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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第4章 領都にて

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急がば回れ

この世界でも月は1つで満ち欠けします。

冷夏視点です。


アヤメちゃんに連れられて、大地母神殿への道を急いでいる。

アヤメちゃんは、普段使う大通りではなく、近道の裏通りをぐんぐん進むので、余程の急ぎみたい。

ただ満月が近いのでそんなに暗くはない。


「アヤメちゃん、その刀は?」

急いでいる理由より、アヤメちゃんが、普段身につけていない武器の方が気になる。


「護身用です。無銘ですが、出来が良いので気に入っています。」


『レイカ間違っても、日本刀などと言うなよ。転生者とバレるぞ。』

『この世界ではリザードマン刀と言う。』


「アヤメちゃん。ちょっと待って、息きれるよ~。」

私の情けない声に、アヤメちゃんが少し速度を緩めてくれる。

「すいません。レイカさん。気づかずに。」


アヤメちゃんは竜の島の対岸にある商業都市ハルピアの出身で神官見習い。

お母さんが大地母神の歩き巫女で、この街の出身だった縁で遠くこの街に留学にきている。

大地母神さまの啓示を受けて正神官になったら、歩き巫女になって諸国を旅したいって、話している。


リザードマン語をアヤメちゃんも話せることが、きっかけで話す様になったんだけど、

「啓示を受けた正神官と見習いが対等に話すのは問題になります。」

とか言って口調は堅苦しいまま。

この世界での初めての友達と私は思っているけど、片思いかな?


ふと気がつくとアヤメちゃんの足が止まっている。

「[急がば回れ]でしたね。すいません。」

ことわざだけリザードマン語で、アヤメちゃんが呟いた。


「ほら、やっぱり戻ってきた。」

「2人に増えてるラッキー。」

「罰あたりだなぁ、大丈夫か?」

「見習いなら大丈夫だろ。」

う~ん。若いチンピラが3人もいる。


「衛兵なら半刻は来ないぜ。」

「巡回終わったばかりだからな。」

「2人で3人の相手だからすぐに済むだろ。」

「お前、早いからな」

なんか笑っている。


「せ~ので、逃げようアヤメちゃん。」

アヤメちゃんに小声で言う。

前世なら泣き出しそうな場面だけど、なんか怖くなくなっている。

オーガに比べると大した怖さはない。

でも、神聖魔法の無駄使いはできないし。

大通りまで逃げれば大丈夫だと思うんだけど……。

前に月が7つある世界のお話がありましたが、潮の満ち引きの計算とか、大変なんだろうな。

と思っていました。


私の黒歴史がまた1ページ。

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