表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

329/385

決着

デグ視点です。

ニキアの街の市場を歩いていた時から考えられていたのだろう。

冷夏様は[狭間筒]に慎重にアダマンタイト弾を込めた。

火薬量なども計算され増量しているらしい。

逆に銀などは鉛よりも減量が必要になるそうだ。


以前、冷夏様はこの世界の[元素表]がないかと前にデポ姐さんに尋ねていた。返答は魔族では軍事機密にあたるから人間には開示はされないだろうとの返答だったと聞いた。

その[元素表]とやらが何かは自分には分からないが……。


「アダマンタイトは徹甲弾として考えてたんだよ。ライフリングを魔術で保護すれば消耗も防げるし」


「それにこの[狭間筒]はライフリングが真っ直ぐなんだけど、これは偶然か意図したかは分からないけど丸い弾に上向きの回転を与えるんだよ。野球のストレートと同じで直進性が増してるんだけど……」


ルチェさんだけは熱心に聞いているが、他のメンバーは不思議そうな顔をしているだけだ。

自分も多分同じ表情をしているだろう。


「冷夏、全くわかないっす。」

とうとう茶殻さんが本音を漏らした。



「魔獣をどうやって誘き出す?俺の役割は釣り餌なのだろう?」


少し離れた位置でアウトが呟く。

声色から死を覚悟している様子が伝わってきた。

だが[狭間筒]をセッティングしている冷夏様から返ってきたのは違う言葉だった。


「何度か魔力波をアクティブソナー代わりに放ってるから、[左衛門改]はこちらに向かってるよ。位置からして四半刻半じゅうごふんしないうちに正面に現れると思う。」


理由は、やはり全く分からない。

だが魔獣がこちらを目指して来る事だけは分かった。

ルチェさんは[氷結の霧]を杖に込め終えている。

アウトにはリリさんを護る様に伝え、自分と茶殻さんは冷夏様の近くに控えた。


まとまって居ては魔獣のレーザーとやらの的になってしまうはずだが、[氷結の霧]なら減衰可能なはずとの冷夏様とルチェさんの計算を信じるしかない。

なぜ[氷結の霧]でレーザーが防げるのか?

自分には魔術は全く分からない。


☆☆☆


魔獣[左衛門改]は正面から、ゆっくりと現れた。

自爆攻撃を警戒しているのか瞳が慌ただしく動いている。

そして、こちらを見咎めると急加速した。

どうやらこちらの意図に気付いたらしい。


[急発進](使1残99)

[急発進](使1残98)

[急発進](使1残97)


大坑道の中を高度も変えながら左右に動き接近してくる。

このまま突撃されたなら、自分達に成す術はない。

白兵戦では魔獣の装甲を破る事が出来ないからだ。


と、横合いの坑道から3人の戦闘奴隷が飛び出して来る。

機動を先読みした所で、そのうちの1人が魔力灯を掲げた。

「馬鹿野郎!止めろ」

アウトが叫ぶ。


[急停止](使1残96)


[左衛門改]が動きを止める。

その為、戦闘奴隷は魔獣から離れた所で自爆した。

それと同じく隣で乾いた音がする。


弾は命中したが、[左衛門改]はこちらに向き直った。

僅かな時間のはずだが、瞳が紅く変化してゆく様子が、はっきり見て取れた。


[ミーン](使用1残95)

[氷結の霧](使2残1+0)


魔獣から放たれたレーザーが霧と氷の欠片に反射して紅く煌めく。

そして同時に重い音がして浮いていた丸い影が地面に墜ちた。



「手応えはあったけど、即死しなかったから焦ったよ。」

冷夏様が汗を拭いながら呟く。

そして自爆し跡形も無い、戦闘奴隷が()()跡に目をやる。

普通なら弔いの祈祷をするのだが、弔う遺体が見当たらない。


「流石は聖女様。戦闘奴隷が作った隙を見逃さず、ありがとうございます。」

神官ソルシェが近くの坑道から出てきた。

冷夏様は表情を代えなかったが、珍しく返答もしなかった。

黙って魔獣の死体の方へ歩いてゆく。


そしてアウトがソルシェの前に出ようとした。

「アウト、控えてください。戦闘奴隷が隙を作ったのは事実です」

だが、リリさんが言い、剣を抜きかけたアウトの手を抑えた。


アウトは苦しそうに項を垂れ、剣から手を放す。

その間、ルチェさんと茶殻さんは冷夏様と共に魔獣の死体を検分して何かを話していた。

こちらの、やり取りは見ないふりをしている。


「大地母神よ、この者の毒と依存症を癒やし給へ」(使3残3)

ソルシェさんがアウトの奴隷薬を煽る様に無力化した。

自由になったアウトが斬りかかるなら、止めるには戦うしかない。


「貴様!」

リリさんを振り払いアウトが再び剣に手をかける。


「気が済むなら剣を抜きなさいませ。アウルエルグ殿。無抵抗のリザードマンの村を焼き払った貴方なら、私など一突きに殺せるはずです。」


その場の全員がアウトを見たが、アウトが剣を抜くことはついになかった。

「元素表って軍事機密なんですか?」


「元素自体が機密です〜人間では四大精霊や五行説さえ最新学説ですからね〜冷夏は異質ですよ~」


私の黒歴史がまた1ページ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ