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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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ハルピア神殿

冷夏視点です。

私がリリさんやレイカルさんと馬車から降りると、神官見習いさんが駆け寄ってくる。


「大神官様や神官長の皆様が、お呼びです。」

私が頷くとレイカルさんは神殿事務局に神官見習いの申請に行くと言う。


「冷夏様。後程食堂で合流しましょう。」

レイカルさんは普通に話しているだけなのに、何かゾワゾワした気分になる。

男の人なら一撃必殺だろうなぁと思いながら、食堂での待ち合わせを約束した。


ちなみに今回は[竜の卵]全員がこの場にいる。

馬車に付いてきた他の3人共、息も切らしていない。

デグさんや茶殻は鍛えているから分かるけどルチェさんは意外だ。

リザードマンってタフなのかな?


(いや、ルチェも鍛えている感じだ。文武両道、才色兼備、家柄も良い。何か裏があるやもしれんな。)


仲間を疑い始めたら、お終いだぞマドウ。


(仲間と言うには流石に日が浅いが……)


☆☆☆


私達が大神官達の待つ会議室に入ると、大神官が満面の笑みで出迎えてくれた。

そして、その隣にはやはり笑顔の神官長達、ただ神官長頭を始め何人かの神官長は笑ってない。


「聖女レイカ。昨日はありがとうございました。今日も見習い達に声をかけて、くださいますか?」

開口一番、神官長の一人が告げてくる。

確か治療の長だったかな?


「そして、今朝の様な奇跡をお願いします。神聖魔法の使い手は慢性的に足りませんから。」

うーん、私の事を神官製造機と勘違いしているみたいだ。


「確かに、声掛けはお願いしたいですね。」

その隣の神官長も笑みを浮かべながら言う。


「奇跡は話題になりますし、親しみやすい聖女は人気になります。」

この人は広報の長。

いや、布教の長だったかな?


「お待ちください。聖女様には神官見習い達ヘの講義をお願いしたいです。」

こちらは教育の長。


「座学に実務。最低でも2講座は持っていただかないと……」

うーん、この分だと、私が何人か必要だぞ。


「静粛に!」

神官長頭が大きな声を出す。

木槌を渡したら、叩きそうな勢いだ。


「大神官様から、聖女様にお言葉があります。」

それを聞いて神官長達は一瞬で黙る。


「大神官様、お言葉をお願いします。」

神官長頭が促すと、大神官が咳払いをした後、話し始めた。


「今回の啓示の奇跡。誠に素晴らしい事です。ただ神官長達の姿を見ての通り混乱が生じてしまったのも事実です。」

時折、視線が下にゆくのは原稿を読んでいるからだろう。


正直、私はハルピアの大地母神殿の大神官や神官長達は、あまり好きじゃない。

近隣の貴族や大商人の令嬢達が送り込まれている為か()()()啓示を受けているか怪しい人もいるし、実務は平民の部下に丸投げの人もいる。


「……上級神官リリ・アルベロをお預かりしている縁があります……私達大地母神殿は……」


現に大神官は俗に言う[お飾り]で平民出の神官長頭が実権を持っていて、今聞いている[お言葉]も神官長頭の原稿を読んでいるに過ぎない。


「……なので、聖女レイカには大神官代理としてアルベロ伯爵領に魔獣調査に赴いてもらいます。[竜の卵]には別途大地母神殿から指名依頼を出します。」


ん?

なんか話を聞き流しているうちに、面倒くさそうな話になってるぞ。


「聖女レイカ。後で書面で詳細は渡す。頼んだぞ。」

神官長頭が大神官の話を受けて伝えてきた。


「ほとぼりが冷めるまで、体の良い厄介払いっすね」

歯に衣着せない茶殻がハッキリと聞こえる様に呟く。


「そう言うな、茶殻殿。貴殿にも悪くない話だ。帰る迄に治安傭兵隊とは話をつけておく。」

神官長頭の言葉に、茶殻は露骨に舌打ちした。


☆☆☆


「ンだと?バカヤロー!いい度胸だ!」


「決闘なら受けて立ちますよ。」


「止めねえか!糞野郎共!」


私達がレイカルさんと待ち合わせた食堂に行くと、数人の聖戦士が乱闘をしており、それを鎮圧しに来た神官戦士達が突入する所だった。


「どうしたの?」

私が近くの神官見習いさんに声をかけると、神官見習いさんは振り向きもせずに答えた。


「座ってた魔族の女に何人かの聖戦士が声をかけたんだけど、そこから(こじ)れて乱闘が始まった。同性ながらあの魔族はヤバいね。」


「ヤバいのは、あんたよ!バカ!」

近づいてきた下級神官が神官見習いさんの頭を掴んで振り向かせる。


「も、申し訳ございません。聖女様。こいつには私から言って聞かせますから……」


「え!せ!も、も、もももも、」

神官見習いさんが早口言葉みたいに動揺している。


「昨日、手伝ってくれた人だよね?下級神官になったんだ。おめでとう。」

近づいてきた下級神官の顔には覚えがある。


「聖女様のおかげです。昨夜啓示を受けました。」

いつの間にか乱闘は下火になっており、数人の聖戦士が神官戦士に連行されている。

神殿の懲罰房行きだろう。


「聖女様、お食事ですか?」


「うーん、弟子と待ち合わせたんだけど……」

確かにお昼も食べたいけど、先にレイカルさんと合流した方が良さそうだ。


しかし、女性ばかりの大地母神殿で数少ない聖戦士だんせいに声掛けされて乱闘になるなんてレイカルさん恐るべし。


「え!聖女様。弟子を取られてたのですか?」

周りが、ざわつく。


うーん、弟子発言は悪手だったかな?

大地母神の神官戦士は全て女性です。

そして、聖戦士は全て男性です。

大地母神が男性に啓示を与えるのは稀で、男性は神官にはなれません。

なので大地母神に仕える男性は全て聖戦士になります。


私の黒歴史がまた1ページ。

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