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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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襲撃側

ファンテ☆フローラ☆ウルガ視点です。

聖女達を追い抜き、先行して待つこと2日。

ターゲット一行が襲撃ポイントに近づいていると斥候から連絡が入る。

元から生き残った部下3人を十人長として、[臆病者]ヴラドの集めた傭兵達をつけた。


ヴラドは変わった男で食い詰めた冒険者を安く買い集めては訓練し、傭兵として売りに出している。

儲かるのか尋ねたところ、そんなに儲からないが、食いっぱぐれもないそうだ。


「ファンテ隊長、どうします?」


ヴラドから唯一派遣されてきた副官が尋ねてくる。


「俺も出る。お前さんに頼みたいのはコイツだ」

俺は砂時計と角笛を渡した。


「俺が出たら、この砂時計を、ひっくり返してくれ。そして砂が尽きたら角笛を吹け。それが退却の合図だ。」

角笛で退却する事と合流地点は既に打ち合わせてある。

砂時計は四半刻の更に半分以下で砂が全て落ちる代物だ。


「そんなに早く退却するんで?」


「相手は伯爵様の護衛で兵力は倍以上。傭兵の時間稼ぎとしては、砂が落ちるまででも充分だ。後はあの馬鹿とダークエルフの狙撃手がなんとかするさ」

鎧の肩紐を確認しながら話す。


冒険者上がりとはいえ、傭兵が初陣を生き残るのは難しい。

何人生き残れるか?

微妙なところだ。


「金なら、既に手形を割り引いて現金にしてある。お前さんの雇い主のヴラドも、そうしているだろうさ。知らぬはヤバい手形を掴んだ闇商人と世間知らずの馬鹿な雇い主だけだ。」


「出るぞ!3人は俺に付いてこい」

俺は敵に向かい駆け出した。


☆☆☆


「敵襲!」

谷間の森を抜ける街道で予定通り傭兵隊が仕掛けた。

リキタ伯爵一行の馬車が止まる。


約300メートル離れた岩場にはダークエルフの狙撃班が陣取り、馬車からターゲットが出れば狙撃する事になっている。


最低でも1人、出来れば2人仕留められたら上出来。

伯爵、王孫、聖女は馬車移動だろうから、馬車に火をかけるなりして、ターゲットを炙り出さねばならない。


教団兵達は私の護衛を残し、馬車の直掩の足留めの為に前進した。

魔導司祭の私は詠唱に入る。


[火球](使1残9)

[耐火](使1残5)


馬車に火球が命中するが無傷。

護衛の魔術師の魔法で防がれた。

冒険者か?

詠唱からの発動が、この私よりも早い。


[竜加速](使1残5)


歩兵が2人魔術師を封じる為に前進するが小柄な女シーフに阻まれ近づけない。

あの素早さは竜人かも知れない。


[鼓舞](使1残2)


雄叫びがあがった。

禿頭の戦斧を持った戦士が前進して相対していた兵をなぎ倒し、突貫してくる。


[高速詠唱][光の矢][火球](使3残6)


私は咄嗟に目標を替え禿頭の戦士を殺す事にし、魔術を叩き込む。


契約発動[魔術無効]


光の矢が霧散し、爆炎を上げた火球を突っ切って戦士が現れた。

何故?

魔術が効かない。

勇者でもあるまいに!


「フローラ様、ここは私が引き受けます。」

護衛の教団兵が割って入ってくれたが、時間の問題だろう。

どこからか角笛の音がする。


長く響く乾いた音がした。

元々聖女は外にいたらしい。


[高速詠唱][発音弾][牙召喚](使3残3)


私はオーガの牙を地面に放り殿しんがりとした後、総員退却命令を出すと戦場を後にした。


手駒の教団兵を、ほぼ失うのは手痛いが最低限の作戦遂行が出来たはずだ。


☆☆☆


「[傭兵隊が足留めに入りました。]」

ウルガ族の護衛が射手に戦況説明を始めた。

「[フローラ隊が仕掛けていますが、馬車は停止しただけで、誰も出てきません]」

観測手たる私は目標の様子を報告する。


我々は人間達にウルガ族と名乗ってはいたが、実際は違う。

私と射手はオルガ族一員で、特に射手は新兵器を任されるエリート。


名ばかりオルガで汚れ仕事に駆り出される私では里に居たら話す事も出来ない。

私が今回の新兵器の運用試験任務に選ばれたのは単に人間語が堪能だからだ。

まぁそれでも、大半が貧困に喘ぐウルガ族よりは大分マシな生活をしている。


「[馬車に動きはありませんが、騎乗した大地母神官が2名馬車の近くにいます!]」

護衛が叫んだ。


ツイている。

馬車は安全だが乗り心地が悪い為、貴族には騎乗して移動する者がいると知っている。


「[多分、ターゲットの聖女です]」

私は射手に説明する。

護衛のウルガも肯定した。


「どちらが聖女だ。」

射手に尋ねられる。


新兵器の狭間筒は、銃口を大きくして弾も、火薬量も増やし、銃身を長くして射程距離を長くした物。

小高い岩の上からなら、有効射程が300メートルはある。

通常の妖魔筒の有効射程が90メートル程度なので恐ろしい武器になるはずだ。


反面携行性は低く固定して使う。

1度発射すると弾込めに時間を要する為、今回の作戦では回収が無理なら破棄する予定だった。


しかし困った。

私は聖女の顔を知らない。

と言うか、聖女の顔を知るのは傭兵隊の隊長と古参兵ぐらいだ。

聖印の紐もハッキリ見えない。

影武者を用意しているとは、やはり聖女だけあり用心深い。


片方は立派な白馬に乗り、リザードマン刀を下げている。

もう片方は騎乗大蜥蜴に乗りオルガ式の妖魔筒を構えている。

聖女は妖魔筒を使うとも、竜の島と縁深いとも聞く。


「[一目瞭然だろう。白馬に跨り威風堂々としているのが聖女だ。もう一人は見るからに貧弱だ]」

ウルガが指摘する。


確かにそうだ。

私は事前情報に惑わされていた。

その人物が醸し出す雰囲気を見れば、どのくらいの人物か分かる。

威風堂々としている方が聖女に違いない。


「[白馬の方です!]」

答えと同時に射手が発砲する。


狙い違わず弾は胸を貫通し、聖女は落馬した。

近くに居たシーフが駆け寄っている。


フラワーから、総員退却の合図が出て後は離脱するだけだと思っていたのだけど……。

某名作以来「爪を噛む方が本物」と言うネタがありますが(笑)

計画の杜撰さが現れてますね。


私の黒歴史がまた1ページ。


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