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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

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難しい事

デグ視点です。

 大きく飛翔したコカトリスはこちらには向かって来ず、猟師小屋の屋根に跳び上がった。攻撃してくる気配が無くなったので警戒しながらも、猟師小屋に近づく。


 猟師小屋内では最初に見た片手剣の男が肩と胸と左腹に魔矢を受け座り込む様に倒れている。肩と胸は骨は砕けているだろうが問題はない。


 問題は左腹で内腑が傷付いているだろう。即死はしないが魔法で治療しない限り出血で死ぬ致命傷だ。しかも苦しむ死に方をする。


 男の後ではヘルメットを外したハーフダークエルフの少女が男を支える様に壁を背に座っている。正確には座っていた少女の上に男が倒れ込んだのだろう。両手を頭の後で組み降伏の意を示している。


「ダークハーフエルフっすか。美少女っすね。ハルピアなら捨て値でも金貨40枚にはなるっすよ」


「待って下さイ。それよリ、聞きたいことありまス」


 チャガラが値踏みして、男に止めを刺す為近づこうとした。だがルチェ殿がそれを遮った。


「外の魔獣コカトリスは貴女ガ?」


 少女が頷き、ヘルメット型の魔道具で操れると説明をした。ちなみに少女の名はマレーネ。魔獣はピヨちゃんと言うらしい。近くには運搬用の魔籠が転がっている。


「魔獣使いですカ。でモ、魔道具は籠もヘルメットも刻印は無いですガ、魔族王立工廠の造りでス」


「この男はなんすか?止め刺してもいいっすかね?」


 少女をルチェ殿が尋問している間も仰向けに寝かされた男は呻いている。傷口に布は巻いたがやはり腹部の出血は完全には止まらず血が滲んでいた。放置すれば2〜3日苦しんで死ぬだろう。


「傭兵。クロスと呼ばれてた。出来れば助けて欲しい」


 チャガラに答えた少女が、遠慮がちに申し出た。助けるなら治癒魔法は必須だが費用が払える様には見えない。


「対価は払えるっすか?自身は捕虜なんっすから、金にはならんっすよ」


「ピヨちゃんを自由にしない。籠に入れる」


 少女が呟いた。チャガラが微妙な顔をして、ルチェ殿を見る。ルチェ殿は何も言わず首を横に振った。


「今はまだ『降伏する為の停戦中』って主張っすか。無条件に『許して欲しい』って言わせても良いんすよ?」


「その場合、野良ピヨちゃんは此処に住み着く。水場を気にいってた」


「チャガラさんのハッタリ負けでス」


 チャガラとルチェさんが自分の方を見た。冷夏様ならどうしただろう。自分は前のダークエルフ戦を思い出していた。


☆☆☆


「妖魔神よ。この男の致命傷を、癒し給え」(使3残3)


 薬師資格を持つルチェ殿が手際よく手当てし、チャガラが治癒魔法を使い癒した。傭兵クロスの腹部の出血は止まり、痛み止めで眠っている。


「コケー」


 魔獣コカトリスは大人しく魔籠に入り羽根を休めているが、ルチェ殿曰く少女が望めばいつでも籠から飛び出してこれるそうだ。


「デグ。どうするっすか?」


「どうもしない。野盗の3人は祈祷して埋める。少女と傭兵は好きにさせる。冷夏様ならそうしただろう。」


 チャガラは呆れたが、ルチェ殿は賛成してくれた。それどころか村に滞在する商隊の護衛に入れる様に手配するという。


 ルチェ殿の尋問では、どうやら少女はジナリー王都の魔族大使館付武官の知り合いらしい。王都まで行けば保護されるそうで、魔獣を野放しにしない為には必要との事。


 情報屋アリスからは、ルチェ殿の背後には魔族の影があると聞いている。無論素知らぬ顔をしているが、知っていればルチェ殿の主張に矛盾はない。


 ルチェ殿は自分には分からないが、リザードマンとしては絶世の美女と聞く。アヤメ殿と結婚した竜白殿に目合わせられる候補の有力な一人だったらしい。


 それが叶わなかったとはいえ、リザードマン三大部族の青の部族の有力者の娘であるには変わりない。竜の島の島外に出て冒険者をしているのには理由があるはずだ。


 それが聖女レイカ様絡みである事に間違いはないだろう。


「チャガラ。神力が許す限り、そいつを癒してやれ。しかし一度村に帰らないと小屋は直せないな」


 入り口と近くの壁が吹き飛んだ小屋を見ながら独りごちる。必要な木材などを考えていると、チャガラに指摘された。


「デグ。下級騎士なんすから、自分で直さずに金で解決するっす。ソロス村のデグじゃないっすよ」


「コケー!」


 コカトリスがタイミング良く鳴いた。難しい事など考えず、兄者に言われ木を切り倒していた頃には、もう戻れない。



「高貴な血筋の絶世の美女。更に魔術と薬学を修めた才女。リザードマンなら竜白以外でも引く手数多な令嬢。冒険者なんかするには訳があるよ」

「そうか……」

「ブルーブラッドに出入りしてるから、魔族絡みかも。調べる?」

「止めておこう」

「良かった。ブルーブラッドを調べた者の多くが変死しているからね。」


私の黒歴史がまた1ページ。

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