紹介状
冷夏視点です。
鈴木冷夏 転生者にして、大魔導書との契約者。3つの教団から聖女の称号をもらうも自覚は薄い。
デグ 冷夏を聖女と慕う大地母神の聖戦士。兄の仇を探している。
茶殻≒雫 盗賊にして、竜叫流の剣士。さらに妖魔神の闇司祭。そこに精神憑依体の忍者が取り憑いている欲張りセットな竜人。スラム訛で喋る。
マドウ 冷夏と契約している魔導書。女神によりスマホ内の電子書籍となっている。
うーん。
ハルピアにある[魅惑の伯爵夫人]
踊り場にある指定席、通称[竜の巣]で、私はスマホの計算機アプリを叩いている。
ロバートさんの所でブレナさんと茶渋と別れ、パーティー資金を精算した。
その後大司教から[魅惑の伯爵夫人]にある[竜の卵]の口座に入金があり、それぞれの魔術師ギルドの口座に振り分けの計算をしている。
そう、今の[竜の卵]は3人。
そして珍しく3人共に魔術師ギルドに口座がある。
珍しいというのは、この世界では口座の開設は基本法人だからだ。
私は大地母神殿に[聖女]認定された時。
デグさんは伯爵から下級騎士に任命された時。
褒美の一環として、口座が開設された。
そして茶殻は以前から口座を持っていたらしい。
(あのシーフのいや、忍者の方の口座は裏口座であろうな。)
マドウ、前世の漫画で「スイス銀行の秘密口座に……」とかのシーンがあったけどそんな感じ?
(良くわからない例えだ)
マドウには難しかったか……。
「お茶をどうぞ。サービスです。」
2人分のお茶を持ってきて、私を模したドッペルゲンガーのレイカルさんが目の前に座った。
お茶は銀貨1枚はするから、大盤振る舞いだ。
私を模したと表現したが、レイカルさんは魔族で髪型も違う。
そして何よりスタイルと色気が抜群に違う。
オリジナルのはずな私の方が完全に下位互換だ。
「(記憶をコピーさせてくださいね)」
小声で囁かれたが、同性なのに背中がゾクっとする。
そして一瞬視線を合わせられた。
(冷夏よ、神力48、魔力600、[荷電魔粒子砲]、完全な戦略級の魔獣になったが良いのか?)
いざという時、力になってくれる約束なんだよ、マドウ。
「(ご心配なくマドウ様。この件はデポ様にも秘密です。私と冷夏様だけの秘密。)」
レイカルさんが妖艶に笑う。
階下の男性陣の溜息が聞こえた。
「レイカルと向かい合いでお茶が飲める権利なら銀貨300枚ぐらいでも売れそうですよ。デポ様」
「蒲公英さん〜うちはそういう店では〜ありません〜冒険者の店です〜」
そんな風に過ごしていると、1人のリザードマンが店に入ってきた。
「この店に[竜の卵]が泊まっていると聞きましタ。紹介状もありまス。話をさせてくださイ」
うーん?
誰だろう。
☆☆☆
「私は青の部族のルチェ。見ての通りリザードマンでス。魔術士をしていまス」
確かに魔術士っぽい杖を持っているし、どう見てもリザードマンだ。
だが、このハルピアでは思いあたる知り合いにリザードマンはいない。
「紹介状がありまス。」
そういうと1枚の手紙を差し出してきた。
うーん、和紙だ。
と言う事は[竜の島]からの手紙だろう。私はまるで果たし状の様な手紙を開けて見た。
拝啓
デグ殿、島では色々世話になった。
ブレナ殿がロバート伯の顧問魔術師になる件を聞き、後任の魔術士を推薦する。
聖女殿には貴殿からも口添えをしてもらいたい。
敬具 紀一刀
追伸
既に太守の護衛兼監視が付いているとは思う。
信用に足る人物だが、気をつけられたし。
(どうやらロバート伯が先読みをして動いていた様だな)
さすがロバートさん、一枚上手だよ。
うーん、でも私の一存では何とも言えないなぁ。
(いや、逆にレイカの一存で決まるだろう?)
「私の魔力は6ですガ、杖に魔力を込めてありまス。魔術師ギルドではなく私塾出の魔術士でス」
ルチェさんがアピールしてくる。
うーん、困ったぞ。
「デポさんに相談すれば良いっすよ。そこら辺は冒険者の店のサービスっすから。」
そんな声と共に茶殻が帰ってきた。
デグさんも一緒だ。
「なので、リザードマン殿、今日はお引き取り願うっす。紹介状は誰からのっすか?」
「デグ宛に、一刀さんからだよ。」
「あっし宛じゃないっすか?」
そういえば兄妹弟子の茶殻宛じゃなくデグさん宛だ。
「紹介状は自分が預かる」
デグさんが呟くけど、文字は日本語だったから、デグさんには多分読めない。
(レイカが読むにしろ、チャガラが読むにしろ牽制にはなる。文とは他人に読まれる可能性も考えて書くのだ。メールとは違うのだぞ?)
説教くさいよマドウ。
ルチェさんはテーブルから離れたが、この宿に泊まるらしい。
カウンターで料理を頼んでいた。
リザードマン訛は語尾がカタカナ
スラム訛はスづけ
しかしリザードマン訛は変換が面倒ですので、オススメしません……。
デポは魔族訛ではなく歌う様に喋ると設定変えました。
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