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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第18章 竜の巣語り

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鶏口牛後

レイカル視点です。

「はぁ?欠員2?て事は1人じゃない」


 革鎧に片手剣、通称おのぼり装備の女軽戦士が治安傭兵に喰ってかかっています。


「いつもの事じゃん。ヒステリーねえちゃん」


「ヒステリーじゃなくヒストリア。ジャム!なんど言ったらわかるの?」


 それをなだようとした少年が、とばっちりを受けていますが、気にした様子はありません。少し大きい鉄兜は戦利品でしょうか。それ以外の防具はつけておらず短剣を無造作にベルトに下げています。


「顔合わせで酒が飲める」


 そう呟いた片手半長剣を持った革鎧に無精髭の男は微かに手が震えていました。マドウJr.の力を借りずとも依存症の気配がみてとれます。


「セベロ、あんたウチラのメインファイターの自覚ある?ルドムの武器は壊れてんだから」


 ヒステリーと呼ばれた女が依存症の戦士を咎めました。その後ろには至高神の助祭が着る服を着た女性が片手半剣を腰に下げて佇んでいますが、その服は変色した血が付いたままです。


「ヒスねえが、ケチって安物買うから折れるんだよ」


「中古でも鍛冶屋ギルドの正規品買ったのよ。ルドムの使い方が悪いのよ」


「それも至高神の思し召し」


 ルドムと呼ばれた女性の下げている至高神の印は確か至高神正統派教団の物。先日ハルピアで無差別テロを起こしたカルト教団の印。


 無論テロに関わっていれば無事では済まないから無実なのでしょうが、普通の精神ではない事は確かです。


「で、[聖女の弟子]とやらは?」


 うんざりした様子でそれらを眺めていた治安維持傭兵が、ようやくこちらを示しました。どうやら彼らが[鶏口牛後]の様です。


「南−303の隊長は[鶏口牛後]のお前。副長はあっちの[聖女の弟子]の下級神官だ。銀貨2枚は渡してあるし、サインも貰った。あっちは字が読めるからな。上手くやれ」


「ちょ、魔族じゃない。無理よ。ルドム待って!」


 カルトの助祭がいきなり剣を抜きました。半ばから折れていますが、こちらに明確な殺意を向けています。


「魔族!!!」


 [昏倒](使1残597)


 斬りつけられる前に中魔術を飛ばしました。カルト助祭は受け身も取れず顔面から昏倒します。


「魔族の姐ちゃん。やるじゃん。」


「なぁ、あんた酒持ってないか?」


 依存症の戦士は状況を無視。鉄兜の少年は笑い、ヒステリー、もといヒストリアさんはカルト助祭を介抱、治安維持傭兵は頭を抱えています。


さて、これからどうしましょうか。


(うーん、先が思いやられるぞ)


☆☆☆


ぼうし分ない」


 両鼻に布を詰めたカルト助祭、ルドムさんが私に頭を下げました。鼻血は止まっている様ですが、血止めの布は、まだそのままにしている様です。


「ルド姐は色々あったらしく、魔族や妖魔を見ると反射的に襲いかかる衝動があるんだ。普段は大抵抑えが効くんだけどさ」


 なかなかに物騒な事を鉄兜の少年、ジャム少年が当たり前の様に話しました。私達はヒストリアさんの案内でハルピア港近くの繁華街を歩いています。


 臨時治安傭兵[南−303]として、下水に潜るのは明後日からで、今日は顔合わせ恒例の食事会。先に銀貨貰った銀貨2枚はその費用になります。


「ヒストリア。店に着く前に歩きながら軽く飲みたいんだが……。」


「飲みながら歩きたいなら、自分のかねで買いなさいよ。」


「ヒス姐、セベロが金持ってる訳ないじゃん。かねありゃ飲んじまうんだからさ~」


 どうやら[鶏口牛後]の資金管理はリーダーのヒストリアさんが兼任している様です。冒険者の店ギルドの推奨ではパーティリーダーと資金管理者は分ける様に言われているのですが……。


「顔合わせ用に銀貨をもらったんだろう?」


「金を受け取ったのは魔族の姐ちゃんだよ。聞いてなかったのかよ」


「そういう事!店まで待ちなさいよ!」


 神殿にあった書籍にありましたが、依存症の人間の治療は神聖魔法を用いても、一朝一夕にはいきません。特に本人に直す気が無いなら、全くの無駄になります。


「なぁ、あんた……」


 セベロさんは、私に話かけようとしましたが、近くに居たルドムさんが怒りの表情で、折れた剣を黙って抜剣すると静かになりました。ルドムさんは少し気が短いのかも知れません。


(そういう問題ではないと思うぞ)


「そういや魔族の姐ちゃん。文字読めるんだってな。やっぱり神殿で習うのか」

ジャムと呼ばれた少年が何故か躊躇ためらいがちに訊ねてきました。


「はい。大地母神神殿では、読み書きは基本として学びます。ただ私の場合はオーナーから学びました」


「オーナー?姐ちゃん奴隷だったのか?」

私の答えにジャム少年は驚きます。


「語弊がありましたね。私は奴隷ではありません。大地母神神殿に通う事も許してもらってますし……。そう、オーナーは義母の様な方です。」


 オーナーは魔獣ドッペルゲンガーである私の創造主であり、サキュバス時代を含めれば、第一次魔王戦争からの上官、戦友でもあります。


(うーん、ドッペルゲンガー素体と冷夏オリジナルの血を混ぜて調整のうえ、精神憑依体のサキュバスを合体。複雑な生い立ちだぞ。)


「複雑な生い立ち」の使い方が違うと思いますよマドウJr.


「大地母神神殿に入れるのは貴族の子女か富裕層の子女。対して私共わたくしども至高神正統派なら……」


「ルド姐も文盲じゃないかよ」


「至高神の思し召しに触れられるなら些末な事です」


と、


「着いた!店に着いたぞ!酒が飲める!」


 セベロさんが叫びました。肉などを炙る煙が上がる半屋台型の店舗が顔合わせの店の様です。詳しくはないのですが、「銅貨二枚で充分に酔える」が売り文句の店舗群の一店だと思います。


「親父さん、席空いてる?5人だけど」


 ヒストリアさんが奥に声をかけました。煤で汚れた店の看板には「鶏口牛後」とリザードマン語で書かれていました。



ダブルミーニングタイトル

文盲な冒険者が多いならパーティ名は適当だろなぁと。


おまけ

銅貨二枚でベロベロになるまで酔える。

現実(2025現在)でも似た売り文句の店もありますよね。

計算機と下記を参考に「遺跡探索2」とか読んでいただけると、こちらの世界に換算した依頼報酬や17のダイス勝負の金銭やり取りが分かるかと。

(むぅ、露骨な゙宣伝だぞ。でも計算したら、ブレナと茶渋がパワーカップルと分かるぞ)


何度か記載してますが参考まで。

金貨1枚=銀貨33枚銅貨10枚

銀貨1枚=銅貨30枚

銅貨1枚=小銅貨10枚



私の黒歴史がまた1ページ。

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