庭に泊めてくれって言ったら泊めるかい?」
ロバートが言う。
「ゴブリンなら追い払うけど、猫とかなら泊めるかも。」
レイカの斜め上を行く回答。
ロバートが苦笑する。
ミケとレイカの表情を確認してロバートが決断した。
「しかたねえ、嬢ちゃんの意見にのる。」
「婆さんとククルは洞窟にいてくれ。」
「俺らは魔女と話をつけてくる。」
ククルが「私達を見捨てるつもりですか?」と慌ててロバートにすがりつく。
「大丈夫よ。[五芒星]は貴女達を見捨てられないの。」
ククルをロバートから引き離しつつミケが言う。
「今となっては条件的に、キュウ神官を領都に無事連れ帰らないと後金がもらえないわ。」
「見捨てるにしても、ククル。」
ミケが言葉を区切る。
「貴女だけよ。」
ミケは本気にも、冗談にも、見える表情をみせた。
ロバートがほのめかしていたミケの冷淡さが垣間見える。
付き合い始めて、以前に比べ、ミケの口調が柔らかくなっている気がしていた。
ミケの気持ちを和らげられていると思っていた。
ミケの理解者で恋人だと思っていたのは思い上がりだろうか?
ロバートは当初、森に逃げ込めば潜伏は容易いと考えていました。
魔女により、森が思ったより管理されていて、追い詰められています。
私の黒歴史がまた1ページ。




