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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第5章 仮面の魔女

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敗走

デグの怪我はまだ治せていませんでした。

後ろから声がして、反射的に振り向こうとした。

『振り返るな冷夏!』

マドウに頭いっぱいになる声で叫ばれた。


横にいて私よりも先に振り向いていたミケさんが石になってゆく。

え?

デグさんが雄叫びを上げて、こちらに走って来ようとしている。


「レイカ走れ!逃げろ!」

ロバートさんの声がかかり振り返らずに森の中に走りこんだ。

嘘でしょ?

ミケさんが石になってた。


『あれは魔獣メデューサだ。目があった者を石にする魔力を持つ。』

『しかもゴーレム作成の魔法まで使っている。魔族級の個体だ。』

懸命に走る。


息が切れるまで走って気がつくと、森の奥で1人になっていた。


『仲間を探して大声を上げたりするなよ。魔女に見つかる方が早い。』

マドウが忠告してくれる。

でも、声なんて出す余裕ない。

息が苦しい。

木陰に座り込んでしまう。


しばらく座りこんでいたが息が整うと、今度は不安がわいてくる。

あの時の光景がフラッシュバックする。


「ミケさんは死んじゃったの?」

『いや、石化しただけだ。あの感じではデグも石化したっぽいな。』

『スケルトンウォリアーに殺されるよりはましなはずだ。』


デグさんは私を庇ってくれた。

あそこで雄叫び上げたのは、振り向きかけた私を押し留め、メデューサの注意をひくため。

きっとそう。

庇ってくれた。

涙が溢れてくる。

私は聖女でも何でもないのに。


「1人じゃ何もできないよ。」

心細い。

私一人ではゴブリンでさえ対処する自信がない。


『泣くな冷夏。石化は解除魔法でも神聖魔法でも解除できる。接触が必要で、魔力でも神力でも5はかかるがな。』


助けなきゃと思う。

そうは言っても、1人じゃどうにもできないと思う。

涙が止まらない。


『混乱しているな冷夏。』

『まずはミモザ村へ戻る。』

『ロバートやジグが無事なら必ず村ヘ戻るはずだ。』


マドウの言うことはもっともだとは思う。

でも、今は完全に森で迷っているし、どうにもならない。


『よいか冷夏。』

『メデューサは魔力や神力を吸い取って食事にするので、石化した者を粗末にはしない。』

『子孫の増やし方も気にいった人間の女性にメデューサ化の魔法をかける方法で、かけられた方も基本は受け入れる必要がある。だからスキュラの時みたいには多分ならない。』


マドウが私を慰めようとしてくれている。

不器用だけど……。

2時間くらいは泣いて、そして茫然としていた。

この世界で言う一刻ぐらいの間。


木漏れ日が綺麗だ。

鳥や虫の声が聴こえている。

様々な命が生き延びる為に相争う、生命豊かな森。

おしりが痛くなってきた。

私の旅はまだ終わらない。


『さて、ではミモザ村の簡易神殿を思い浮かべろ冷夏』

『転移魔法なら2人よりも先に戻れるはずだ。』

タイミングを見計らいマドウが提案してきた。


そうか、転移魔法があったんだっけ。

マドウの下手くそな慰めもあって少し、気持ちが落ち着いていた。

高く、低く、私は詠唱を初めた。

ふわっとした感覚が訪れた。

この世界のメデューサは顔を見るではなく、視線が合うと石化します。


私の黒歴史がまた1ページ。

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