ある補給兵の末路
ファンテ視点です。(誰?)
少し時間は前後します。
「よう、スクロ。景気良さそうだな。」
ノウルの街のカジノで、酒を舐めながら、サイコロを転がしている男の肩を叩き声をかけた。
「ㇷ、ファンテの旦那!生きていたんですか!」
男は、スクロは飛び上がらんばかりに驚く。
「俺がアンデットに見えるか?」
俺が軽口を叩きながら笑うと、スクロは首を横に振る。
額から汚え汗が飛び散った。
全身からも冷汗が吹き出しているらしく臭え。
まぁ無理も無い。
こいつは俺の傭兵隊が負ける事を見越して、補給馬車が燃える前に部隊の金を持ち逃げした奴だ。
確かに、こいつの読み通り冒険者達の急襲を受け、俺の傭兵隊は壊滅した。
半分以上が死ぬか投降し、逃げた奴もこの街まで辿り着いたのは数人だ。
斥候兼補給兵としては間違いなく有能だろう。
「要件はわかるな。お前が預かってくれた部隊の金を返して欲しいんだ。」
俺は、わざとゆっくり穏やかに話す。
シーフギルドの賭場で騒ぎ起こす程、俺はイカれちゃいない。
「も、もちろんでさ。旦那、俺はただ預かっていただけで……」
ベラベラ喋るスクロの肩を抱く様にして席を立つ。
こういったトラブルには慣れているらしく、賭場の用心棒が裏口の方に案内してくれた。
「た、助けてください。旦那!俺は……」
スクロの臭い息に耐えられなくなった俺は奴の鳩尾を軽く拳で小突いた。
「金さえ返せば殺しゃしねえ。それに旦那じゃなく隊長って呼べ。傭兵稼業をを廃業した覚えはないからな。」
激しく咳き込むスクロを連れて、俺は賭場を後にした。
☆☆☆
「銀貨2000枚。耳を揃えて返して貰おうか。」
賭場近くの酒場兼宿屋の隅で3人の部下とスクロを詰めていた。
酒場兼宿屋とは言っても[冒険者の店ギルド]に入っている様な真っ当な店ではなく、低級娼婦とその客が一刻単位で借りる様な店だ。
ここにいるのは、傭兵、下級娼婦、盗賊、暗殺者、闇奴隷商、闇司祭、魔族のたぐいだけ。
多少の揉め事ならスルーされるし、真っ当なギルドでは扱わない様な依頼の斡旋もしてくれる。
もちろん、全て自己責任ではあるが。
「ま゙っ゙、待ってぐれ!俺が持ち逃……預かっだのは銀貨200枚だ。ぞしで180枚は返しだ。」
スクロは袋叩きにあった為か喋りにくそうに、ぐももった声で喋る。
「残り1820枚をどう返す?」
指を鳴らしながら、部下が尋ねている。
「スクロよぅ、誠意が足りないんじゃないか?」
「もう少し、撫でなきゃ駄目か?」
部下達がスクロを撫で始める。
その様子を俺は小便の様なエールを舐めながら、黙って眺めていた。
売り払う予定だから、治らない様な怪我はさせるなと、伝えてはいるが不幸な事故は起こり得る。
そろそろ、闇奴隷商の斡旋を頼むかと思っていると、宿の主人の方から声をかけてきた。
「傭兵隊長さんよ。依頼が来てる。依頼人に会うなら紹介する。後、商品にするつもりなら頃合いだ。買い取り金額には見栄えも関係あるからな。」
俺が闇奴隷商の斡旋を頼み、依頼人に会うと伝えると、冒険者の店に行く様言われて木札を渡された。
スクロには銀貨200枚という、まずまずの値段がついた。
奴隷商は魔族だったので、魔獣の素材と言ったとこだろう。
スクロは264話に出てきた男です。
☆☆☆
某魔族と某魔獣の会話
「魔獣の素材ってスケルトンウォリアーとかですか?」
「違います〜スケルトンウォリアーは〜戦闘プログラムを組み込むので〜素材は〜もっと安価ですみます〜元村人でも〜立派な戦士にできます〜プログラム次第ですが〜」
「なるほど、スケルトンウォリアーの強さにバラツキあるのは素材ではなく、プログラムの良し悪しなんですね。」
「アップデートしてない〜スケルトンウォリアーは弱いです〜。研究所の警備用が弱すぎだとポンコツ(仮名)さんが〜怒られてました〜」
「スカウトやシーフが必要な素体は〜たぶんですが〜インビジブルスカウトですかね〜」
「あの洗脳と人体の透明化は出来たけど、裸での運用に難があって実用化してなかったやつですか?」
「そういえば最近〜装備の光学迷彩魔術〜研究してましたね~」
「あの……でも、視覚に頼らない犬とかには意味薄いですよね?手間やコスト考えると普通に密偵雇った方が……同盟国の竜の島には忍者もいますし、やっぱり、魔族の開発する魔獣って……」
「〜、〜ペティの〜オムレツあがった〜みたいですよ~」
「………………」
私の黒歴史がまた1ページ。




