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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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幕間

ルチェ視点です。

「アルベロ第3鉱山に行くリリさんに、同行する依頼が来たよ」

冷夏様が私達[竜の卵]に呼びかけまス。


アルベロ伯爵ガ、リリさんを指揮官に魔獣討伐隊を編成するよう命じましタ。

ユホ・ミロウ隊が何日か前に出発したばかりですかラ、合理的ではないのですガ、どうやら政治が絡む様でス。


「ユホ隊はリリの兄貴主導、リリは伯爵主導、無駄っすね〜」

茶殻さんが呟いてまス。


「どちらにしろ調査は必要だ。」


「そうっすけどね。」

デグさんの言葉に茶殻さんが答える間ニ、冷夏様は契約書面を改めて眺めていまス。


「うーん、報酬はパーティで金貨2枚前払い。食事付きだけど、普通ならリスクと見合わないよ。」


「伯爵には金がないっす。その書類は依頼書の体裁の命令書っす。」


「神殿に幽閉状態では埒が明かない」


私以外のメンバーそれぞれガ、意見を出し合ってまス。


「ルチェさんはどう思う?」

冷夏様の問いかけに、依頼書を見ながら答えまス。


「依頼内容はリリさんの護衛でス。ただリリさんへの命令は魔獣討伐ですかラ、実質は魔獣討伐依頼でス。」


「護衛依頼なので魔獣討伐に失敗してモ、ペナルティーはないですガ、リリさんが死亡した場合は報酬を倍額返金になりまス。」


「討伐依頼ではないのデ、魔獣の素材に権利は発生しないですシ、リスクと報酬が釣り合ってない依頼でス。ただ金銭面に余裕がある[竜の卵]なら最悪依頼を破棄できまス。」


「リリさんを見捨てる覚悟があるなラ、許容範囲でス。」

そう答えましタ。


「うーん、最悪リリさんを見捨てるのかぁ」


「心配ないっす。その時は、あっしらも生き延びられるか微妙っすから。」


「むぅ。正直だぞ茶殻。」

冷夏様と茶殻さんのやり取りにデグさんは珍しく苦笑いしています。


「リリ隊の数は?」


「あっしの調べでは、下級騎士が1人とその郎党が5人。鉱山から引き抜いた戦闘奴隷が10人っす。」


リスクに聡い傭兵や冒険者が0人なのが困難を示していまス。


「リリにいえば[おのぼり]クラスの冒険者や戦闘奴隷は増やせるっすけど、意味ないっす。」


戦闘奴隷だいたい10人に付キ、1人は指揮者が必要でス。

それに魔獣側は無理に力攻めに付き合わない選択肢もあるので、数だけでは勝てないでしょウ。


「資料回収と、リリの生還を[竜の卵]の勝利条件にするっす。」

冷夏様は不満そうでしたガ、[竜の卵]の方針は決まりましタ


☆☆☆


「こりゃ駄目っすね。使えないっす」


やせ衰えた戦闘奴隷10人ニ、もはや自力では馬にも乗れない老いた下級騎士。

下級騎士の郎党5人は逆に少年と言える若さでス。


「リリさん。鉱山に着いたら待機してもらおうよ。私達だけで鉱山に入るよ。」

冷夏様が申し出るト、リリさんは申し訳なさそうに頷きましタ。


リリさん曰ク、治安維持以外の伯爵の主力は南方の男爵領の後詰めに送っていて不在。

リリさんの兄がコボルト討伐に向かったのも南と連携を深めるコボルト達を抑える為だといいまス。


「南方妖魔達にダークエルフのオルガ族が海路で軍事援助をしているのです。特に援助された[妖魔筒]による被害は甚大です。」

南方のコボルト妖魔筒隊の連携射撃ハ、白兵主体の人間達を悩ませているそうでス。


「うーん、知らないで突撃したら、良いマトだよ」


冷夏様は呟きましたガ、妖魔筒の運用をダークエルフ達に指南したのハ冷夏様だと聞いていまス。

冷夏様には竜たる自覚がないのガ、とても恐ろしいでス。


「お貴族様よ、駄目で、使えない俺等はどうなる?」

戦闘奴隷の一人が話しかけてきましタ。


「こら、貴様ら奴隷風情が、話しかけて良い方ではない!黙れ!」

下級騎士の従者、少年の一人が奴隷をとがめまス。


「黙らんね!俺等は魔獣を退治すれば恩赦にありつける。そうで無ければ鉱山奴隷に逆戻りだ!自由になりたい。だから俺は志願したんだ!」

痩せ細った一人が吠えまス。

他の戦闘奴隷は俯き黙っていまス。


「黙れ!黙らんと首を刎ねるぞ!」


「見捨てられて死ぬなら、今、首を刎ねられても変わらん!糞ガキ、剣を抜いてみろ!」

激昂した少年従者が抜剣しましタ。

それを見て茶殻さんが少年を殴りつけまス。


「くだらない事は剣は抜かずに済ませるっす。そして抜いたなら斬るっす。」

少年は睨みますガ、茶殻さんは無視しましタ。


「そっちは犯罪奴隷っすよね?何したっすか?」


「命令無視、敵前逃亡、ニキタ伯爵領の脱走兵だ。」

戦闘奴隷が答えまス。


「名は何っすか?」


「3−6番。いやアウト、アウトだ」

アルベロ第3鉱山送りの6番ガ、名乗りましタ。


「偽名っすか。まぁいいっすけどね。こいつは連れて行くっすよ。」


リリさんは再度頷きましタ。

念の為。

後詰めは援軍の事です。


私の黒歴史がまた1ページ。

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