使い捨て
時間的には少し戻ります。
ロバートさんの背中から血が出ている。
逃げ出す際に斬りつけられたのだろう。
魔女の家を充分離れてから応急手当をした。
止血し、傷を洗い、布を巻く。
「すまねえなジグ。まずは村まで戻るぞ。」
苦痛に顔をしかめながら、革鎧を身に着ける。
ロバートさんは何か考え込むように歩きはじめた。
しばらくすると突然
「ジグ、あのソバカス口説けるか?」
こちらを見ることなく言われた。
「どういう意味です?」
レイカさんは行方不明、弟と恋人は石化。
考えが、まとまらないまま歩いていたので、本当に意味がわからなかった。
「パーティーを立て直す際に魔術師は居たほうがいいだろ?」
当たり前の様に言われた。
「まさか、助けにいかないんですか!」
ミケもデグも死んだ訳じゃない。
レイカだって、そのうち合流出来るかもしれない。
「馬鹿野郎!」
「てめぇらは2人がかりで骨野郎に勝てなかったじゃねえか!」
ロバートが向き直る。
「メデューサに骨野郎が3体」
「こっちは2人だ。それにジグ。武器はどうした?」
胸ぐらを掴かまれる。
「3人は諦めろ。あの世間を知らなそうなソバカス女を口説いて仲間に引き入れるんだ。」
返す言葉がない。
ここでロバートを殴りつけても、冒険者として立ち行かない事はわかっている。
「ミケがパーティー資金の半分は[まわる水車亭]に預けているはずだ。」
「ミケは良い女だったよ。」
ロバートさんが手を離して言う。
自分は地面にへたり込む。
「あら、ありがとう。ロバート♡」
「ジグ、そこで腑抜けてるならロバートに乗り換えちゃうわよ。」
顔を上げる。
ミケが、いつの間にかに近くに立っている。
ロバートも驚いている。
「ジグ、落とし物よ。」
スケルトンウォリアーに弾かれた剣を渡される。
「重かったんだから。」
「中魔法は意識と魔力があれば使えるの。石化しても使えたのは発見だわ。」
ミケが微笑む。
ミケを抱きしめていた。
涙が出てくる。
ミケが軽く抱きしめかえしてくる。
「姿は似てなくても、兄弟だな。デグと行動が変わらねぇ」
ロバートが呟くのが聞こえた。
歩きながらミケが話す。
「レイカは村に戻っているはずよ。」
「彼女の持つ魔導具にはそういう機能もあるはずだから。」
どんな魔導具なんだ?
しかし、もし、レイカも無事なら、まだ戦えるのではないだろうか?
「ロバート。やはり弟の事は見捨てるつもりなのか?」
思い切って訊ねる。
「ジグ、ミケとレイカは替えが効かねぇ。俺ら戦士は替えが効く。」
やはり見捨てるということか。
「レイカが納得するかしら?ロバート。」
「ここで結論出さずに話し合いましょう。」
ミケが話しを引き取ってくれる。
「レイカ嬢ちゃん次第、全ては女神の思し召すまま。」
ロバートはそうおどけてみせた。
「……」
言葉が出なかった。
自分は沸き上がる怒りと、どうにもならない無力感が、ごちゃまぜになったまま、下を向いて歩いていた。
現実的でないと長生き出来ません。
仲間と信頼がなくても長生き出来ません。
つまり冒険者は難しい生き方なのです。
しかしチェックしても、誤字などがなくならない。
私の黒歴史がまた1ページ。




