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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第17章 聖女の不在

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ラボ

冷夏視点です。

翌朝


朝食後、その農作業小屋、もといラボに入ると一番に目についたのは大きな樽だった。

足場が樽周りに組んであり、日本酒か味噌を作っているかの様に見える。

ちなみに朝食の時も島では貴重な卵を使った料理が出た。


「培養樽には魔力水が貯蔵されていますが、結界が張ってあり開けられません。」


水江さんが説明しながら小屋の奥に案内してくれたが、他にも農業用ゴーレムが鎮座していたり、干からびた粘土が山の様に置かれていたりして、ラボの中は雑多な印象だ。

新しいお弟子さんが綺麗に片付ける前のケリー先生の部屋よりはマシだけど……


「うーん、ケリー先生元気にしてるかな?」


そんな事を呟きながら辺りを見ていると一番奥に一つの机があった。

その机だけはケリー先生のと違い几帳面に本や巻物が並べられていて整頓されている。


(高価で貴重な書籍や巻物を雑多に積む方が珍しい、レイカとアヤメの師は変わり者だな)


先生を悪く言うのは駄目だぞ!

マドウ。


(…………)


☆☆☆


「少し読んでもいい?」


水江さんに尋ねると、「持ち出さなければどうぞ」と言われたので机に備え付けの椅子に座り読み始めている。

もちろん[古魔族語]は読めないので、翻訳魔法を使ってだけど。


水江さんは昨日の今日なので、村の様子を視察すると言ってラボを出て行った。

そして半刻程、資料などを読み進めると気がつく。


「ねぇ、マドウ」


(うむ、培養槽に[左衛門]が一体培養されて休眠しているな。)


記述では通常のアント鋼ではなく、銅とミスリルの合金を主成分にしている。

アカガネを使っているから、[赤左衛門]かな?


(ネーミングはともかく、結界さえ解けば起動するぞ)


無論、水江さんに話してからだけど、マドウ、結界解ける?


(古いとはいえ、軍事結界だから強引には無理だな。鍵さえあれば簡単だから鍵を探したらどうだ?)


そんな事をマドウと話していると後ろから声がかかる。


「[聖女]様、こちらにいらしていただいて良いですか?」

いつの間にか現れた花江ちゃんが、話かけてきた。

うーん、敬語に変わっているし、よそよそしい。


「敬語でなくて良いよ。何かあったの?」


本を戻して椅子から立つけど、花江ちゃんの様子は少し変だ。

フラフラと山積み粘土の前に行くと、いきなり手近にあった鍬で固まっている粘土を砕いた。

そして中から布袋を引きずり出す。


「異界より来訪せし[聖女]、新たなる島の主に、過去の亡霊、古き島の主から[聖印]を送ります。代わりに、この依代の少女に貴女の[聖印]を渡してあげて下さい。」


花江ちゃんが粘土の塊から引き出した布袋には青鈍色あおにびいろの金属製大地母神の[聖印]と銀製の大地母神のシンボル、そして茶色の見習い紐が入っていた。


「交換して、[聖女]様」

花江ちゃんは青鈍色のシンボルを差し出す。


私は言われるままに自らの聖印を外して花江ちゃん?に渡した。

私のシンボルはこの世界に来て直ぐにもらった木製の一般品。

なんか釣り合わない気がするけど……。


〘そんな事ありませんよ。ちゃんと聖化しますから〙


ん!?女神様の声?

私が渡した[聖印]が光った。


「花江!」

「おお!奇跡だべ!」

「やっぱ、聖女でねえか!」


いつの間にかラボに竜人さんらと戻って来た水江さんらが跪き、私達の方を向き祈っている。

くたりと倒れかかった花江ちゃんを支えながら、私も茫然としていた。


☆☆☆


「ありがとうございます。花江に[聖女の聖印]を授けていただいて。」

村の集会場で水江さんが頭を下げる。


ラボに来ていたのはこの東の村の竜人の村長さんと、私が最初に着いた北の村の村長さん。

今は東村の集会場で村人達大半と向きあっていた。

北の村の一宿一飯の恩義と、昨日の無料診察が効きすぎた見たいで、みんな[聖女][聖女]と、よそよそしくなっている。


「聖女様、ゴブリン討伐に力を貸してくだされ」


北の村の村長さんが、しばらくして話を切り出した。

聞くと西の村のゴブリンは確認しただけでも既に500体を越え、送られてくるハグレゴブリンも30体規模になっているそうだ。

対して村の戦闘要員は総動員して、それぞれ30名程度づつ。

これ以上増えれば守りきれない可能性が高い。


うーん、どう思うマドウ?


(全面攻勢も時間の問題だな。)


マドウの予測では最低でも100、ヘタをすれば200体ぐらいのゴブリンが襲って来るらしい。


「聖女様、座して死を待つ訳にはいかねえ。ゴブリン集落のダークエルフさえ狩りゃゴブリンは瓦解する。儂ら決死隊を募り、攻勢をかけるつもりだ。」


「聖女様、是非……」


うーん、このままだと私も()()させられる。

私は皆まで言わせず口を挟んだ。


「無理だよ。決死隊でもダークエルフは討てない。奇襲どころか待ち伏せされるのが見えてるよ。」


「では、どうすればいいだべ」

どうもこうもない。

戦は火力、無ければ数が多い方が勝つんだから。


「封印されてる[赤左衛門]起動すれば村の一つぐらいは守れるから、全面攻勢がどちらに来るか調べて、まずは数を減らすしかないかな。」

もしゴブリン達が数に任せて二正面作戦を取れば、村の一つは滅ぶけど……。


「[赤左衛門]?ラボに姉の開発した魔獣が居るのですか?」


「文献によればね。私は先ずは封印解く事に注力するよ。竜人さん達はゴブリンの標的がどちらの村か調べて。」


「流石、聖女様だ。指揮はお任せするべ」

「ゴブリンと合戦だべ!」


む、むぅ、なんでこうなったかな……。

聖女レイカの聖印

大地母神の力により半径10メートル以内にアンデットや彷徨う魂を近づけない。



〘これでバンシーの泉で1パーティ位なら夜営出来ますよ〙

(よほど肝が太いか、サイコパスでないと無理だろう)


私の黒歴史がまた1ページ

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