卵の日常
デグ視点です。
お久しぶりです。
「デグさんに〜指名依頼が〜きてます〜ロバートさんからです〜」
自分達[竜の卵]の3人が、いつもどおり階段の踊り場にある席、通称[竜の巣]で食事をしていると、デポ姐さんが手紙を持ってきた。
レイカ様はテロにより、最果ての島[鈴木島]に転移させられた。ご無事とは聞いていたが、自分もチャガラもルチェ殿も落ち着かない。やはり竜の巣の主はレイカ様で間違いないのだ。
「伯爵様から何用っすかね?」
「よろしけれバ、代読しまス」
自分も人間共通語の文字が読める様に神殿で学んではいるが、ここはルチェ殿に代読を頼む事にした。
ルチェ殿はリザードマンながら人間共通語の読み書きどころか魔族語やエルフ語なども普通に出来る。やはり魔術士というのは頭の造りが違う様だ。
☆
「要約するト、ソロス村の村長かラ、子供を引き取って連れ帰って欲しい様でス」
手紙には亡き兄者の忘れ形見のリグがソロス村の村長に預けられ養育されているとあった。
リグの母親は薬草取りから、ソロス村の公娼に身を落としていたが、商隊と共に来た行商人と村を逃げ出したそうだ。
本来ならそういう子供は適当に養子に出されるか、売り払われ村の収入になるかするのだが、一応先代村長の曾孫に当たる為、叔父である村長が面倒を見ているらしい。それを今回、ロバート様が引き取る事にしたそうだ。
兄者の子なのだから、本来自分が面倒を見るべきなのだろう。だが冒険者をしている自分には赤子に近い子供の養育は無理だ。
一応下級騎士の称号もあるので、頼めばどこぞに仕官出来なくもない。だがそれでは大地母神様から与えられた[聖女]様を護る天命が果たせなくなる。それに兄者を殺したミケへの復讐も。
「レイカは3ヶ月は帰らないっす。あっしはデグに付き合うっすよ」
チャガラは報酬も聞かず、あっさりと依頼を承諾した。ルチェ殿はジナリー王国の偏見の強さを確認後、同じく承諾してくれた。ハルピアより東はリザードマンや竜人への偏見が未だ強い。
「レイカルは〜神殿業務が〜忙しい様です〜」
デポ姐さんが少し残念そうに話す。自分達3人は翌日のノウルの街行きの商隊の護衛に押し込んでもらい。ハルピアを離れた。
☆☆☆
[我が主の姿が見えない]
デポ姐さんに放牧に出すか連れてゆくかして欲しいと言われ騎乗大蜥蜴の[龍星号]に荷を載せて歩んでいると、[龍星号]が珍しく意思を伝えてきた。
竜の血を浴びて以来、稀に動物や鳥などが意思を伝えてくるのが分かる様になった。本当に稀であるし、逆にこちらの意思は伝えられない様なのだが。
[戦士よ、我が主の姿が見えない]
[龍星号]が再び伝えてくるので、世話をするフリをして話かける。
「レイカ様は魔術で遠い島にいる。戻られたら鞍を乗せて走る練習をしよう」
「[龍星号]も冷夏を心配してますカ?」
その様子を見たルチェ殿が話かけてきた。ルチェ殿曰く騎乗大蜥蜴は蜥蜴よりも地竜に近く、卵から極稀に先祖返りをした地竜が孵る事もあるそうだ。
確かに蜥蜴は二足歩行はしないし、羽毛でもあれば、蜥蜴と言うよりは鳥に近い感じがする。馬ほど早くは走れないが持久力はあり、雑食だから与えるのは残飯でも良く、馬ほど金もかからない。
と、
「なんすか?それ」
チャガラの驚きの声が響く。
「どうした?」
自分が見るにチャガラはこの商隊の商隊長と話をしていた様だ。いつの間にか、ちゃっかり商隊長の馬車の屋根に座っている。
更に二言三言話した後、屋根から飛び降りこちらに歩いてきた。
「いや、明日にはノウルとの中間点の妖魔の村に着くっすけど……」
そこまで話して、一瞬言葉をためる。
「最近、その村に[ヲタクレイカ]の村って名が付いたそうっす」
?。自分には別に驚きはない。レイカ様と妖魔族の有力者、ダークエルフの族長の娘がヲタク工房とか言うドワーフの店で知り合った事を聞いているからだ。
だが、隣に居たルチェ殿は微妙な反応を見せる。リザードマンの表情は自分には分からないが、多分苦笑しているのだろう。
「[ヲタク]は竜人語ではあまり良くない意味を含んでいまス。妖魔語でハ、その意味は抜けているのですガ。」
なるほど、竜人のチャガラや竜人語を使うリザードマンのルチェ殿は苦笑する訳だ。レイカ様も竜人語を使われるので微妙な顔をされるだろう。
「そしテ、[ヲタク]はドワーフ語でハ、最近は肯定的な意味を持ちまス。第一人者やエキスパートの意味合いでス」
ドワーフ語まで言われると、自分にはもう理解が出来ない。仕方がないので黙って頷いた。
「レイカにはルチェに説明してもらうっす」
チャガラが苦笑いをして天を仰いだ。
遺跡探索2の投稿が終わり、こちらの投稿を再会してゆきます。(6月からの予定)
遺跡探索、遺跡探索2は同じ世界観で、恵まれてない冒険者の地味な話になっています。
よろしければ御一読よろしくお願いします。
「2には〜私も〜少し出ています〜少しだけ〜」
私の黒歴史がまた1ページ。




