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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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狡兎死して

グレーテ&マドウ視点です。

[竜の卵]はカメレ宰相からもらった報酬の金貨40枚の半分をパーティー資金に入れ、残りを均等割していた。


あの[狂乱聖女]と戦った代償としては安い気がするが、冒険者稼業とはそういうものなのだろう。

私だけはタダ働きだが、リキタ伯爵が褒賞金を出すと約束してくださった。

後は、ただの侍女に戻るだけ。


だが、王城での会議あたりから流れが怪しくなってきていた。

国教の変更は決まったが、カメレ宰相は新王即位後も続投。

暗殺に加担した至高神関係者数名の処刑が決まり、アンセム伯爵は謹慎になった。


そしてリキタ伯爵様は次期国王の後見人としてサード様が成人するまで国王代行に就任する。


問題は王位を諦めきれない王子だ。

タウアー王子は自らに従う僅かな手勢を連れ王都を出た。

山脈を越え北にあるクリーナ聖王国を目指すのだろう。

至高神聖神派を国教とするクリーナ聖王国で即位し、ジナリー王国に干渉するつもりらしい。


「10日後には[聖女]グレーテ。そなたが戴冠式を執り行いサード王が即位する」

伯爵様が突如部屋に尋ねていらして、そう告げられた。


わたくしが[聖女]?本物の[聖女]、冷夏様は用無しなのですか?」

本来は口答えなどもってのほか。

だが失礼を承知で伯爵様に尋ねる。


「タウアー王子追討の宰相命令が発令された。[竜の卵]はそれを受け王城を出た。」

体の良い厄介払いだ。

大地母神教団の影響力と[本物の聖女]が権力を握る事を恐れたのだろう。


「グレーテ、しばらくは[聖女]を演じてもらうぞ。」

伯爵様は私の肩を軽く叩き部屋を出ていかれた。

私は頭を下げるしかなかった。


☆☆☆


「ギルドの情報では王子一行は北の間道に向かったらしい」

盗賊ギルドで集めてきた情報を茶渋が披露する。

正規の街道は流石に正規兵が要所を抑えていて抜けられない。


「それにしても、本気で追うなら明日にでも、遅くとも3日以内に王都を出なければならないですね。王都からの厄介払いですよ。」

ブレナが大きく溜息をつく。


「逃げるべきだな」

デグが呟いた。


「しかし、宰相命令に正面から背けば国賊ですよ。それに冒険者の店ギルドを通して正式に依頼がされてます。依頼放棄は莫大な違約金が発生します。」


「目論見に俺等の排除が含まれてるだろうな。王子の手勢は約30。追討は俺等は1パーティだけ。つまり5人だぞ」

ブレナと茶渋が2人して悲観論を述べる。


魔術と戦術を駆使すれば、大した戦力差ではない。

冷夏には魔族並みの魔力があり、大魔法だってあるのだから勝算はある。

(また、ぶっ放し系で解決するつもりだなマドウ)


「しゃあないっすね。裏技を使うっすよ。伯爵に必要経費を吹っ掛けるっす」

茶殻が邪悪な笑みを浮かべ、[竜の卵]を眺めた。

経費は伯爵の持つ魔術師ギルドの口座から、ある程度引き出せる様だ。

伯爵なりの罪滅ぼしなのかも知れない。


「何か策があるのか?」

デグの問いに茶殻は黙って頷いた。


「あっしに任せるっす。数が足りないなら雇うっす。」


「『侍雇うだ』ってやつ?」

突然冷夏が口を挟んだ。

うーん、相変わらず冷夏は良くわからない。


「雇うって、そう簡単にいかないだろ?冒険者かき集めても間に合わないぞ」

茶渋が冷静に指摘した。


「冒険者じゃないっす。傭兵っすよ。傭兵宿に見たことある奴らが居たっす。」


「お前、盗賊ギルドに来ないで、傭兵宿に出入りしてるのかよ。」

盗賊ギルドも傭兵宿も大差ない気がするが、何かあるのだろうか。


「あっしは闇司祭っすよ。普通に飲みに行ってるっすよ。」

今度は茶渋が大きな溜息をついた。

私の黒歴史がまた1ページ

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