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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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奴隷薬

冷夏視点です。

私達がアルベロ第3鉱山に着くと、鉱山の雰囲気は沈んでいた。

先行した討伐隊は壊滅状態で、数人の生き残りが帰ってきたらしい。

鉱山に残っていた鉱山長さん等は私達を見て落胆を隠さない。

伯爵の娘のリリさんが派遣されてきたとはいえ、人数が半分以下だからだ。



「生き残りの大地母神官の話から[左衛門改]で間違いないっすよ」

情報を集めてきた茶殻さんが教えてくれた。


今は食事をしながら、作戦を練っている最中だ。

痩せていたアウトさんは、ここ数日で随分マシになった。


「下級騎士さん一行いっこうは駄目でス。」

ルチェさんが報告する。


下級騎士さんは腰痛で動けず、その従者の少年達は壊滅した魔獣討伐隊を見て英雄譚から現実に引き戻された様で怯えているという。


「戦闘奴隷の首でも刎ねさせて度胸つけさせれば良いっすかね?」

茶殻さんが怖い事を提案した。

表情からして冗談だと思うけど……。


「俺以外は戦闘経験皆無だが、度胸付けに使い捨てるのは勘弁してくれ」

無精髭を生やしたアウトさんが、食事を続けながら反論する。


「まぁ、あんたらが望めば俺等には逆らうすべは無いがな。」


「冗談っすよ。[左衛門]からの弾除けにした方がマシっすから。」

うーん、レーザーは弾じゃないし、どこまでが冗談かよく分からないぞ。


「魔族の遺跡は最下層近くか?」

デグさんがリリさんに訊く。


「は、はい、坑内図ではそうです。」

緊張してリリさんは答える。


「ルート設定はしましタ。」

リザードマン訛りがあるけど、説明を始めたルチェさんの方が、リリさんよりもスムーズに喋る。


「アウト、荷運びを2名程選抜してくれ、荷運びは武装なしで良い。」


作戦では遭遇戦にならない限り、魔獣との戦闘は極力避け[左衛門改]の資料を回収する事に改めて決まった。


☆☆☆


「ねぇマドウ?魔獣って外に出てきたりはしないの?」

鉱山の宿泊施設でマドウと話す。

私とリリさんは個室のVIPルームに案内されている。


(分からんな、ただ鉱山から出て来ないのは、理由があるだろう)


(研究施設の警備が命令されていたなら一定以上は離れないだろうし、単に縄張り意識からの行動かも知れん。)


うーん、おびき出して罠にかけるとか駄目か……。


(通常の[左衛門]はアント鋼の肉体と、連射不能なレーザー装備なのだが、話から連射が効く様にに改良されているな)


そう言うとスマホの画面に黒い大きな目玉が映った。

そして瞳からレーザーを照射して、側面に開いたの溝から排気している映像が流れる。

薄暗いし、何かの実験映像みたいだ。


うーん、[左衛門]知ってたならもっと前に教えてよマドウ。


(他の魔導書との定期リンクで得たばかりの情報だ。やり取りは限定的であるから既存知識以外では何でも知っている訳では無い。)


ん?

よくわからないぞマドウ。


「レーザーって煙幕で防げない?」

映像を見て対策を考える。


(狭い坑道で煙幕など焚けば燻されるのは自分だぞ、ただある程度乱反射させれば減衰はされるだろう)


うーん、一工夫ひとくふう必要かぁ……。


(それより誰か来たみたいだぞ。扉を不用意には開けるな。)


私はミエニー妖魔筒を手に扉の前に立った。


☆☆☆


扉の外にはリリさんが立っていた。


[聖女レイカ]様、大変です!」

何かあったのだろう。

息を切らしている。


「うん、見れば分かるよ。どうしたの?」


「宿舎にいた[戦闘奴隷]を盗まれてしまいました!」


「え?どういう事?」


戦闘奴隷は常習性のある薬物で管理されていて、脱走などしても半日で動けなくなるって聞いた。

人道的に問題あるけど、今の私に出来る事はない。

アウトさんとデグさんも走ってきた。


「ミロウのソルシェとか言う大地母神官が、待機組に回した奴らを勝手に連れ出した。『大地母神官に従う様に』命令していたのを利用され、設定を書き換えられた様だ。」

アウトさんは怒っている。


「茶殻が行き先を調べている。」

デグさんが呟く。


「そんなもの、坑道に決まってるだろう!あの女、ユホ隊の生き残りにも奴隷薬を投薬している。魔獣と再戦する気だ!」

アウトさんの怒りは治まっていない。


わたくしが命令条件をソルシェさんに漏らしてしまったのです。」

リリさんが震えている。


「リリさんが怯えてるから、アウトさん、『怒らないでよ』」

私が言うと、アウトさんが苦しみ始める


え?


「冷夏様、戦闘奴隷に従えない命令は駄目でス。従わないと禁断症状がでまス。」

ルチェさんが到着した。


「奴隷薬は魔法薬ですかラ、効果は直ぐ出まス。本人にはどうしようもない命令でモ、従わないと反応が出まス」


え!


「アウトさん『怒っても良いから、怒鳴らない』で」

私が言い直すと、アウトさんはへたり込んだ。

息も絶え絶えになっている。


「奴隷には躾が必要っすけど、冷夏の場合は無自覚だから怖いっす。」

最後に到着した茶殻が苦笑いしながら私の失敗を教えてくれた。

うーん、奴隷薬って恐ろしいよ。


「一刻前に大地母神官が10人ばかり戦闘奴隷を連れて、坑道に入ったっす。追うには遅いっすから、予定通り明日の出発っすね」


アウトさんの目は怒りに燃えていたけど、終始無言だった。



奴隷薬は最初に投与する魔法薬と禁断症状を抑える継続薬からなっていて、魔法薬はそこそこ高価みたい。

因みに解除するには神聖魔法の解毒しか方法はないそう。


薬師資格もあるルチェさんの話では、反抗的な戦闘奴隷には息をするなって命じるんだって。

息をしないと、もちろん苦しいし、息をしても禁断症状で苦しい。


何度か繰り返すと、どんな凶悪犯も従順になってしまうという。

奴隷薬は高いから戦闘奴隷ぐらいにしか使われないらしいけど。

恐ろしいよマドウ。


私の黒歴史がまた1ページ。

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