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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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悪党の定義

雫視点です。

[砂の街ニキア]

レパタ砂漠の南の外れに位置する街で、街の北はサンドリザードマンの族長が、街の南はニキア辺境伯が治めている。


かつては街の南北で争いになった事もあるらしいが、ずいぶん前に住み分けが出来てからはおおむね平和裏に統治されている様だ。


ちなみに今回、同行しているリリの姉はニキア伯の後継者、ニキア子爵の正妻らしいが、リリは顔を出さないという。

家族でも折り合いが悪い場合があるのは知っているし、特に貴族は政治が絡んだりするので厄介だ。


そういえば憑依している茶殻は血の繋がらない2人の姉を慕っているし、茶渋が結婚して家族が出来る事をずいぶん羨ましがっていた。

この容姿、肉体なら適当な男を引っ掛けるぐらいなら容易いだろうが、家族となると難しいだろう。


ニキアからオアシス沿いに砂漠を北にゆけば旧レパタの街。

西へ街道をゆけば、街道は、いくつかの小国を経て共和国に着き、更に帝国に至る。

南西へ山道をゆけば、アルベロ伯領に着く。


[白商隊]の三分の二と多くの冒険者パーティ、リザードマン傭兵達はここニキアで別かれる。

少なくないリザードマン傭兵がルチェに「[季節]が来たら卵を産んでくれないカ?」と告白し玉砕していた。

街を歩くだけでルチェはリザードマンに声を何度もかけられる。

ルチェとリリは、だからなのか宿に引き込もるそうだ。


リザードマンは年に一度10日間前後発情期がくる。

リザードマン達は[季節]と呼んでいるが、[季節]になると気に入ったパートナーと性交し1ヶ月後卵を産む。

ちなみに無精卵は産まないので、卵を産むのは性交し受精した時のみだ。


大抵は決まったパートナーと関係するらしいが、複数の相手と関係した場合は女の方に父親を指名する権利が生じる様だ。

産んだ卵は母親とその部族や集落が協力して育て、父親は部族の一員として協力する事が多いとの事。


リザードマンとしてルチェは、とびっきりの美人だと茶殻は告げていた。

私には正直よく分からないが、竜人の茶殻の見立てだから間違いはないだろう。


リザードマンは[季節]以外は性交しない為、人間やゴブリンの様に間違いや暴行は普段起こらない。

だから[季節]以外ならルチェが美人でも、あまり問題はないはずだが、言い寄られ面倒くさいのは確かだろう。


☆☆☆


「サボテン酒を」

銀貨を1枚、ほうった。


竜の島の米酒が有名な様に、この砂の街で有名なのはサボテン酒だ。

ドワーフ製のグラスに注がれた強い酒が運ばれてくる。


傭兵宿の店内には冒険者の店とは、また違うヤバい奴らがたむろしていた。

シーフギルドに仁義を切り、金を払って情報を買った方が効率は良い。

だが都合の良い情報を吹っかけられた挙げ句に掴まされる可能性もある。


もちろんシーフギルドは必要のない嘘はつかない。

悪党と商人には信用が必要だからだ。

だが嘘をつかないのと真実を述べるのは別だ。

悪党も商人も利益の為なら、なんだってする。


「商人は悪党という大きなカテゴリーに含まれるので当然ですね。」

とは誰の言葉だったか?

あるいは以前の憑依者の独り言だったかも知れない。


「闇司祭様。サボテン酒以外に何かご注文は?」

グラスをテーブルに置いたハーフエルフの少女が訊いてきた。

もう1枚銀貨をほうる。


「酒の相手を、貴女が。」

同性相手に、そういう趣味はない。

だが、この店の客に絡まれず酒を飲むには相手がいた方が良い。


「ありがとうございます。」

ハーフエルフの少女は私の隣に座ろうとするが、前に座らせた。

酒場の主人に目を向けるが無関心だ。


「アルベロ伯領の魔獣騒動について知ってる事を。」


「はい。」


こういう店の女は噂話から体まで、なんだって売る。

少女の話では銅鉱山で魔族の遺跡を掘り当てたのは間違い無い様だ。


おおやけにはなっていなかったが、数本の魔剣と魔道具が発掘され、その一部が闇市場に出ていたのが確認されているらしい。

そして封印された魔獣を起動してしまい鉱山は閉鎖。

送り込んだ傭兵隊は壊滅。

複数の冒険者パーティが挑むも帰らず。


魔獣の正体はなんだ?

魔族の資料では大粒のルビーから、希少金属のオリハルコンまで潤沢な資源を封印放棄したとあるから、試作ゴーレムあたりか?


しかしゴーレムを魔獣とは言わないし、高機動ゴーレムの研究は当時ハルピアで、おこなわれていた。有名な話だが、第一次魔王戦争末期にデポの試作高機動ゴーレム二号機と初代勇者一行はイブスル城で戦っている。


ポンコツも魔獣開発は最高機密の上に開発していた当時の魔族の研究責任者は封印した研究所と運命を共にしている為、断片的な資料しか残っていないと言っていた。


冷夏の魔獣調査でゼロ回答では済ませられないし、危険は極力避けたい。

それに私自身も魔獣資料を魔族に持ち帰らないといけない。


「ありがとう」


私はハーフエルフに金貨を握らせると席を立った。

ハーフエルフは驚いた目をしている。


「ま、またのお越しを」


私は振り返らず軽く右手を上げた。

リザードマンは母親がメインですが、群れで子育てします。

ワンオペ育児は基本ありませんし、両親のみで育てるのさえ極まれです。

現実の人間も、もとはそういう生物で現代では批判される家制度は社会と生物的本能と折り合いをつける制度として機能していた側面もあります。


私の黒歴史がまた1ページ。

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