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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

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どぶさらい

デグ視点です。

「リグさんの引き取り手続きは問題ありません。村長さんらの商隊への対応が終わり次第、引き渡されます」


 宿のテーブル席で、リグの乳母になる予定の大地母神官がそう告げた。[竜の卵]以外の2人。大地母神官と下級女騎士と朝食を取りながら、顔合わせて話をしている。


「商隊が出立する明後日の昼までは待機ですね」


 下級女騎士が茹でた卵をツマミに朝からエールを飲みながら話す。宿の主人から出されているのは薄い方のエールではあるが緊張感はない。


 だがそれも仕方がないと言える。契約締結までは基本的に安全な村内で過ごす。護衛女騎士は実質休み。娯楽のない村では飲むしかないからだ。


 ソロス村は農村の割には畑があまり広くない。南北を深い森に覆われ、その隙間を通る街道に出来た村。元々は街道整備の人足の拠点だったらしい。


 南北を深い森に挟まれたそんなソロス村の収入源は街道を通る商隊が落とす金銭。兄者から聞いた当時は全く意味が分かっていなかった。


 そして祖父が村長だった頃から変わらないが、村人の大半は文字が読めないし、計算も簡単なものしか出来ない。かつての自分ももちろんそうだった。


 結果として村長は商隊がいる時は忙しい。商隊によっては村の井戸などを使うだけ使った挙げ句、使用料を僅かしか払わずに済まそうとする場合などもあるからだ。


 商隊の対応に忙しい村長とリグの話は出来ない。最終的に契約書を交わすのは明後日以降になるだろう。



「そういえバ。デグさんをエッタ殿が呼んでましタ」


「叔母上が自分を?」


 ルチェ殿が、こちらはエールは飲まずに食事だけを取りながら伝えてきた。叔母には冷夏様と出会った際に色々便宜を計ってもらった借りがある。


 昨夜も自分達が負わせた怪我を治してくれたのは下級神官の叔母のはずだ。朝食が終わり次第訪ねなければならないだろう。


と。


「デグ殿も下級騎士なのですから『どぶさらいして欲しい』とか言われたら断らねばなりません」


 突然飲んでいた下級女騎士が口を挟んできた。2杯目のエールを傾けている。


「叔父、叔母などの中では甥姪は、何時いつまでも子供。下級騎士に皿洗いさせようとか平気でするのです!」


「妙に具体的っすね?」


 それを聞いたチャガラが答え、大地母神官が苦笑した。ルチェ殿も笑っている様だが、表情の違いが自分には分からない。


「でもあっしらは冒険者っすから、報酬次第では()()()()()もありっすよ」


 それを聞いて自分には思い当たることがあった。季節の変わり目に大地母神の泉からの水路を点検して歩くのは兄者と自分の役割の1つだった。


「ドブではないが、水路点検なら引き受ける。[大地母神の泉]は聖地になるべきだからな」


 兄者亡き今、聖女冷夏様が顕現した泉だと知る者は冷夏様御自身と自分しか居ない。


☆☆☆


「デグ。この先に猟師小屋があるっすよね?」


 自分とルチェ殿、チャガラの3人。[竜の卵]で水路沿いの小道を[大地母神の泉]に向け歩いている。


 チャガラの問いに肯定を返すと、チャガラではなくルチェ殿から指摘があった。


「複数の足跡がありまス。恐らく先客がいまス」


「多分。野盗っすね」


 先日の砦跡の野盗は実質追い払っただけで、仕留めたのは僅か数人。逆に討伐隊は2割以上の人員を失い大敗した。


 討伐隊には伯爵からは見舞金が出たが、竜の島で言う[雀の涙]だそうだ。雀が涙を流すのか自分は知らないが。


「コカトリスが居たら厄介っす」


「その場合ハ、撤退を勧めまス」


 野良にしろ運用されているにしろ少人数で魔獣と戦うのは正気ではない。アルベロ鉱山では冷夏様の御力で勝てたが、通常なら逃げ帰る事さえ怪しかっただろう。


「お?やってるっすね」


 猟師小屋の近く、[大地母神の泉]が見えてきた所で3対1で武器を構え睨み合う野盗達が見えた。装備からして冒険者ではなく傭兵崩れだろう。


漁夫利ぎょふりは難しそうっす殺るっすよ」


 チャガラが駆け出した。後にルチェさんに[雀の涙][漁夫の利]などの竜人語の慣用句の意味を習った。


「仲間割れで殺し合いっすか?あっしらも混ぜて欲しいっす」


 そしてアヤメ殿とは微妙に違う[抜打ち]の技を見せ、短槍使いを後から斬り伏せた。相手は革鎧を身に着けていたが、全く機能していない。魔刀[雫]は相変わらずの斬れ味を見せている。


「イェアエア!!!」


 そして何時いつもの竜叫流の構えと掛け声から、次に戦斧使いを斬り伏せる。相手もただ立っていただけではない。だが、チャガラが速すぎるのだ。


 その間に片手剣使いは猟師小屋に飛び込み、大剣使いは振り向きざまに横薙ぎに大剣を振り抜いた。


[竜飛翔](使1残5)


 常人なら躱せも受けも出来ないタイミングでの攻撃だが、チャガラは悠々と翔び猟師小屋の屋根に着地した。


「糞!竜人か!」


 大剣使いは叫んだが、そこまでだった。猟師小屋の入り口が爆発的に壊れ馬の様な大きさの鶏、いやコカトリスが大剣使いを襲ったからだ。


 嘴で突かれた大剣使いは一瞬で石になり、続く体当たりで粉砕された。チャガラが「ヤバ」と呟き屋根から、自分の側に跳んできた。[竜飛翔](使1残5)


「コケー」[稲妻招来](使1残39)


 コカトリスが翼を広げ鬨の声を挙げる。稲妻が辺りを薙ぎ払う。


[避雷結界](使1残6+1)


 ルチェ殿が咄嗟に杖を突き立て、魔術を発動して稲妻を防いでくれた。ルチェ殿が居なければ死んでいただろう。


「逃げるっすよ」

「まだでス」


 ルチェ殿が杖を猟師小屋に向け示し、杖から[光の矢]が3本放たれた。矢は狙い違わず3本共目標に突き刺さる。


 コカトリスが大きく飛翔した。


慣用句は言語や国によって全く違います。

勿論、この世界独特の慣用句ありますが、表現が難しいですね。

某漫画の「グベン軍10日目の慟哭」を「四面楚歌」と訳している様にしないと……読んでる人は現代人でしょうから。

指輪物語の様に言語(エルフ語)を細かく設定するのは無理です。


お読み頂いている方、ありがとうございます。


私の黒歴史がまた1ページ

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