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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第5章 仮面の魔女

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名前

中古の武器は表面上あまり流通していません。

武器関係のギルドが流通を阻んでいるからです。

もちろん表面上はです。


騎士さまの討伐隊。

弓兵多めの編成は石化対策だったんだろう。

だけど、簡易ストーンゴーレムで蹴散らしたら、簡単に返り討ちに出来た。


戦利品あさりをしていると声をかけられた。

「あの〜森のメデューサさんですか?」

そちらを見ると大地母神の歩き巫女がこちらを見ていた。

変な石仮面をつけている。


目が合うが石化しない。

「ああ、この仮面。魔導具なので……。」

「歩き巫女のミモザと申します。」


薄汚れた神官服に大地母神の聖印。

痩せ細った身体。

喜捨でも欲しいのだろうか?


いや、「メデューサさんですか」と訊かれた。

魔導具の仮面もつけている。

私に用があるのだ。


「うちになんかようどすか?」

軍で適当に習った人間語で返答を返す。

発音とか全くあってる気がしない。


「代替わりされたリキタ伯爵さまから戦後保証についての交渉を頼まれてきました。」

みすぼらしい歩き巫女は伯爵の署名入りの紙束を取り出した。


内容は簡単だった。

先の魔王戦争の終戦から、そこそこ時間が経った。

だが、各地に魔王軍の残党がおり、討伐も進めたが抵抗が激しい。


そこで魔族領まで帰路の安全を保証するので、魔族領に帰還しないか?

と、勧めているとのこと。


新魔王は魔族諸侯の反乱や不服従に悩まされており、先代魔王軍所属の魔族、魔獣の帰還は歓迎している。

と書かれていた。


「おことわりどす。」

魔族や士官待遇の魔獣なら新魔王軍に居場所あるだろう。

だが、後方撹乱用にバラ撒かれた使い捨て魔獣には新魔王軍に居場所はない。

私はミモザにそう説明した。


しかしそれからが大変だった。

ミモザは見た目によらずタフな交渉人だった。

困窮する開拓民の惨状をうったえたり、伯爵から下級騎士待遇の確約書を貰ってきたりした。


最終的に森の8割を開拓民に譲渡し、森の中に住宅を貰って住み着く事になった。


そして、歩き巫女ミモザは開拓村の代表になった。

孤児を養子にして村長に仕立てた。


時が来て、彼女が大地母神の御元に去る前、二つ贈り物をくれた。

自分が居なくなっても、村に出て来れる様にと魔眼封じの石仮面。

そして、メデューサさんでは「人間さん」みたいで悪いからと[ミモザ]の名前を。



「そうやので、うちはミモザ・リヒテいうんどす〜」

久しぶりにワインを空けたから酔ってしまった。

聖戦士には昔話なんて退屈だったかな?

ごちそうさま。

大丈夫、一日経てば神力は回復する。

精神が狂って壊れないかぎりね。

難病から意識が戻ったにもかかわらず、眼しか動かせなかった為しばらく気がつかれなかった男性の話を見た事があります。

(TEDをNHKが翻訳編集したものだったと思います。)

その講演が石化されて意識がある状態を良く表現しているとその時は思いました。

今考えると、少し不謹慎ですが。


私の黒歴史がまた1ページ。

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