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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第17章 聖女の不在

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民間資格

冷夏視点です。

「うーん、どうしたものかなぁ〜。」

私は一人呟いた。


デポさんに休暇をもらったというレイカルさんは洗い立ての下級神官服をきているが、清楚な中に滲み出る色気が隠しきれない。

フードを被っているのも、何か訳ありげに見えてしまう。

前にも大地母神殿で喧嘩になっていたけど、このまま街を歩くと騒ぎになりそうな予感がする。


「どうしましょう?デポ様。お師匠様と歩くと『聖女様!』と騒ぎになりそうですけど……」


レイカルさんも、デポさんに囁いている。

微かに聞こえる声まで艶っぽい。

何か魔術的なフェロモンでも出ているのだろうか?


「大丈夫ですよ〜レイカは下級神官服着れば〜目立ちませんから〜」


うーん、デポさんの返答に安心な様なディスられた様な微妙な気持ちになる。


「そうだよ、レイカルの方が目立つよ」


私が指摘すると、デポさんはニンマリと笑った。

なんだか悪い顔をしている。


「そうですね〜でも策があります〜」


そういうとデポさんはレイカルさんに耳打ちをした。

レイカルさんが、なるほどと言う顔をする。


「お師匠様、失礼します。」


レイカルさんが私の頬に軽く口づけした。

不意打ちに、思わず固まってしまった。

顔が離れてから、鼓動が激しくなり顔が赤くなる。


と、


隣に私に化けたレイカルさんがいた。

うり二つの姿で微笑んでいる。

ドッペルゲンガーの変身能力を使ったみたいだ。


「あらあら〜レイカさんには〜刺激強かったですか?〜」


デポさんが赤面した私を()()()()ながら、見た目魔族に変身出来る[欺瞞]ペンダントを渡してくれた。

前に刺客に襲われて匿ってもらった時にも貸してくれた魔道具だ。


「魔族の姿で〜髪型を変えれば〜レイカだとは気づかれません〜」


前も、そうだったけど種族まで変わると知らない人には気づかれないし、知ってる人でも一瞬戸惑う。

さらに隣で私のフリをしているレイカルさんがいたら、私が私だと気づくのは至難の技だろう。


「髪を整えさせてください。お師匠様」


この世界にきてから、少し伸ばしている髪をレイカルさんがキレイに編んで整えてくれた。



「そうそう〜レイカには〜これを渡さねば〜なりません〜」


レイカルさんと出かける直前にデポさんが、短剣を渡してくれた。

細やかな装飾のついた鞘に、手に馴染む柄。

重さは軽く、試しに抜くと刀身はミスリル製だった。


「ここに〜鈴木家当主の紋章が〜入ってます〜陛下からです〜」

うーん、いつの間に手配したのだろう?

デポさんが陛下と呼ぶのは今上の魔王だけ。

魔王は遠く、魔族領の王都郊外の館に居るはずだ。


「陛下の代わりに〜レイカに士爵位を〜与えますよ〜」


聞けば、あの将官ミイラの鈴木さんは魔族鈴木家の当主で魔獣開発の功績により士爵位を与えられていたそうだ。

で、長らく戦闘中行方不明だったのが死亡が確認されたので、私に士爵位と当主の座を引き継がせる事に決めたらしい。

鈴木の名字だから遠縁だと認定された様だ。


「うーん、いつの間に……アルベロ鉱山の遺跡の話がハルピアに伝わったのは最近じゃないの?」


「陛下は以前から〜レイカとアヤメに〜自身と謁見出来る〜最低限の爵位は〜考えていらしたみたいです〜アヤメさんは〜竜の義理の娘になったので〜公的には貴族待遇〜」


(確かに魔王とおおやけに会うなら最低限士爵位は必要になる。だが[聖女]でも問題はないはずだが?)


[聖女]などと言う民間資格では駄目なんじゃないの?マドウ


(至高神2宗派と大地母神の[聖女]認定を民間資格扱い……歴代の[聖女]が泣くな)


「お師匠様、おめでとうございます」

私の顔と声でレイカルさんが祝ってくれた。

やっぱり外から聞く自分の声と姿は違和感あるよ。


☆☆☆


鉄砲鍛冶の件は市場で直ぐに解決出来た。

ヲタクドワーフ工房のハルピア支店が新規開店していたからだ。

なので、今はレイカルさんとショッピングと屋台食べ歩きを楽しんでいる。


「お師匠様、店頭に[聖女]像。お師匠様の木像が有りましたね。」

確かに抽象画を立体化した様な像があったけど、あれそうなんだ。


「支店や工房に必ず置いているそうですよ。朝には必ず祈るそうです。」


あの親切なドワーフさんの一族は、今ではヲタク族と呼ばれるぐらいで、通貨造幣の一族に次いで発展しているらしい。


「うーん、似せてとは思わないけど、なんで抽象画っぽい像なのかな?」

私の洩らした疑問にレイカルさんが、普通に答える。


「神像や聖人像は種族が特定出来ない様に抽象化する事が多いと、大地母神殿図書館の美術教本にありましたよ。」


話すと、眠らない魔獣のレイカルさんは夜中に大地母神殿図書館に忍び込み本を読んでいると言う。

魔族や魔獣にとっては大地母神殿の警備などザルらしい。


(弟子の方が師匠より、余程勉強家だな)


むぅ。

神殿で聞いた夜中に図書館を彷徨う美人の幽霊さんはレイカルさんだったか……。

図書館は昼間しか開いてないし、しかたないけど。

知識を得るのが楽しいと笑うレイカルさんは付け焼き刃の私より余程神官らしい。


(そのうちレイカルの方がレイカと入れ替わり本物の[聖女]になりそうだな。)


うーん、私と入れ替わる為に頑張ってるなら、「ドッペルゲンガー恐るべし」となるけど……。


そうでないなら[聖女]には相応しい人がなれば良いと思うよ、マドウ。

アンデットがいる世界なら、怪談は神官などが解決すべき事件かもしれません。

が、実力ないと比喩でなく[アンデット取りがアンデット]になります。

なので、実害ないなら放って置くのも対処法の一つです。


私の黒歴史がまた1ページ

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