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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

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欠番

レイカル視点です。

 昼過ぎ。


 南傭兵隊詰め所には臨時雇いの6つの部隊が揃っていました。南区傭兵隊長と下水担当の副長が現れ、数人の下水担当傭兵が敬礼をします。


「隊長訓示!清聴!」


「えー、諸君には……」


「ちょっと待ってよ!」

ヒストリアさんが、隊長訓示を遮って声を上げます。


「まだ、そろってないじゃない。南地区の下水は10地区あるのよ」


「そういやそうだ」


「出なくて良いなら先に言ってくれよ」


 明らかに分かっていない3部隊は顔を見合わせるだけでしたが、私達以外の2部隊の隊長も声をあげました。


「黙れ!発言は許可していない!それに全部隊揃っている!」


「はぁ?新手の冗談か?」


「どういうことよ!」


 整列している面々にざわめきが広がります。私はジャム少年に小声で様子を尋ねました。


「いつもは0〜9まで10部隊いるんだ。たまに1部隊欠けたりはするけど、4つ欠けるのは初めてだ」


 たしかに下水清掃と言う名のアンデッド退治は危険で、汚く、厳しい、不人気な依頼ではあるのです。


 それでも()()()()稼げる穴場依頼でもあるので巡回だけでは食えなくなった冒険者パーティが絶えず参入してくる依頼のはずでした。


 それが何故か募集10に対して6。1部隊は大抵2つの冒険者パーティで、5〜10名ですから、約30名近く足りません。


 そうしている間にも、下水担当副長が声を荒げ、説明を求めるヒストリアさん達と怒鳴りあっています。


 あまりの剣幕に下水担当傭兵の1人が抜剣しそうになり、南区隊長が声をかけました。


「諸君、落ち着き給え。南−302、305、308、309は今日中に昼巡回から引き抜いて明日までに手配する」


「だから、どうゆうことよ!」


「経費節減とか言ってんじゃねえだろうな!」


「違う。単に、いつも受注していた冒険者の諸君が受注していないだけだ。もし今から降りたい者が居れば申し出てくれ給え。無論、契約書にある違約金は支払ってもらう必要があるが許可しよう」


 違約金の一言で苦情を述べていたヒストリアさん達は黙ります。気まずい沈黙が広がる中、隊長は下水担当副長に説明せよと命じました。副長は躊躇いますが、隊長は違約金払っても降りたいなら許可せよと改めて命じます。


「現在欠番が多い理由を説明する」


 そして副長が話したのは、いつも受注する冒険者が先月の下水清掃任務で3部隊も未帰還になっているとの事実でした。そのうちの1部隊は全滅が確認され、残り2部隊も恐らくは壊滅していると推測されるそうです。


 4部隊足りなかったのは、3部隊の壊滅とそれを知った1部隊が辞退して未参加になったからでした。そして集まっていた6部隊は沈黙しています。


「今日中なら、貴様らには違約金を払い辞退する権利がある。明日になれば軍法に照らし処理しなくてはならなくなる。必要なら申し出る様に。」


「えー、諸君の健闘を期待する」


 南区傭兵隊長と下水担当副長はそう述べると解散を命じ、詰め所から出て行きました。


☆☆☆


「おいら達。横のつながり弱いからな。どうするヒス姐ちゃん」


「どうもこうもないじゃない。それともジャム。あんた前借り金精算して、更に銀貨4枚払える?」


 ジャム少年とヒストリアさんが話をしています。解散を命じられましたが、詰め所から出て行く部隊はまだいません。


 [鶏口牛後]にはシーフが所属していない為、事前情報が得られなかったのです。[聖女の弟子]は私1人ですから、考えるまでもありません。


「おい、ヒステリー。お前さんら南−303で対処頼むぜ」


 南−300の隊長が話かけてきました。下水掃除では稀にワイトやヴァンパイアなど通常武器では倒せないアンデッドが湧く場合があるそうです。


 その場合、対処出来るのは神官、司祭か魔法使いがいる冒険者パーティに限定されるので食い詰めた戦士だけの冒険者パーティは役に立ちません。


「何言ってんのよボンクラ。あんたの所は神官いるじゃない」


「それを言うならお前さんらも、今回はエセ司祭じゃなく、魔族の下級神官いるだろ?」


「エセ司祭とは私の事ですか?」


 黙って立っていたルドムさんが折れた剣を抜きました。ですが慣れた者なのかセベロさんが羽交い絞めにして止めます。


「剣までエセかよ」


「殺す!」


 無責任な誰かが更にルドムさんを煽りました。ジャム少年が組み付いて止めてます。それでも少しづつ前進するのは恐るべき怪力です。天啓でしょうか?


「まぁまぁ、その辺で。」


 南−301の隊長が間に入りました。301の隊長が言うには自分の受け持ち地区に()()()戦う。そうじゃなきゃ放置が上策だそうです。


 一応、ヴァンパイアには恒久的な懸賞金がかかってますが滅ぼした事を証明するのが至難の技になるとの事。


「南−303居るか?[聖女の弟子][鶏口牛後]居るか?」


 と、下水担当副長が戻って来て、私達南−303を呼びました。


「今、作戦会議中よ。明日から潜るんだから」


「来れば銀貨2枚の報酬を払う。早く来い!」


 私達は首を傾げつつも報酬に釣られて、後をついて行きました。


「お師匠様。肉体ある滅んだアンデッドは灰になるのですよね?ヴァンパイア退治に懸賞金掛けても滅ぼしたかどうかなんて分からないのではありませんか?」

「うーん、でもデグさんは懸賞金もらってたよ。たしか金貨20枚だったかな」

「墓地管理者の神官が〜目撃してたんですよ~信用出来る第三者の証明が難しいですね~」



私の黒歴史がまた1ページ。

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