表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/385

抜き打ちテスト

冷夏視点です。

私の思っていたよりも、[知識と計算の神]の神殿は広かった。

敷地の入り口で馬車を降りてから、案内の神官さんに付いて3人で歩いている。

神殿の横には図書館が併設されており、機械的な印刷技術のない、この世界では貴重な本が多数収蔵されているそうだ。


私は侍女の服装をしてグレーテさんに付き従っている。

チャガラさんは佩刀したままだが、何も言われていない。

魔刀[雫]の認識阻害効果らしいが、大丈夫なのだろうか?

ちなみに私のミニエー式の妖魔筒ライフルはデグさんに預けてある。


そして、上級神官着を着て、薄く化粧までしたグレーテさんは清楚で上品な大地母神の[聖女]にしか見えない。

仕草だけでなく、歩き方まで上品だ。

グレーテさんを見てヒソヒソ話す人も多い。


(冷夏では化粧をしても、こうはならんな)

うるさいぞマドウ。


「大地母神の[聖女]様が御付きになりました。」


案内してくれた神官さんが、そう告げて離れた。

階段状になった観客席のある舞台の様な所に私達は案内されたのだけど、天井は高く、声は響く。

どうやら本来は学問的討論をする場所の様だ。

私達の方に近い観客席にはリキタ伯爵様らを始め複数の貴族らしき人達が数人陣取っている。


「至高神の[聖女]様が御付きになりました。」

舞台の反対側の袖に豪華な高司祭服を着た美人さんと私と同じ様な侍女、そして頭の良さそうな男性高司祭様が入ってきた。

向こう側も同じ様に貴族らしき人が固まって座って居るが、一番目立つのは太っていて派手な服を着た人だ。

やはり美人さんの登場に観客席はざわめく。


しばらくして、ざわつきが収まったのを見てから、観客席の中央に陣取る偉そうな、そして豪華な杖を持った、おじいさんが立ち上がり話始めた。


「これより、選王討議を始める。コート王子殺害の真実について議論し、その結果を持って次の王を決める。」

おじいさんは宣言した。


「お待ち下さい宰相閣下。選王討議とは聞いてませんぞ!」

至高神側の観客席に居た太った偉そうな人が抗議する。


「私も、コート王子が亡くなられた件での話かと。」

リキタ伯爵様も、同じく発言した。

おじいさんは宰相様の様だ。


「アンセム伯、リキタ伯、王国宰相として鑑みるに、我がジナリー王国に暗闘をして、これ以上時間や国力を浪費する余裕はない。」


「この討議にて[聖女]の優劣を判断し、その推薦した候補者を王とする。上級貴族達や、その代理人が討議の裁定者となる。異存あるなら席を立たれよ!」


(どうやら、宰相の方が伯爵らよりも一枚上手だった様だな)

うーん、どうしようマドウ。


(まぁ、なる様になる。冷夏の腹は痛むまい。)

うーん。


「聖女様方、先ずは互いに推薦する王位継承者を教えて頂きたい」


舞台袖から現れた、司会役の[知識と計算]の神の神官さんが促す。

グレーテさんが王孫のサード君の名を告げ、相手側は至高神の高司祭様から耳打ちされた侍女さんがタウアー王子の名を告げた。


だが妙だ。

肝心の相手の聖女様は目が虚ろで焦点があっていない。

そして何かを呟いている。

腰には帯剣しているし、大丈夫なのだろうか?


(剣が見えているのは冷夏だけだ。それに、あの者の神力は17。とっくに危険域に入っている。それを他の薬で抑え込んでいる。正直厄介だぞ冷夏)

むぅ!


☆☆☆


「コート王子を待ち伏せし、妖魔筒にて狙撃したのは大地母神の下級神官との証言がある。」

相手側の高司祭様が証言する。


「それは我が方に濡れ絹を着せる為の方便でしょう。他の供回りが全て斬り伏せられているのに、王子のみ狙撃されているのは不可解にてございます。」

グレーテさんが堂々と反論する。


「それに待ち伏せて狙撃するにも、目撃証言がある屋根から襲撃場所まで250メートルはあります。確かに射線は通っておりますが、妖魔筒の射程は50〜90メートル当たる物ではございません。」


うーん、ここに来る前に、色々調査してきた事をグレーテさんはちゃんと把握している。

このまま、グレーテさんが聖女を演れば良いと思うけど駄目かな?

(リキタ伯爵は、そのつもりかも知れんな。)


シラを切っても無駄ですぞ。ここに来る途中で狙撃用の新型妖魔筒を妖魔より得た事は掴んでいるのだ。聞くに新型の射程は300メートル近いそうですな!」


狭間筒は狙撃も出来るけど、どちらかと言うと拠点防衛に使う銃で、重く長い分取り回しは悪く、発射間隔は遅くなる。

狙撃銃としての運用は疑問かな。


ただ手に入れた狭間筒は火縄式でも燧石式でもなく、魔力を帯び高価な雷晶石発火のオルガ式だったから量産してはいないのだろう。


「そちらこそ、妖魔筒を数丁商人より購入しているではありませんか。王都に居てコート王子の行動を把握しやすかった、そちらにこそ狙撃機会はあったのでは?」


「もちろん、当方も妖魔筒は所有しておりますが、狙撃用ではありません。どちらかと言えば研究用です。」


私が狭間筒について考えている間にも議論は続いている。

うーん、正直不毛な気がする。

観客席では、欠伸を噛み締めながら見ている人もいるし……。


こちらの主張は暗殺は待ち伏せての斬り込みで、コート王子の行動を把握しやすい者の犯行。

狙撃はあくまで偽装の一環。

つまり犯人は貴方がたと述べている


対して相手の主張は襲撃は足留めで狙撃こそが本筋。

遠く屋根の上から狙撃出来るのは狭間筒を持つ私達のみ。

だから犯人はそちらでしょ?

と主張している。

うーん、どちらも状況証拠でしかも根拠は弱いから、決着はつかないかな。


そんな感じに考えていると、相手の高司祭様が新たな証拠を提出してきた。


「検死した[知識と計算の神]の神官より、この様に鉛弾が2つ提出されておりますぞ!」


1つはひしゃげ、もう1つは歪んだ鉛弾を高司祭様は示した。


うーん、ちょとおかしい。

私は思わず口を挟んだ。

識字率が低いこの世界では本は貴重品です。

本は手書きで書き写すか魔術の[魔導転写]で転写するかしかありません。

転生者により、紙は普及しているのですが。


前にも書いた気がしますが、現在も紙のマイナー本は貴重品となりつつあります。

デジタル本は便利ですが、思想統制やマイノリティーによる言論統制でいきなりアクセス不可や内容変更ありそうで恐いんですよね。

映像作品なんかは配信停止で一発アウト。

防ぐには円盤買うしか(笑)


肌が黒いエルフが邪悪なのは許せない。「ダークエルフの命は大事」運動とか起こってダークエルフが出てくる本が読めなくなるとかが起きたら悲しくなりますよね。

隣国では何故か黄色いクマ主演のアニメ作品が見れない事実もありますし(笑)


私の黒歴史がまた1ページ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ