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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第17章 聖女の不在

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キャプテン

ダークエルフ視点です。

浜から少し森に入った粗末な小屋。

小屋の隅では火が焚かれ、木が爆ぜる音がしている。

前には6体のゴブリンロードが胡座をかいており指示を待っていた。

この島を制圧する為に招集をかけたのだ。


この島に辿り着く前、俺は元々私掠船持ちで共和国に雇われて主に帝国の貿易船を襲っていた。

地上ではアルガ、オルガと部族の()()()()が酷いが、海の上では自由。


それに俺の鍛えた仲間と帝国から拿捕した軍艦さえあれば、海賊稼業は楽勝と思っていた。

共和国の船さえ襲わなければ良いのだから。


だが、どうやら俺は慢心していたらしい。

ダークエルフの率いる海賊船を取り締まれとハルピアから妖魔族連合に依頼が出ていると港で聞いていたのに、いつもの様に待ち伏せてハルピア商船を襲った。


そして弓矢で牽制し近づいた俺らの船を奇妙な筒から飛び出た球が破壊し、仲間は鉛弾の雨を浴び死んだ。

待ち伏せているつもりが、待ち伏せられたというくだらない話。


後はお決まりの流れだ。

逃げおおせたものの、横っ腹に穴の空いた船と少なくなった船員では、なんでもない風雨もやり過ごせず、船は沈み俺はこの島に流れ着いた。


☆☆☆


「キャプテン、指示をくれゴブ」


黙っていた俺に、せっかちなゴブリンロードが声をかけた。

焚かれた火で煮ている木の実が良い匂いを発している。

腹が減っているのだろう。

ゴブリンの支配地域で養えるゴブリン数はだいたい50から100程度、無理しても150。

それが一時には500以上の数が居たのだ。

ある程度は偵察と称してハグレゴブリンとして追い出したが、それでもまだ多い。

最近では木の皮まで剥いで食べている。

この島を制圧しなければ、雑食、で粗食に耐えるゴブリンとはいえ、飢えて死ぬ。


「第一、第二隊は先行し東の村の畑を襲え、ただし村には入るな。第三から第五隊は北の村を包囲、第六隊は俺が指揮する。お前はこの集落を守れ」


俺はゴブリンロードに指示を与えた。

ゴブリンロードには、それぞれ40〜60体のゴブリンを預けてある。

総部隊を半数に分けても、どちらの村とも戦いが出来る戦力差だ。

だが、俺の最終目的は島の制圧ではない。

農耕の出来ないゴブリンで島を占拠した所で、いずれ溢れかえるゴブリン達と共に破滅するだけだ。


俺の目的は東の村の魔族が持つ外洋船を無傷で入手する事。

この離れ小島を脱出しなければ、俺に未来はない。

もし、ゴブリン達だけで本格的に村を襲わせれば、いくら念を押しても船を破壊してしまう恐れがある。

それに食料の備蓄は北の村の方が多い。


北の村を包囲殲滅し、ゴブリン達にある程度、飯を喰わせた後、東の村は降伏させる。

ダークエルフの俺が船を使えるゴブリンを連れて島を出れば、そのうちゴブリン達は内輪揉めで数を減らす。

100年もすれば、またバランス良く棲み分け出来るだろう。

竜人は困るだろうが、長い時を生きる魔族に取って悪い話じゃないはずだ。


「出陣前の食事だ。ゆっくり喰え。」


俺もロクなものを食えてないせいか、腹が鳴った。

増えすぎたゴブリン達を適度に使い潰しつつ島から脱出する。


難しい事ではないはずだ。

生きているダークエルフには妖魔神との契約によりある程度自動的にゴブリンを従える能力があります。

ただ個人差が大きく、また細い指示をするには魔術的な手続きが必要です。


私の黒歴史がまた1ページ。

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