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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

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名誉資格

レイカル視点です。

 翌朝


 与えられていた部屋から1人、()()()()()()()がら井戸に向かうと[鶏口牛後]の4人が既に顔を洗っていました。


 私1人に4人部屋があてがわれていたのは[聖女の弟子]が書類上3人登録だった名残りの様です。


「魔族の姐ちゃん。おはよう」


「おはようございます。まだ早くないですか?」


 ジャム少年と挨拶をかわすと、怪訝な顔をされます。そして4人は顔を見合わせました。


「レイカルあんた、まさか呼ばれてないの?」


「?」


 私は不思議そうな顔をしていたのでしょう。するとヒストリアさんが眼の前で震え始めます。


「ルドム!ヒストリアを見てやれ。俺は確認してくる」


 セベロさんが慌てた様子で宿舎内に戻ってゆきます。ヒストリアさんは座り込み、ルドムさんがその手を握り、大丈夫、大丈夫と声をかけました。


「魔族の姐ちゃん。姐ちゃんには本当に治安傭兵から声かけ無かったのか?」


 本当に分からないので、改めて説明を求めるとジャム少年は語り出します。


 ジャム少年の話では早朝、各部屋に治安傭兵が[南傭兵隊長の更迭とそれに伴い改めて契約終了もしくは契約変更の話がある]と触れてまわったそうです。


 そして契約終了の者は今までの報酬が精算になるので朝食後に一度冒険者の店に帰る事になると告げられました。


 契約変更の話ある者は、朝食前に広間に来る様に命令があったとの事。[鶏口牛後]には契約変更の話がきているそうです。


(瞑想中も誰も来なかったよ。防犯用認識阻害結界が切れる前に訪ねてきたんじゃないかな?)


「私らはあんたがいれば、厳しくとも何とかなるかもって……。あんたに抜けられたら私らは……」


「うーん、そもそも治安傭兵が来なかったので、どちらも聞いてません。何か手違いがあったのでは?」


「とりあえず、ヒス姐ちゃん。セベロを待とう」


 しばらく待つとセベロさんが話を聞いてきました。私は契約解除になるそうですが、一度総隊長と面会しなければならない様です。


 私は[鶏口牛後]を連れて隊長室に向かいました。


☆☆☆


 主が更迭された南隊長室には、総隊長と下水担当副官、そして見知らぬ大地母神の神官が待っていました。


 神官の紐は濃緑と青と銀。上級神官[濃緑]で、神官長[青]。銀紐は覚えがありません。

(銀は退魔師資格だよ)


「レイカル様。ご足労いただき、ありがとうございます」


 総隊長が立ち上がり、いきなり頭を下げます。私は内心驚きながらも、[神官は何かあっても、さも当然と振る舞うべし]との教えから平然としたフリをしました。

(図書館で読んだ[神官心得]だね)


「総隊長。聖女様の弟子が下水清掃に従事しているのが、何かの間違いだ。契約解除が当然だ」


 見知らぬ神官長が厳しい口調と表情で言い放ちます。


「ですが、ハルピア評議会より[首だけ聖女]に関する緊急命令が……」


「そんな事は分かってる!だから再契約の確認に私がここに居る!日当銀貨1枚で[准聖女]が雇えるなど、あってはならない事だ!」


 [准聖女]などと聞いた事がありませんが、かわりに交渉してくれている様なので黙ってます。普段なら口をはさみそうな[鶏口牛後]も沈黙しているのですから。

(冷夏オリジナルもレイカルも、お人好しだから教団が手を回したのかな)


 一、「[准聖女レイカル]ならびに、その護衛には、しかるべき装備が貸与、提供される事。

 一、報酬は日当銀貨10枚、護衛は銀貨3枚。他に諸経費は治安傭兵隊が負担する事。

 一、[首だけ聖女]討伐報酬は金貨10枚とする事(討伐証明は評議会の承認を要する)


 少し待つと上記のような文面を含む契約書にサインさせられ、神官長から橙の神官紐が渡されました。ついでに精算された日当銀貨6枚といっしょにです。


「あの、この神官紐は?」


「[准聖女]資格の紐だ。平民をいきなり[聖女]には出来ないと、馬鹿貴族共がな……。あぁ、[准聖女]おめでとう」


「ありがとうございます。」


 少し腑に落ちませんでしたが、感謝を伝えました。

(うーん、[准聖女]は普通、引退した大神官に贈られる名誉資格だぞ)


☆☆☆


「ルドム!それ魔剣じゃない!」


 朝食を終え下水への出発準備をしていると、契約に基づいた装備が運ばれてきました。


 曲がった両手剣が回収されたルドムさんには少し柄の長い片手剣の魔剣が届いた様です。


「至高神の思し召しです。これなら全力で振るっても折れたり曲がったりしません。そういうヒストリアはミドルシールドですか?」


 ヒストリアさんは薄い青い金属で出来た長方形の中型の盾を持っています。色からしてアダマンタイトが使われているでしょう。


「借り物だから、無くさないかが怖いわ」


 そうは言うもののヒストリアさんは笑顔です。そしてその隣ではセベロさんが小さな金属製の水筒に安ワインを大樽一つ分詰めていました。


「せっかく借りた[大樽水筒]に何入れてんだよセベロ!」


「良いだろう?ジャムこそ武器を借りろ」


「投擲用聖水パックを12個もらった。安ワインよりはマシだぜ」


 (うーん、貸し出される装備は微妙だね。無いよりはマシだけど)

それは言わない約束ですよ。マドウJr.


 大地母神殿の横槍で用意した装備。問題までなくとも、()()()()になるのは否めません。


 ルドムさんの魔剣は頑丈なだけで追加の効果はないですし、アダマンタイトは盾より剣に使うのが普通なので何かの流用品でしょう。


 投擲用聖水パックは使い捨てで値段の割には効果が薄く、セベロさんの[大樽水筒]に至っては意味が分かりません。


「魔族の姐ちゃんは何借りたんだよ?」


「[カナリヤブローチ]です」


 私は大気中の有毒ガス濃度が上がると囀るブローチに、そっと触れました。魔獣の私には全く必要の無い物なのですけれど。


 南−303再出発です。




以前「冒険者は契約が全て」と冷夏が教わっていましたが整理します。


[聖女の弟子]パーティの元契約は終わり精算が終わりました。

[鶏口牛後]は元契約が残り、更にレイカルの護衛契約が結ばれてます。


結果

レイカルは日当銀貨10枚、期限は今回の緊急事態が終了するまでになりました。

[鶏口牛後]は下水清掃日当銀貨1枚とレイカルの護衛銀貨3枚。期限は下水清掃が残り24日、護衛はレイカルの契約終了まで。になってます。


私の黒歴史がまた1ページ

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