即位式
ブレナ視点です。
王都を望む丘の上の草原に私達[竜の卵]は立っていた。
王都中の鐘が鳴っている。
時間的には新王の即位式が王城で行われている最中だ。
しばらくすればサーシャ女王の即位として発表されるのだろう。
多少の混乱も宰相と国王代行が抑え込むはずだ。
「宰相からの報酬は私の口座に振り込まれていましたよ。」
私が話すとチャガラさんが傭兵隊に報酬を支払った報告をした。
伯爵振り出しの金貨200枚の小切手を渡したらしい。
冷夏さんによる無償の治療で死者の出なかった傭兵達は[聖女冷夏]の崇拝者となった者も多かった。
「そういや、どうやって伯爵と話をつけたんだ?」
チャシブが尋ねるとチャガラさんは笑った。
「簡単っすよ。即位前にサードがサーシャだって宰相に話したら困るっすよね?って訊いただけっす。」
タウアー王子が生きていて、王孫が女の子では貴族達の様相がまるで違くなる。
だが、伯爵が我々を処分する可能性もあったハイリスクな選択だ。
「お前なぁ!」
チャシブが案の定怒る。
「でも、リキタ伯爵は太っ腹っすよ。トータル金貨1000枚までは自由に記入して良いそうっす。金貨700枚の報酬っすよ」
今回の依頼で[竜の卵]は莫大な報酬を得た。
一度落ち着いて今後を考えたいところだ。
確かハルピアでも大司教から報酬が貰えるはず。
意には沿わずとも、新王は立ったのだから。
「リキタ伯爵領にある魔術師ギルドで報酬を山分けするね。お別れするロバートさんの領土までは一緒に行こうよ。」
冷夏さんがそう告げる。
そう、私はチャシブを妻に迎えロバート卿のお抱え魔術師になる。
私達夫婦は冒険者は引退する。
夫婦それぞれ金貨200枚から持って引退出来るのだから恵まれているのだろう。
「そうだ、茶殻。こいつをハルピアのシーフギルドに返しておいてくれ、シーフからも足を洗う。」
銀の印台指輪をチャシブが茶殻さんに渡す。
チャシブの指には私が送った細身の金の指輪が嵌っている。
「いいっすよ。かわりにプロポーズの様子を教えてほしいっす」
「それは私も聞きたいなぁ。」
「な、ちょ、俺に聞くな!」
女性陣が愉しげに騒ぎ始めた。
「デグは旅を続けるのですよね。」
少し離れたデグさんに話かける。
「ああ。冷夏の旅に付き従い、叶うなら復讐を果たす。」
「行こう。追手がかかっては面倒だ」
新リーダーのデグさんが声をかける。
私達は丘を下り歩き始めた。
ブレナと茶渋がアヤメに続いて寿引退(死語)です。
大金や勤め先ができたら冒険者は辞めるのが一般的です。
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私の黒歴史がまた1ページ。




