表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

362/385

実験失敗

動画にSNS。皆さんも気をつけて……。

「隊長。[303]を連れてきました」


「うむ、下水清掃の南−303の諸君。良く来てくれた。楽にしてくれ給え」


 先程会った南区傭兵隊長の部屋に私達[南-303]は通されました。下水担当の副長によれば、これから先程の部屋とは別の広間で明日の昼巡回の顔合わせがある様です。


「レイカル君だったかね?急ですまないが、君に下水掃除部隊の勧誘を頼むよ。なに立っているだけで良い。君が本物の[聖女の弟子]だとは知らなかったよ」


 にこやかに笑う隊長と眉をひそめる副長の表情。どうやら私が聖女おししょう様の弟子と知り、下水掃除部隊の勧誘に使う為に呼んだらしい。


(客寄せパンダだぞ)

マドウJr.パンダって何?

(白と黒の……)


「ちょっと正気なの!3部隊、20人近く死んでんのよ?」


「うむ、だからこそ部隊を補充すると先に伝えたはずだが。誤解があったかね?」


 ヒストリアさんが隊長に意見します。賢明ではありませんが、本来冒険者はそれぐらい恐れ知らずでないといけないのでしょう。


 副長は直立不動で立っていますが、表情は反対意見を述べています。どうやら副長は6部隊で下水掃除を進める少数精鋭主義を考えていた様に見えます。


(うーん、どちらにしろ酷い話だぞ)


「何、ただとは言わん。前借り金の棒引きに、1人頭銀貨2枚づつ。悪い話ではあるまい?」


「俺はのった」

「待てよセベロ!魔族の姐ちゃんを売る気かよ?」


「ルドムに新しい剣を支給してもらえるなら」

「っ!ヒス姐まで!」


「レイカルが立ってるだけで良いなら、乗るか反るかは至高神の思し召し」


 [鶏口牛後]の視線が私に向きます。別に利用される事に異議はありませんが、下水内部が現在は危険が大きい事を告げねば公平フェアではないでしょう。


「契約の書面を。後、立っているだけではなく発言しても良いですか?」


「勧誘してくれるのなら構わんよ」


 隊長が書記官を呼ぶと、四半刻半じゅうごふんと経たずに契約書が完成しました。


☆☆☆


 昼巡回の顔合わせは下水清掃ほど切羽詰る様子もない面々が集まっていました。日当は銅貨20枚。夜巡回程の危険もなく、他の冒険者と知り合える機会もある初心者達にはうってつけの仕事です。


(レイカル、本当に実験するのか?オススメしないぞ)

うーん、多分そこまで上手くはいかないでしょう?


「諸君らに、より稼げる仕事を紹介したい。明日から始まる定例の下水清掃だ。日当は日に銀貨1枚。初心者パーティでも無理なく稼げる」


 下水清掃副長が声を張り上げます。が反応はいまいち。報酬は1.5倍ですが、負担はそれ以上だと皆感じているのです。


「30日以内に担当区域を清掃すれば、良いのだから、自分達ペースで無理なく進められる。依頼期間中は専用官舎も利用出来る。食事も安価で出る」


 依頼期間中は身ぎれいにしない限り、冒険者の店と食堂から出入り禁止になるので、専用官舎に居る事が多くなる事を利点の様に副長は述べます。ジャム少年によれば()()()()身ぎれいにするのは最終日後にしないと、金銭的に合わないそうです。


(魔獣には自己洗浄機能あるし、エルフ魔法由来の洗濯魔法も知ってる。下水清掃天職かも知れないぞ)

マドウJr.逆です。私が野良魔獣になったら、下水に棲み着き潜む側ですよ。

(今回は先輩が居るかも知れない……か)


「最後に諸君らに先輩冒険者[南-303]から一言づつ話をしてもらう」


 副長の後ろに立っていた私達に出番がまわってきました。基本前向きな事を述べれば銀貨2枚にルドムさんの剣などの現物支給がもらえます。


「あ~、え~と。悪くない仕事よ」


「素晴らしい至高神の恩寵で、不死者を滅ぼします」


「稼げば酒が飲める」


「ひ、拾った先輩冒険者とかの()()は、臨時収入になるぜ」


 ジャム少年が遠回しに危険を伝えた以外は前向きな表現だったでしょうか?最後に発言する私に注目が集まります。私は口元を覆う布を取り、フードを外しました。


「嘘だろ?すげぇ美人じゃん」

「下水清掃なんてしてないで、娼館で働けよ」

「ねぇ待って。あの娘、[聖女の弟子]じゃない?」

「そういえば、聖女様も巡回仕事してたって聞いた事ある」


 ざわつく集会所が静まるまで、私は黙っていました。大地母神神殿図書館の[説法の心得]に待つのも説法と書いてあっ たからです。少しして場が落ち着いてから私は話はじめました。


「現在、下水清掃依頼には欠員があります。下水に潜む何者かにより、3つの部隊が帰らなかったからです」


「そう、危険はあります。下水に潜む者が不死者アンデッドなのか、妖魔なのか、果して魔獣なのか判然としません。ただ一つ言えるのは私達はこれに立ち向かわねばならないということです」


「私達が立ち向かわなければ、やがて化物は下水から地上に現れるでしょう。私達たちの安全を脅かす者が今現在も我々の足元を這いずりまわっているのです」


「もう一度言います。我々は立ち向かわねばなりません。いや、立ち向かえるのは我々しかいないのです。勇気ある我々の行動だけが脅威を、化物を打ち破れるのです!」


「勇気ある行動を我々は欲しているのです!武器を掲げよ!いざゆかん地下へ!」


 [最初は静かに語り出し、徐々に熱を込めます。私達から我々に表現をさり気なく変えます。なにかをしなくてはならないと、誘導します]


 大地母神の[説法の心得]を実践してみました。ちょっとした実験です。知識と実践の差を試して見たかったのです。


「「「いざ征かん地下へ!」」」


 結果は失敗でした。その場にいる全員が武器を掲げ絶叫しています。集会所の外から何事かと治安傭兵達が集まってきました。副長まで絶叫していては勧誘どころではありません。

(オススメしないって言ったぞ)


[平静]×4(使4残595)


 取り急ぎ[鶏口牛後]に魔術を使い集会所を出ました。後は南区傭兵隊長にお任せしましょう。オーナー曰く逃げるのも策なのです。


「魔族の姐ちゃん。何したんだよ……。」


「あんた……反乱起こせるわよ」


「悪い酒を飲んだ気分だ」


「魔族……恐るべし」


むぅ。失敗です。

(師匠の真似してもダメだぞ)



パンダはこの世界にも生息しますが、一般的ではありません。


私の黒歴史がまた1ページ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ