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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

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鶏口牛後の行方

レイカル視点です。

「初にお目にかかります。聖女レイカ様の弟子、レイカルです」


「教育の長のケリーです。彼女は弟子のロカ」


 夜が開け、大地母神殿の門が開くとすぐに私達[鶏口牛後]はケリー上級神官の部屋を訪ねました。一刻もすれば一般信者の受け付けが始まり慌ただしくなってしまうからです。


 ケリー上級神官の近くには下級神官のロカさんが控えており、厨房からもらってきた湯で香茶を淹れています。お師匠様に聞いていた様に質素な生活をされている様に見受けられました。


「そちらの方は?」


「……」


「冒険者仲間のルドムさんです」


 何故か緊張し言葉が出ないルドムさんに変わり、私が返答します。帯剣した姿と聖印に通る白紐から神官戦士と伝わっているとは思いますが。


「どうぞ。座って下さい」


 ロカさんが香茶を4人分テーブルに置きました。薄緑の他に紫紐を着けているので薬師資格持ちと分かります。ケリー上級神官と私は椅子に座りました。


「その……ルドムさんも。剣は外されても大丈夫ですよ。」


 ロカさんが自身も席に付きながら、ルドムさんに話しかけます。ルドムさんも剣を近くに置き座りました。


 朝食の鐘が鳴るまで約一刻。ケリー上級神官と雑談を交えながら、神学の話や医学、治癒魔法などの話をします。大地母神図書館で読み、疑問に思っていた事なども尋ねると的確な見解が聞けて驚きました。


「レイカからの手紙に『レイカルさんは上位互換』とありましたが、なるほどですね」


 お師匠様が手紙に何を書かれていたのか知りませんが、ケリー上級神官は私を見て頷きました。ロカさんは熱心に紙に記録を取っています。ルドムさんはそれを羨ましそうに眺めていました。


「あの……ルドムさん。メモは後でお渡ししますよ」


「いえ、私はまだ文字を習い始めたばかりで……」


「そうですか。私も本格的に学んだのはリキタに付いてからです」


 と、朝食の鐘がなりました。上級神官以上は上級神官用食堂か一般神官用食堂か選べます。

(もちろんメニューも違うぞ)


「レイカルさん。一般食堂に移動しましょう」


 お師匠様やアヤメ様もケリー上級神官と良く食堂で話をしたと聞いてます。

私達4人は食堂に移動しました。


☆☆☆


 一般食堂は神官、下級神官で混雑していました。ちなみに神官見習いは食堂は使えるものの、朝食の鐘が鳴る前までに食事を済ませねばならないそうです。


「ケリー先生。昨日商隊が着いたので、今日の雑スープには塩漬け魚の身が入ってます」


 リキタ大地母神殿ではメインの雑パンやジャガイモは食べ放題ですが、日替わりスープは一人一皿。上級神官食堂の様に腸詰めや卵料理が付く事はありません。


 ただ神殿関係者は基本無料なので、農村食い詰めに近い状態の少女は神力さえあれば神官見習いになりたがります。才能ある娘を持った貧しい両親は女衒に売るか神殿に入れるか迷うと聞きました。


「ルドムさん。その剣は銘ある物なのですか?」


 剣を気にかけるルドムさんにロカさんが尋ねました。ルドムさんはケリー上級神官の部屋に預けず剣を持ち歩いていたからです。神官戦士資格持ちとはいえ食堂に剣を持ち込んでいるのは少数派です。


「魔族との契約で竜人歴で10年借りている魔剣です。銘は『アルファ』。良く分からないのですが、月に銀貨1枚づつ払ってます。10年後、残金の金貨36枚払えば譲ってもらえるとか言う契約です」


「魔剣なのですか?借りている?金利は?」


「レイカル様の口添えで金利はゼロだと聞いてます」


 オーナーが普通に借金して買うより、良い契約だとルドムさんに話して結んだ契約です。金利あれば酷いですが無ければ安く魔剣が使える契約だと。


「ルドムさんは文字が良く読めないのでしたね?大丈夫なのですか?」


 聞くとなしに聞いていたケリー上級神官が私に確認を求めてきました。基本壊れない魔剣なので、剣を無くしたり盗られたりしなければ問題なく安価で魔剣が使える契約です。期限前に無くすと金貨40枚の残金と利子が発生するので詰みますが。


 ケリー上級神官は少し眉をひそめ考えてます。そして改めて質問してきました。


「ルドムさんは魔剣に見あって、腕が立つのですよね?」


「はい。並の腕ではルドムさんの剣撃3度躱すのは不可能です」


 私の答えにケリー上級神官はロカさんに目配せをし、何故かロカさんが頷きました。


「ルドムさん。ここで、リキタ神殿で修行しませんか?神官戦士長には私が話を通しますし、魔剣は教団で買取り貸与する事にできます。算術や文字も学べますよ」


 その後、色々話をした結果ルドムさんはリキタ神殿に勤める事になりました。私としてもハルピアの外に伝手つてがあるのは()()()()()に助かる話です。


こうして[鶏口牛後]は私一人になりました。


(槍の神官戦士長と、ルドムさんの手合わせは良い勝負だったぞ)


仮タイトルは「残クレの魔剣」でした(笑)

魔剣の銘がアルファなのは……。

利子があると金貨40枚に金利かかり、酷い事になります。

文字が読めても意味が分からない契約の一種ですので、文字がほぼ読めないルドムではどうにもなりません。

しかし情弱は自己責任。恐ろしい世界です。


私の黒歴史がまた1ページ。

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