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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第17章 聖女の不在

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スープと弟子

冷夏視点です。

新章スタートです。


ハルピアに帰った夜、私は[魅惑の伯爵夫人]で一人夕食を取り、くつろいでいた。

リリさんは大地母神殿に帰り、他のメンバーはルチェさんも含め飲みに出かけている。


商隊移動中は基本保存食で、途中の街での小休止以外では禁酒だから、みんな普通の食事とお酒に餓えていた。

だから別にボッチじゃないぞマドウ。

(何も指摘してないぞ、冷夏)


「冷夏さん〜疑問に答えてもらって〜良いですか〜」


デポさんとペティさんが、お盆にいくつかの小鍋を乗せて階段を上がってきた。

何か不思議な香りがしている。

いつの間にか食堂の営業時間は終わり、宿泊客のみが店内に居る時間になっていた。


「鶏ガラ」「豚骨」「白湯」「魚醤」「坦々」「醤油」「味噌」「塩」

それぞれの小鍋に小さなメモが貼られている。


「至高神教団の〜転生者記述にある〜スープを再現したのですが〜どれが正解ですか〜ラーメンという料理なのですが〜」


どうやらデポさんが、最近手に入れた本が転生者達がラーメンを語った記録をまとめた物らしい。

至高神は宗派によっては転生者を拷問して知識を吐き出させるそうなので、本の出所は聞かない方が良いかもしれない。

私は、それぞれのスープを試させてもらった。


「うーん、全部正解だよ。ラーメンって地方や、お店により全て違うんだよ。大きな括りでラーメンって呼ばれてる料理だから」

ペティさんが首を傾げている。

料理に関しては天才的だけど、それ以外の教育は受けていないらしいのでピンときてない様だ。

追加で例えの話をする。


「ワインとエールは違うし、米酒とか色々あるけど、括りでは『お酒』と言う感じだよ」


「なるほど〜そうなのですね~」

私の追加の説明でデポさんは理解してくれたらしい。


「冷夏さんは〜どのスープの地方だったのですか〜」


私は子供の頃の近所のお店が[細麺の鶏ガラ醤油]だったので、ラーメンというと、その味が一番に出てくる。

私にとっては三途の川の手前で出て来たぐらいに、その味が懐かしい。

私は具材も含め細かくデポさんに説明した。


「なるほど〜完成したら〜試食してくださいね〜」


うーん、完全に胃袋を掴まれている。

リキタ伯爵から[竜の卵]の拠点を移さないかと、お手紙もらっていたけど、断わる様にしよう。


☆☆☆


翌朝


朝食時にテーブルに付いていたのはルチェさんだけだった。

デグさんは恋人の所に泊まっているだろうし、茶殻は飲んだ翌日は妖魔神殿に泊まっている事が多い。


[魅惑の伯爵夫人]は冒険者の店なのに全て個室で、魔獣が出る噂が広まっているから宿泊者は少ない。

実際、レイカルさんの後輩が居候しているらしいので噂ではないのだけれど。


防犯がしっかりしていて、()()()()()安心して泊まれる店だ。

(()()()()()ではないのがミソだな。)

後は湯船付きのお風呂さえあれば完璧なんだけどな。


「お師匠様宛に[竜の島]から荷物が届いてます。[火気厳禁][水濡れ厳禁]で油紙に包んであります。」


レイカルさんが小箱を二つ抱えて持ってきてくれた。

火蜥蜴の街の鉄砲鍛冶さんに頼んでいたミエニー弾だろう。

輸送費も含めると割高だけど、私のメインウェポンだから経費削減とはいかない。

前に買った分は残り少なくなっていたので、これで安心だ。

明日にでも、このロットの試し撃ちはしておきたい。


そういえば[狭間筒]の弾造りと火薬も仕入れて置きたいけど、どうしたものか……。

通常弾に、アダマンタイト弾、それにシルバー弾も用意はしておきたいとこだけど、ハルピアの鉄砲鍛冶に知り合いは居ない。

そもそも、ハルピアに鉄砲鍛冶屋があるのかも怪しいところだ。

ヲタク工房は片道10日かかる妖魔の村だし……。

うーん、困ったぞ。


(規格外品は兵站に負荷をかける。量産品に切り替えたらどうだ?)


[妖魔筒]は携帯用のアルガ式しか量産されてないんだよ。

[狭間筒]が鹵獲出来たのは偶然だからね。

とはいえ作るとなると、ライフリングとか着火方式をオルガ式雷晶石に換装するとか、技術的に難しいんだよ、マドウ。


「あの、お師匠様。もしよろしければ、今日は一緒に鍛冶屋街をまわりませんか?」


いつの間にかテーブルの前に座っていたレイカルさんに話かけられた。

マドウとの会話を聞かれていたらしい。

いや、前にサキュバスの能力で近くなら心の声でも聞けるって言ってたな。


そういえばルチェさんが大地母神殿の図書館に行くと声をかけてきた気がする。

しばらく上の空だったけど……。


「お師匠様はちゃんと、お返事されてましたよ。」


ん?

レイカルさん、サキュバスモードで、もしかして心読んでる?


「いえ、思考パターンが同じなだけで、読んではいませんよ。」

うーん、ドッペルゲンガー恐るべし。


(冷夏が単純なだけだ。)

うるさいぞマドウ。


朝食が終わったら、私達師弟コンビは鍛冶屋街に行く事にした。

「あなたは〜ラーメンと言われて〜出てくるのは何になりますか〜?それこそ一冊本が書けるほど〜種類がありますよね〜。よろしければ〜お姉さんに教えてください〜。」


おまけの用語解説


アルガ式妖魔筒

 日本式の火縄銃の事、ダークエルフのアルガ族が主導し妖魔族全体で正式採用した。ドワーフの技術力により、口径やパーツが規格統一されている。


オルガ式妖魔筒

 フリントロック式の先込め銃、基本は火縄銃と大差ない。ダークエルフのオルガ族がアルガ族に対抗して作成させた。だが金具の歩溜まりが悪く正式採用されなかった。

その為先行量産品が少数出回るのみで入手は困難。

口径などの規格がアルガ式とは違う。


オルガ式を雷晶石に換装

フリントロックの燧石を魔石の雷晶石に変えた物。

石の交換や着火不良、強いバネによる標準誤差などを全て改善出来るが、雷晶石が高価な為、族長クラスへの贈答用妖魔筒などでしか採用されていない。


私の黒歴史がまた1ページ。

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