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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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楽園

ソルシェ視点です。

一部時間前後あります。

お仕えしていた辺境騎士ミロウ様の御子息ユホ様も、その守役だった祖父も戦死した。

40名以上いた兵士も鉱山から脱出出来たのは私の他は3人。

しかも兵士とは名ばかりの、あぶれ者ばかりだ。


前に魔獣に敗れた傭兵達はアルベロ伯爵により戦闘奴隷に落とされた。

機密保持と傭兵契約費用を踏み倒す為の措置だと聞いている。


奴隷化を抗議するにしても、ユホ様が生きていればまだ可能性あるが、大地母神官の小娘と名ばかり兵士では話にならないだろう。

黙殺され鉱山か娼館送りにされるのが関の山だ。


とはいえ、こんな戦力では魔獣[左衛門]とは戦えない。

万事休す。

だが私は、まだ魔獣討伐を諦めてはいない。

祖父は最後まで父との結婚を認めなかったが、私には冒険者だった母から学んだ知識がある。

手段を選ばないで戦うしかない。


☆☆☆


魔獣討伐の第二陣として、伯爵の次女[怠惰のリリ]が兵を率いて鉱山に到着した。

冒険者を1組と戦闘奴隷10人、ロートル下級騎士に少年兵10人。

馬にやっと乗っている騎士やまだ片手剣が重そうな少年兵は論外。

戦闘奴隷も1人だけ戦士の目をしているが、他は[あぶれ者]と大差ない。

実質的な戦力は冒険者だろう。


リーダーらしき禿頭の戦士。

杖を持ったリザードマン。

刀を下げた軽装の女。

妖魔筒を背負った大地母神官。


意識を集中しながら改めて眺め、観察する。

そうする事で私の天啓[覗き見]が発動するからだ。

私の天啓は正直役には立たない。

他人の能力、天啓を[覗き見]するだけの能力だからだ。

魔術の[解析]の様に相手の事が詳しく分かる訳ではない。

普通の[解析]では分からない天啓が見えるとはいえ、魔術の[解析]でも、導師級の術者なら天啓も分かると言う。

利点は相手に気づかれない事ぐらいだ。


禿頭の戦士

(魔0聖3)[性技]

リザードマン

(魔6聖3)[瞬間記憶]

軽装の女

(魔6聖6竜6)(魔0聖0竜0)

大地母神神官

(魔10×6聖8×6)[将棋][射撃]

戦闘奴隷

(魔0聖3)

リリ・アルベロ

(魔3聖6)[剣術]


冒険者には天啓持ちが比較的多いが、伯爵令嬢だけあり、腕利きをかき集めた感じだ。

しかしリリ自身の[剣術]は無用の長物だろう。

令嬢が剣を握る機会などない。

天啓は相応しくないものが授けられる事の方が多い。


「あの、ユホ隊の生き残りと聞きましたけど、話を聞いても良いですか?」


「色々聞きたいっす」


リリとその配下が話かけてきた。

今は正直に答えるしかない。


☆☆☆


大地母神は、まだ私を見捨てはいなかった。


リリとの話から、奴隷の使用条件を知り7人の戦闘奴隷を盗む事が出来たし、生き残りの3人にも、リリの名を使い奴隷薬を投与した。

もちろん主人は私に設定している。


ポーチには一定以上の魔力で爆発する[魔族殺し]が3つ。

背負い袋には[魔族殺し]の起爆装置としての簡易魔力灯も3つ。

奴隷薬の延長剤は、まだ在庫がある。

10人の戦闘奴隷を使い自爆攻撃を仕掛ければ魔獣を倒せる可能性が出てきた。


鉱山長にリリの名前を出して、保存食を貰うと坑道に入る。

祖父の持っていた坑道図を参考に地下を進んで行く。

ユホ様の失敗は魔獣の装甲を見誤り、数で囲めば勝てると考えた事。

壊滅した2度目の戦闘では何人かが魔獣に斬りつけていたが、魔獣は無傷に見えた。

もっと多くの[魔族殺し]を揃え、戦闘奴隷を使って自爆攻撃をすれば……。


道すがら戦闘奴隷達に強い暗示をかける。


『自爆して死ぬ事は勇敢な行いだ』


『勇敢に戦い死んだ者は死後、神々の住む楽園に招待される』


『楽園では食べるのに困らず、苦しみはなにもない』


大地母神の教えには、そんな事は一言も書いてないが今は必要だ。

そして薬の力もあり、彼らはそれを信じた。

彼らの魂は楽園とやらに導かれるだろう。


☆☆☆


「ミーン」(使1残96)


魔獣の力の照射を受け、戦闘奴隷の1人が死亡した。

私は、なるべく入り組んだ狭い坑道に魔獣を誘い込んだ。

複数方向から戦闘奴隷達を迫らせる。


「ミーン」(使1残95)

また1人殺られたが、充分時間を作った。


爆音


戦闘奴隷のアルファ班が完全に近づく前に自爆した。

並走していた仲間ごと吹き飛び、()()()()()魔獣に降り注ぐ。

魔獣は目をつむり、爆風に耐えた。

全くの無傷ではない様だが、行動に変化はない。

まぶたを開いた魔獣の瞳が真紅に染まる。


「今です。ブラボー自爆しなさい。」

私は側坑に飛び込みながら命じる。


「急発進」(使1残94)

ほんの少し遅れ爆音


背後から近づいていたブラボーが自爆した。

魔獣は坑道の壁にぶつかり、派手な音をたてる。


「ミーン」(使1残93)

[緊急排熱](使2残91)


トドメに近づこうとしたチャーリーは照射を浴び自爆出来ずに死んだ。

フォローに入ったチャーリー班員は熱風火傷を負い倒れる。


失敗だ。

私は数が減った生き残りに撤退命令を出す。

魔獣が去ったら[魔族殺し]等を回収しよう。

爆発ならダメージが通る事がわかっただけでも収穫だ。

それに魔獣を観察して気付いた事もある。


もう少し兵力と装備があれば……。

悔しさを噛み締めながら坑道を走った。

(冷夏の天啓は、いつ授かった?気がついていなかったが……。)


〘私ではありませんよ。前世から持ってましたよ。逆に[心疾患]だけは取り除きましたけど。〙


〘天啓は悪いものもありますからね。3つも授けられていたのは珍しいですが。〙


(しかし[射撃]など、冷夏の前世では意味がなかっただろうに。)


〘ある同胞が世界にスキル制を導入しようとした際のシステム改変の名残りみたいですね〙


(導入は頓挫したのか?)


〘その同胞がある世界に顕現した時、ある魔術士に騙されてしまったんですよ〙


〘自称[全能の神]なら『自分の力では持ち上げられない岩は作れるか?』って〙


〘『もちろん創れる』と言って岩に押し潰され、そのまま封印されてしまいました。『俺だけが神、他の者は精霊』とか鼻持ちならない奴だったので、そのままですね〙


(この話はフィクションだ。現実の宗教などとは関係ないぞ。)


私の黒歴史がまた1ページ。

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