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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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食事風景

視点ブレナ、視点デグ


「昼間はすいませんでしたね、旦那方」

エールを運んで来た主人が頭を下げる。


「何かあったんふか?」


「食いながら喋るな」

チャシブが眼の前のチャガラさんを注意した。


このテーブルには私とチャシブ、そしてチャガラさんが着いている。

デグさんは、このソロス村の産まれで村長の身内だったので、村長主催の夕食会に呼ばれた。


逆にチャガラさんは従者扱いなので、貧相な食事に嫌気をさして出てきたそうだ。

有料でも、ちゃんとした食事がしたいのは旅の保存食の粗末さを知る冒険者や兵士なら普通の事だ。


聞けば村長は吝嗇ケチらしい。

しかも、先王が亡くなりリキタ伯爵が旗手を鮮明にすると、至高神から、大地母神に宗旨替えしたそうだ。


客観的に見れば合理的な人物でも、情を重んじる小さな村社会では異端になる。

デグさんら兄弟を事実上追放したことも悪評に拍車をかけている様だ。


「で、改めて何があったんすか?」

食事を終えたチャガラさんが尋ねてくる。


「赤子を抱えた薬草取りの娘が、デグ相手に大騒ぎしたんだよ。」

チャシブが、やれやれといった口調で説明する。


「デグさんの子供っすか?」


「違う。デグの死んだ兄貴のジグの子供らしい。村を追われる前に付き合ってたんだと。」


「行きずりの冒険者と関係して、傷つくのは女っすからねぇ~」

何故か私の方を見てチャガラさんが言うと、チャシブも一瞬鋭い視線を向けてくる。


思い当たる節があるので、嫌な汗が出てくる。

竜の島の件はタイミングがなく、話していない。

チャシブは知っているのだろうか?


「あの赤子。リグとか言ったな。薬草取り1人で育てるのは難しいだろうな。」


「そうっすね。先代勇者の時みたいに、村長あたりが引き取るんじゃないっすかね。街だと、あっしらみたいに神殿に捨てられそうっすけどね。」

仄暗い過去の話もチャガラさんが話すと何故か暗く感じられない。


「で、母親の方は薬草取り兼、村の公娼か?冒険者には向いてなさそうだからな。」

チャシブは肩をすくめる。


デグさんの祖母は、この店で働いていたが、この店の血縁ではなかったらしい。

こういう街道沿いにある村が他所者から自分達の娘を守る為に、風紀を乱さない範囲で公娼を黙認する事はある。


「今までは『ジグが帰ってくるまでは』とアンナも意地を張ってましたが、近日そうなるでしょうな。」

どこから聞いていたか分からないが、エールのお替りを運んで来た主人が最後にいい添えた。


☆☆☆


リキタ伯爵様とサード様、そして村長とその長男がメインテーブルに付き食事をしている。

食事の内容は村では信じられない程の御馳走だが、貴族様にとってはどうなのか分からない。


自分のテーブルにはレイカ様と自分、叔母の下級神官エッタと従姉妹の神官見習いリッタが座っている。

自分も一応は聖戦士の資格を取っていたので、このテーブルは大地母神テーブルなのだろう。


大地母神の地位や資格は聖印に通す紐の色や本数でわかる。


上級神官で聖女の称号を持つレイカ様は上級神官の濃い緑と聖女の京緋色の紐を通しているし、叔母のエッタは下級神官の薄緑の紐。


神官見習いだが、薬師の資格を取ったリッタは見習いの茶色紐と薬師の紫紐を通している。

ちなみに自分は聖戦士や神官戦士が付ける白紐だ。


大地母神は男は滅多に啓示を受けず、例え啓示を受けても、神官にはなれずに聖戦士にしかなれない。

何故そうなのかは、大地母神のみぞ知る事柄らしく、そういうものと皆納得している。


「デグ殿。伯爵様が、お呼びですぞ」

伯爵の侍従が自分を呼びにきた。


何の用だろう?

兄者は[平民にとって、貴族はオーガよりも恐ろしい][オーガよりも簡単に平民を殺す]と言っていた。

無礼の無い様に、慎重にしなくてはならない。


「デグは、この村の産まれだったな」

食事の手を止め伯爵が語りかけてくる。


「はい」

ひざまずき、頭を垂れて答える。


「かつて、兄と共に聖女殿を助けたと聞いているが真か?」


「はい、レイカ様が道に迷われていましたので、お助けしました」

ただ自分は兄者の指示に従っただけではあるが。


「そうか」

伯爵様が剣を抜いた。

何か失敗してしまったのだろうか?

何かの戯れと信じたい。

逃げ出そうと思えば逃げられるが、レイカ様や村に迷惑がかかる。

肩に剣を乗せられた。


「聖戦士デグ、そなたを下級騎士に任じる。領地はなしだが、毎月銀貨20枚を与える。聖女レイカを護れ。」

あ然とした。


侍従が下級騎士章と、公文書を持ってきた。

どうやら準備されていたらしい。

皆が拍手をしている。


「推薦者は子爵ばかむすこだが、グレーテを雇い入れたり、人を見る目はあるらしい。」

伯爵は笑っている。


村長が一瞬、厳しい顔をしたが気にはしない事にした。

自分は[ソロス村のデグ]じゃないのだから。

ジナリー王国では爵位は複数持てます。

その場合最高位を当主が名乗り、他はその血族に与える事が通常です。


公爵 王家の血族

   大公爵は臨時爵位

侯爵 王家以外の貴族の最高位

伯爵 これ以上が上級貴族 

   辺境伯爵は自称の後付の場合もある。

子爵 中級貴族

上級貴族の子弟で持っているのは後継者の場合がほとんど。成り上がりの事実上最高位

男爵 中級貴族。

成り上がりの商人がもらうのはこのあたり。

士爵、騎士

下級貴族

1代限り普通。世襲の場合は形式上は王家の承認が必要


下級騎士

1代限り、中級貴族以上に任命権がある。形式上は下級貴族だがピンキリ


私の黒歴史がまた1ページ

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