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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第17章 聖女の不在

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牛の尾

冷夏視点です。

「こういう『肉をただ焼いて塩をかけただけ』とかは、お店では食べられません。」


私達は休憩も兼ねて、屋台のテーブル席に座っていた。

私の姿をしたレイカルさんが串焼き肉を頬張る。

うーん、我ながら豪快な食べっぷり。

市場で食べ歩く私はあんな感じなんだ……。

慎み深い乙女からは少し遠いかな。


(我が身を見て我が振り直せだな)

慣用句間違ってるぞ、マドウ。


レイカルさんが言うには、[魅惑の伯爵夫人]の賄いは簡単な物でも美味しく、しかも一手間かかっていると言う。

デポさんは店にいる時は必ず賄いを食べ、食べ終わりに誰が作ったかを尋ねて「5点〜」などと呟くそうだ。

ちなみに絶対評価で10点満点らしい。


蒲公英たんぽぽさんは厨房とフロア、ペティ君は厨房、私はフロアですけど、賄いはローテーションで作ります。私は『3点〜』を超える事はまずありません。」


うーん、やっぱりデポさんは冒険者の店じゃなくて、本格的な食堂として経営している気がする。

そういえば、私がアルバイトしていた時は簡易ゴーレムとか中魔法とかは教えてくれたけど、厨房関係は一切触らせてくれなかった。

何か、こだわりがあるのかもしれない。


(単に高価な食器と食材を無駄にしたくなかったのではないか?)

うるさいぞ、マドウ。


「そういえば、デポさんが料理してくれる時が稀にあるよね?」


「はい、気に入った冒険者の方がいて、珍しい食材がある時や、新しい料理、機材を試したい時などですね。この前ラボで冷凍庫と冷蔵庫が出来たので、もう少し頻度が上がるかもしれませんよ。」


レイカルさん曰く、先日壊滅した至高神のカルトから()()()()()()()()()()()()の記録が闇市場に流出したらしい。

そして、この世界の人間では再現不可能な技術もデポさんのラボでは再現出来る物があったそうだ。

量産しないから市販はされないみたいだけど……。


(大抵は軍事に使われるから機密扱いだろう。魔族と人間の技術差は開くばかりだな。この世界の人間の知識や技術は低い。)


ん?そうなの


(この前、魔力波の反射で位置を探る話をレイカは一瞬で理解しただろう?それは音や電波の基礎知識がレイカにあるからだ。音が波の様だと、この世界の普通の者は知らん)


「昨夜、お師匠様が召し上った『牛尾の赤ワイン煮』冷蔵庫で寝かせていたので旨味が増してましたよね。賄いで頂いたのですが、信じられない美味しさでした。」


確かに、あれは信じられない程に美味しかった。

語彙がないから、どう美味しかったかは表現出来ないけど……。


「そこの者!何をしている!止めろ!」

急に近くから怒声がした。


「何処ぞへと行くがいい!至高神万歳!」


え?

突然、黒い光が溢れた。


☆☆☆


私は灰色の空間にいた。

咄嗟にミエニー妖魔筒や装備一式は掴んだけど、寸前まで話していたレイカルさんどころか、テーブルも椅子もない。


もしかしてテロにあって再び死んだのだろうか?


(     )


いつもなら、話してくれるマドウも沈黙している。

もし死んだのなら、黄泉の店は『ラーメン』だろうか?それとも『牛尾の赤ワイン煮』だろうか?カウンターで『お寿司』や『天ぷら』も捨てがたい。


〘そんな事考えるのは貴女ぐらいですよ。私の[聖女]〙


うーん、神様の声がするから、本当に死んだのかもしれない。


〘まだ死んでません。ここは時空の狭間です。口の悪い魔導書は座標計算中ですよ。貴女は無作為転移に巻き込またのです〙


()()と言うのは、ちょっと不穏だ。

確か無作為転移に巻き込まれたならマドウ曰く、確か死亡率は3割だったかな?

大抵が対象の()()()()()()()()()()ポイントに転移する。

ただ3割強は何もない海上や山の奥に、いきなり放り出され、その場合は死亡する事が多いから、トータル死亡率は3割ぐらい。

運良く人里に転移出来れば、良いのだけど……。


〘貴女は座標計算なしなら、何もない南の海上に出る予定ですよ[聖女]〙


うーん、それは死ぬよね。


〘口の悪い魔導書もスマホごと、海の藻屑にはなりたくないでしょうから、少し待つしかないでしょう。〙


すると、灰色の世界に何処かのお墓の映像が写し出された。

うーん、和風のお墓に鈴木家ってある。

あれ?

あれはうちのお墓だ。


〘貴女の眠るお墓ですよ。〙


前に誰か座って祈っている。

お姉ちゃんだ!

と、お姉ちゃんが振り向く。


「冷夏!そこに居るの?」

姉は完璧超人だけでなく、魔法的な感覚も鋭いみたいだ。


「うーん、居るけど居ないよ。」


「冷夏……。」


「お参り『ありがとう』最後にお別れ出来なかったからね。」


段々、映像が薄れてゆく。

どうやら大地母神様なりのサービスだった様だ。

大地母神様の声もしなくなった。


「わたしの〜おは」


(歌うなよレイカ、音楽ギルドは面倒くさい。計算が終わった。出るぞ。)


歌いだしとサビしか知らない歌を思い出しているとマドウの声がする

足元に白い光が広がってきた。

「無作為転移って世界中の何処にでも転移するの?」


(壁の中や水中など、他の大きな質量が占めている場所や上空などには転移しない。また密度の関係から他の物体に重なる事もない。重力と魔力と時空の計算式を見ればわかると思うが?)


「普通わからないぞ、マドウ。」


(ただ、勿論政治的配慮や性的配慮はないから、男湯や女湯、立入禁止の王族の居室に出現する可能性はある。)


「うーん、コメディで済まない場合死ぬよね?」


(そういう不運な場所に出るのが3割強、で3割が死亡する。強が取れるのは僅かに生き延びる者がいるからだ。今度ゴブリンの大集落に転移して逃げ延びた男の話をしてやろう。)


私の黒歴史がまた1ページ。

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