言い伝え
農村の人間関係は濃厚です。
何しろ農業は人力、共同体で対応するのが当たり前なのですから。
ミモザ村にはすんなり入れた。
もっと騒然としているかと思っていたが拍子抜けした。
領都の東西に街道が通っている為、北にあるこの村には宿屋はない。
村長派の[三本の矢]は村長宅に陣取っているらしい。
こちらは女性陣は簡易神殿に男性陣はその側でテントに泊まる様になった。
夜
村長がソバカス顔の女魔術師を連れて簡易神殿を訪ねてきた。
「キュウ婆様が冒険者を雇うとは。知らぬ間に村人から随分絞り取ってたみたいだな。」
まだ若い村長が言う。
「雇ってなどおらん。」
「歩き巫女さまとその護衛達が偶然立ち寄ったまでじゃ」
キュウ婆様と呼ばれた老女、いや老神官が返事をする。
確かに老神官に雇われてはいない。
ただ偶然訪れた訳ではない。
「まぁ良い、これから客人達と食事じゃ。」
「ユウ坊やと魔術師殿も食べてゆくが良い。」
ユウ坊やと呼ばれた村長は何か言いたそうにしたが、ソバカス魔術師が「ご馳走になります!」と即答した為何も言い出せなくなった様だ。
「う~ん。まず村で起きている事を、教えて下さい。」
食事をしながら、レイカさんが話かける。
ソバカス魔術師は食事をがっついて食べている。
ロバートさんもミケも呆れ顔だ。
弟はがっついてはいないが、同じぐらい食べている。
「この村は昔、伯爵様に仕えていた騎士が魔女ミモザと戦い、魔女から奪った土地を開墾したのが始まりとされておる。」
「その時、破れたミモザは自らの棲家として山裾の森だけは残して欲しいと願い、騎士はそれを認めた。」
「それが今の魔女の森なのじゃが……」
老神官が話を続けようとするのを村長が遮った。
「そんな迷信を信じたキュウ婆様とその一派が、魔女の森の開墾に反対しているんだ。」
「村長の家はその騎士の子孫とされているが、うちは貴族じゃねぇ。現に俺はミモザ村のユウと名乗ってる。」
「迷信ではない。わしがまだ歩き巫女さまと同じぐらいの歳に森で迷い、家の様なものがあるのを見たのじゃ。」
老神官は言い返す。
「夢でも見たんだろう婆様。事実でも、もう50年も前だ。はぐれエルフでもいない限りあり得ない。」
「エルフだとしても、エルフ1匹なら開墾の余録として村の所有物に……」
そこまで話してレイカさんの冷ややかな目を見て黙った。
「……ともかく村としては、少しでも農地を拡げたい。それに魔女の森には水源がありそうだ。」
咳払い後、村長は話をそう締めた。
ミケは気にした様子はまるでないが村長は気にしている。
「明日、他の村人からもお話聞いて良いですか?」
レイカさんが思案顔で村長に訊く。
村長は「では明日」と言って素直に帰っていった。
ソバカス魔術師は何故か簡易神殿に残ると言う。
転生者の貨幣統一から納税は貨幣です。
ただ領主は物納を命じる事も出来ます。
農村は豊作だと価格が下がり税が重くなり、不作だと物納を命じられ飢える可能性が出ます。
ただ検地が適当なので、密かに開墾すすめれば村は豊かになります。
私の黒歴史がまた1ページ。




