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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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傭兵宿

ファンテ視点です。

ファンテって誰?

しがない傭兵隊長だ。


王都にある傭兵宿で俺は補充兵を待っていた。

前の仕事での死者は30名中12名。

内訳は戦死が8名に捕虜となり処刑されたのが4名。

仕事としてはチャンスはあったが、ダークエルフ共が詰めを誤り失敗。


だが馬鹿な依頼主のおかげで資金繰りは一息付き、失っていた補給馬車も手に入れた。

知り合った傭兵商のヴラドから訓練済みの兵を10名仕入れたのでそれを待っている。

もちろん、この宿にいる食い詰め者で使えそうなシーフを偵察兵として勧誘するのも忘れてはいない。

そうそう、以前雇っていた兵も5人戻ってきた。

商隊を襲って投降した連中が何故か商隊護衛として王都に着いていたのだ。


30名チョイになれば、ちょっとした仕事は受けられる。

ここジナリー王国は王位継承の争いがあり、北西は妖魔族、北はクリーナ聖王国と国境を接している為、戦の火種には事欠かない。

とはいえ潤沢ではない資金繰りを回す為に、燻る火種を嗅ぎ分けねばならないのだが……。


フードを被り、リザードマン刀を下げた女が宿に入ってきた。

最近ちょくちょく見かける顔は見えないが、スタイルは良い女だ。

ただ2つヤバい事がある。


1つは足運び。

重心移動に隙がない。

どうやら下げている刀は伊達じゃなさそうだ。


もう1つは見える様に[妖魔神]のシンボルを下げている事。

つまり女は闇司祭なのだ。

王都で禁教のシンボルを堂々ぶら下げてるとなりゃ厄介事持ちなのは間違いない。


女に目がない糞野郎共も、流石に誰も声をかけないのは命が惜しいからだ。

そして、その厄介事が真っ直ぐこちらに歩いてくる。


「隊長さん。席は開いてる?」


「席は開いてるが、逢引の約束はした覚えがねぇ。」

だが女は目の前の席に座った。


「エールを、部下達にも。」

女は給仕に銀貨を放る。


「お前の部下じゃねぇ」


「雇っている間は部下でしょ?商談に入りましょう。金さえ払えば伯爵様だって襲う傭兵が入り用なの。」

やはりそうだ。

間違いない、こいつは厄介な女だ。


☆☆☆


女が持って来たのは予想に違わず厄介な仕事だった。


「北に逃げ出した王子を国境を越える前に生死を問わず捕らえて欲しい。有力な伯爵様襲うより簡単でしょ?」


「馬鹿を言うな」

伯爵の話は断れば密告するという脅しだ。

だが、聞けば相手の兵力はこちらと互角。

直ぐに街道を行けば、大回りな間道を行く王子一行を国境間際で待ち伏せ出来るが兵の練度が違う。


「あら?兵数互角なら戦場を設定出来る方が有利でしょうに。」

女は平然と言う。


「相手は腐っても王子の供回り、最低でも正規兵、下手すりゃ下級騎士クラスの兵だ。妖魔神様が[聖女]でもお遣わしにならない限り勝負にならねぇぜ」

俺は皮肉を込めて言い放った。


欲に眩んだとはいえ、商隊護衛の大地母神の[聖女]一行に待ち伏せされて、10名近くの兵を失った事がある。

伯爵襲撃でも直接仕掛けたフローラ隊はフローラ以外は誰も帰らなかった。

聞けば影武者まで用意した[聖女]が待ち構えていたと言う。


「なら大丈夫。[聖女]には1人心あたりがあるわ。」

フードの下で女がニンマリと笑っている。

やはり妖魔神教団も、至高神と同じく薬漬け聖女を開発してやがるのか。


[魔術と金融の街ニューエン]で最近アヘンと狂人茸の新しい組み合わせ比率を裏社会に流した奴がいるらしい。

それが画期的らしく裏社会では狂人茸とアヘンの価格が上がっているぐらいだ。


「ちゃんと調整されてるんだろうな。」

使い捨ての兵器としての[聖女]がいれば兵何人分かの変わりにはなる。


「調整など……、見ればわかるわ」


その後、報酬などを詰め女は席を立った。

金払いは良かったが、それがかえってヤバさを強調していた。

姉妹の会話

「お前、訛なしで喋れるのかよ」

「もちろんっすよ。ギルドの演技指導でならったすからね」

「じゃあ何で普段から喋らないんだよ」

「意識しないと駄目なんすよ。」


私の黒歴史がまた1ページ

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