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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第16章 西へ

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千客万来

ルチェ視点です。

無料診療日の翌日、[魅惑の伯爵夫人]の[竜の巣]で朝食を摂っているト、来客がありましタ。


朝食はパンとスープとベーコンエッグとサラダ。

銅貨3枚もしますガ、格段の美味しさでス。

[茶殻]さんだけハ、二日酔いで麦粥を食べていましたガ。


「うぅ、頭痛いっす」


「治癒魔法で治さないのですカ?」

私は疑問に思い確認しましタ。


「自業自得っす。仕事でもないのに祈るのは、妖魔神に申し訳ないっす」

どうやラ、自らを罰している様でス。



馬車が止まる音がシ、店に駆け込んで来た至高神の大司教ガ、貨幣の入った重そうな袋をテーブルに置くと冷夏様の足元に平伏しましタ。


「申し訳ございません[聖女]様!此度の事は一部の跳ね返りが勝手に行った事。どうかお許し下さい。」


「ふぇ?何の事?」

冷夏様は不思議そうな顔で大司教を見まス。


「そう、おっしゃらずに!どうか、どうか。」


「?。何の事か分からないよ。だから謝る必要はないよ。」

冷夏様は中断した朝食を再開しましタ。


「ああ、そういう……。無かった事にして下さるのですね。お食事の邪魔をし、申し訳ございませんでした。」

大司教は跳ねる様に飛び起きるト、階段を駆け降り外に出て行きましタ。


「変なの。忘れ物どうしようか?」

重そうな袋を冷夏様が指差しまス。


「あっしが返しておくっす。忘れて良いっす。」


後で茶殻さんかラ、大司教様からの加入祝いといって貰いましタ、金貨が200枚入っていて驚きましタ。


☆☆☆


朝食を終えメンバーや次の仕事について話し合おうとしているト、6人の治安傭兵が入ってきましタ。


「あら〜皆さん〜お食事ですか〜。お店での荒事は困ります〜」


すかさず店主のデポさんが釘を刺しましタ。

デポさんは街の有力者ですシ、冒険者の店ギルドの力もあるはずですので無体は出来ないはずでス。


「荒事ではないですよ、伯爵夫人。まだ朝食出来ます?美味そうな、いい匂いだ。部下達には食事を食わせてやって下さい。ちょっとした事件があって、昨夜から働き詰めでね。」


「パンとスープなら銅貨1枚〜ベーコンエッグとサラダ付きなら〜銅貨3枚です〜」

デポさんが答エ、詳細を尋ねるト、ベーコンエッグサラダ付きでと答えましタ。


「デポさんに伯爵夫人って話かける人初めて見たよ。」

冷夏様が呟かれまス。


「ああ、伯爵夫人。私は結構ですよ。[竜の卵]の茶殻さんに話が聞きたくてね。ああ、支払いは治安傭兵詰め所にまわして下さい。」

小隊長さんらしき人がそう告げるト、[竜の巣]に向かい階段を上がってきましタ。


「私は西部地区治安傭兵のセイロンと申します。茶殻さん、昨夜はどちらに?」

尋ねるセイロンさんニ、茶殻さんは面倒くさそうに返答しまス。


「港の酒場で竜の島からの船乗り相手に飲んだっす。竜の島の芋酒を痛飲した後は、郊外の妖魔神殿に泊まったっす。二日酔いで頭痛いっすよ。」


「それはお気の毒に。でも茶殻さんは妖魔神司祭でしょ?治されたりはしないんで?」


「仕事ではなく、二日酔いで祈るのは不遜っす。」

茶殻さんは再びそう答えましタ。


「それは、すいませんねぇ。1つ確認ですが、何故妖魔神殿に?港からならこの宿の方が近いでしょう?」


「そういえば、そうっすね。ただ酔ってたっすから。」

気怠げに答えてますガ、眼光が鋭くなったのは気のせいでしょうカ。


「そうですか。そういえば茶殻さん。至高神正統派教団ご存知ですか?」


「知ってるっすよ。」


「おや、ご存知で。信者数の少ないマイナー宗派なのですが?本当にご存知で?」


「知ってるっす。頭痛いんで手短にお願いしたいっす。」


セイロンさんは何故カ、茶殻さんを苛立たせる様な話し方をしまス。

セイロンさんの部下の皆さんハ、がっつく様に食事をされてまス。


「ああ、そういえば[早耳のシンデレラ]から情報仕入れてましたよね。いや〜歳を取ると忘れっぽくていけない。」


「いや、昨夜ですがね。その教団の神殿が火事になりまして、おかげで部下共々昨夜から働きづめですよ。」


「それで、あっしに何の用っすか?まさかマイナー宗派を知ってる人全員を訪ねてるっすか?」

火事というところかラ、冷夏様もセイロンさんと茶殻さんを冷静に見ていまス。


「そうじゃありません。ただ教団の生き残りが妖魔司祭の仕業だと騒いでまして、念の為確認してるんですよ。部下に食事をさせたついでです。」


「部下の食事も終わった事ですし、引き上げます。いや〜眠くてしょうがない。」


「お疲れさまっすね。」

茶殻さんが声をかけますガ、二日酔いには見えなくなりましタ。

いつの間にか神聖魔法を使った様でス。


「ああ、茶殻さん最後に1つ。ハルピアに竜叫流の使い手って何人ぐらいいるんですかね?聞けば独特の掛け声らしいですが?」


「さあ?あっしも分からないっす。掛け声については、近日お聞かせしても良いっすよ」


「いや〜それは御遠慮したい。失礼しました。」

セイロンさんとその部下達は店を出てゆきましタ。


「少し自重しろ」

今までずっと黙っていたデグさんがボソリと呟きましタ。


☆☆☆


「レ、レイカ様。急で申し訳ないですが、今日も神殿に来て下さいませんか?」

神殿差し向かえの馬車から降りた上級神官が慌てた様子で話しまス。


「リリさん。どうしたの?何か手に負えない急患?」


「いえ、それなら対処出来るのですが……。」

聞けバ、昨日冷夏様と接した神官見習いの皆さんが50人以上、大地母神の啓示を受けたらしク、神殿は奇跡に湧いているそうでス。


「あら〜、大神殿でも〜1日に数人も出れば〜恩寵深い日だった〜と言われますよ~」


「それにうちの〜レイカルも〜先日啓示を〜受けましたよ〜修行もしてない〜魔族なのに〜」

デポさんの一言に店がざわつきまス。


「聖女様の教えを受ければ啓示が授かるんじゃないか?」

「神聖魔法があれば、食うに困らないぞ。」

階下の視線が一斉にこちらを見まス。

恐いでス。


「みんなちゃんと修行してるから、たまたまじゃないかな?」

冷夏さんは冷静に呟きまス。


「レイカルさんは、うーん、私の弟子だし。」


「あら〜いつの間に弟子入りしたんですか〜それならレイカルを〜下級神官にしてあげて下さい~」

デポさんがいたずらっぽく笑ってまス。


「うーん、みんな今日も神殿まで付き合って。デポさん、レイカルさん借りるよ」


私達[竜の卵]は大地母神殿に向かう事になりましタ。

私の黒歴史がまた1ページ。

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