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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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試作魔獣の検証

リリ視点です。

わたくしたちが部屋に入ると、中には一体のミイラが椅子に座っていました。

服装は旧魔王軍の将官服に白衣を纏っていて、腕に抱く様に羊皮紙の本を持っています。

また椅子の近くには何冊もの本が重ねて置いてありました。


「全部持ち帰れば一財産だな。おい。」


笑いながら戦闘奴隷のアウトが話しました。

腰には先程得た魔剣を下げています。

遺跡の遺物の所有権は私の父アルベロ伯にあるはずですが、魔獣の脅威がある今そんな事は言ってはいられません。


「全部、[古魔族語]っすか?[左衛門]の資料だけ持ち帰れば良いっすけど、分からないっすね」

茶殻さんは将官ミイラからミスリル製の認識票を剥ぎ取りました。

「えーと、ス、鈴木土江、間違えないっすね」


ルチェさんと冷夏様は無言で本に目を通しています。

冷夏様は文字解読の魔術[使1残58]を使われた様です。


「これは魔王軍の[戦況報告書]、大切そうに持ってたのは私的な[日記]みたい」


第一次魔王戦争時代の書物は各教団や魔術師ギルドが高値で買ってくれます。

ちょっとした記述から新たな遺跡が見つかったりもしますし、魔族の進んだ魔法技術が発掘されたりします。


「この鈴木さんと、さっきのスケルトンウォリアーは身分違いだけど、恋仲だったみたい。」

そんなリザードマン語で言う[好物]はわたくしも読みたいですが、時間がありません。


「日記読んでないで魔獣資料探して欲しいっす」

茶殻さんが冷静に指摘しました。


「[試作魔獣の検証]、これですネ」

ルチェさんが目を通していた薄い本を冷夏様に見せます。


「むぅ、そうみたいだけど左衛門改ってアダマンタイト使ってるの?」


「アント鋼から改装してまス、重量増から薄くなってますガ、強度は増してる様でス」


魔獣の正体は良くわかりませんが、2メートルの球体にアダマンタイトが使われているとなると、良くないと聞いた伯爵家の財政を立て直す、きっかけにはなるでしょう。


「余分な物は盗るな」

デグさんが声をかけます。


「魔獣資料さえあれば、教団の依頼は果たせるからね。伯爵さんと揉める必要はないよ。」

冷夏様がデグさんの言葉を補足しました。


☆☆☆


「ミーン」(使1残99)

[モニタールーム]を出て、[培養槽]に通りかかった時、突如水槽から青白い目玉の化物が浮上し[レーザー]を照射してきました。


[鏡面盾ミラーシールド](使2残3+0)

咄嗟とっさにルチェさんが杖を地面に突き、あらかじめ用意してあった魔術を展開しました。

レーザーが反射で逸らされ遺跡を焦がします。


乾いた音が遺跡に響きましたが、魔獣は目をつむります。

澄んだ音がして、冷夏様が放った弾が弾かれました。


「うそ!?この距離のミエニー弾も弾かれちゃうの?」


「今の間に逃げるっす」


[竜の卵]は駆け出しました。

私は抜剣しようとしましたが、奴隷のアウトに担がれてしまいました。

力強い腕に抱えられたままわたくしは運ばれて行きます。


「馬鹿か?魔剣一本で敵う相手じゃねぇだろ」


後から何度かレーザーを照射されましたが側抗を縫う様に走り、とりあえず難を逃れました。


☆☆☆


「『鉱山基地に侵入した者を敵味方識別情報に基き、味方以外全て排除する事』資料では魔獣への最終指令はそうなってましタ」


ルチェさんが干し肉を噛りながら話をしました。

わたくし達は狭い坑道内で食事と休息を取り作戦を考えています。


「何度か先回りされた。どうやら地の利は魔獣にあるらしい。」


奴隷のアウトが革袋から水を飲みます。

途中で下ろしてもらいましたが、わたくしは、しばらく俵の様に運ばれてしまいました。


狭い坑道だけを伝い外に出られるかをデグさんが尋ねますが、ルチェさんは否定します。


「無理でス。必ず広い坑道を通りまス。鏡面盾ミラーシールドは先に用意が必要で一回が限界でス。」


坑道内でゆっくり睡眠を取り魔力を回復するのは難しいと思います。

魔獣が狭い坑道に入り込んで来ない確証は無いからです。


「私の魔術は地味な付与系か、ぶっ放し系だから……うーん、荷電魔粒子砲なら倒せるけど」


「蒸し焼きになるか、落盤で死ぬっす」


「煙玉とかでレーザー防げない?」


「先に焚かないと駄目っすし、坑道で燻されるのはこっちっす」

冷夏様の発言に茶殻さんが的確に答えます。


「近づくのが難しいし、白兵しても刃が立たないのではな……。それこそ落盤にでも巻き込むしかないか?」


「戦闘奴隷の出番っすね。志願とは良い心掛けっす。」


「藪蛇だったな。勘弁してくれ」


奴隷のアウトも発言しましたが、同じく茶殻さんに指摘されて黙ります。

なんだかんだで、奴隷のアウトと茶殻さんが親しげに話しているのが何故か気になります。


「戦闘奴隷の扱いは、あっしが決める事じゃないっす。でも魔獣を倒せば奴隷アウトから、騎士に帰り咲けるかも知れないっすよ」


「俺が騎士だって?馬鹿言うな」


「あっしも刀を使うので剣筋を見れば分かるっすよ。少なくとも下級騎士クラス以上の学ぶ剣の型っす。」


「剣の師が引退騎士だっただけだ。」


明らかな嘘だとわたくしは思います。

普通、騎士の剣は同じく騎士になる者にしか教えないですし、習得に時間かかりますので真似ても剣筋には現れません。

アウトは下級騎士以上の家柄の生まれなのでしょう。


「むぅ、話がずれてるぞ。」


「取り急ぎベースキャンプまでは戻る」

冷夏様の指摘とデグさんの一言でとりあえずの方針は決まりました。

落盤起こすにも冷夏様の狭間筒用の火薬が役に立ちそうだからです。


その後半刻余り休んだ後、私達は出発しました。

水中から上がった浮遊戦車が砲撃をする。

そんなロマンが少し漏れてます。


私の黒歴史がまた1ページ。

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