ゴブリン戦
……視点です。
[至高神の剣]の戦いです。
ゴブリンは数が多い時は強気になります。
ある日俺は奥様に呼ばれた。
王都にあるアンセム伯爵の邸宅で、下男として仕える俺はもちろん奥様と話せる身分ではない。
なので、庭の片隅に控えていた。すると近くを供も連れずに伯爵夫人が通りかかる。
「先妻の子、リーンが旅司祭として修行の旅に出ます。」
「あなたは、それに下男として同行するのです。」
奥様は独り話す。
「そしてリーンは不幸にも事故に合ってしまい帰ってこなくなります。」
「あくまでも事故で帰ってこなくなります。わかりましたね。」
奥様。伯爵の若き後妻は立ち去った。
翌日、俺はリーンお嬢様付きの下男になった。
シーフギルドを通じて前金を渡された。
しばらくお嬢様の冒険者ごっこに付き合うには充分な金額だった。
左を沼、右を池に挟まれた前方からゴブリン達が迫ってくる。
数は12匹だがこの隘路が俺らに味方する。
「お嬢様、突出せずに私と列を合わせてください。」
髭面の傭兵崩れが大剣を振るいながら言う。
短髪の短弓使いが矢をつがえ離れた位置のゴブリンを射る。
お嬢様に返事をする余裕はない。
(意地張らず、前衛は傭兵崩れに任しちまえば良いのに、せっかくの大剣がブン回せてねぇ)
「後、後方からゴブリン4匹くる!」
魔術師がヒステリックに叫ぶ。
(叫ぶ暇あるなら呪文唱えろ青瓢箪!)
「魔術師さま呪文を……」
「そ、そうだね。」
青瓢箪が呪文を唱え始めた。
(詠唱が遅い青瓢箪!)
「……眠りの霧よ!」(使1残5)
後方から来たゴブリンは倒れ、眠り始める。
「お嬢様後ろのゴブリンに止めを……」
「下郎、私に指図するな!」
(叫ぶなよ。ゴブリンが起きちまうだろ。)
とは言いつつも、お嬢様は後退し、眠っているゴブリンに片手半剣を突き立て始めた。
前衛もお嬢様という縛りが外れ、ゴブリンを押し返している。
(やれやれだぜ。)
それから程なくゴブリンは逃げ出し戦いは終了した。
夕方
「昼間はありがとう。君は冷静だね。」
「いえ、そんなことはありません。」
夕食の片付けをしている俺に青瓢箪が話しかけてきた。
(魔術師なんだから早く寝ろよ青瓢箪。)
「僕は、こういう実地的なのは苦手なんだ。」
「でも、魔術学院に入る為に魔術ギルドに奨学金を借りたから……。」
「左様でございますか……。」
(こいつも金か……。)
確か傭兵崩れも金絡みだったな。
短髪短弓いなきゃ、お嬢様を金にかえて死んだことにすれば……。
「……!」
悲鳴がする。
ここから遠くない。
女の悲鳴だ。
「悲鳴が聴こえる!ゆくぞ!」
お嬢様が駆け出してゆく
それを追いみんな駆け出す。
(こんな村から離れたところで?)
ぼんやりと、違和感がよぎった。
[至高神の剣]の戦いは次回に続きます。
私の黒歴史がまた1ページ。




