口頭試問
冷夏視点です。
ミモザ村の件で何度か来た事があるけど、リキタ城はロバートさんのノウル城よりも広くて豪華だよ。
ノウル城が実戦的な砦の発展系だとすれば、リキタ城はそれに加え権威を示す意味合いもあり築城されていると思う。
もちろん防衛機能は整っている。
この世界は妖魔も魔獣もアンデットもいる物騒な世界だからね。
(この辺りだと、人間の一番の敵は人間だがな)
秘密結社の司令みたいな事いうね、マドウ。
(?)
「聖女様、こちらになります」
私とチャガラはお城でも、奥まった塔に案内された。
聖女様と呼ばれるのには全く慣れない。
昨夜上級神官として、与えられた部屋に居た時、大神官様達が訪ねてきて聖女を示す京緋色の紐をもらった。
別に儀式とかは、なにもない。
そういえば普段居ない時でも部屋が神官見習いさんとかにより、きちんと掃除されている。
これは掃除も修行という禅宗みたいな考えからきているらしい。
私はその点はパスしたから、ちょっと申し訳なく思っている。
(レイカを見て、あの死神も流石にマズいと思ったのだろうな)
何か言った?マドウ。
チャガラは大地母神の下級神官着を着て私の付き人を演じている。
「祈りを聴かれたら一発でバレるっすね」
「そうかな?リザードマン語で祈れば分かる人少ないよ。」
「!?、そうっすね。流石聖女様っす」
うーん、馬鹿にされてるのかなぁ?
そんなかんなで、私達は塔の最上階の扉の前に付いた。
☆☆☆
部屋の中は思っていたより質素で、王族の部屋という感じはしなかった。
どちらかと言うと偉い人を幽閉している感じだ。
(実際それに近いのだろう。王族という飾り物を大切に保管している部屋だな)
うーん、面倒だぞマドウ。
サード君は部屋に入った私達を見て、読んでいた本から目を上げた。
お付きの侍女は4人。
そのうち3人は私達と入れ違いに部屋を出てゆく。
その中にグレーテさんもいた。
早速配属されたのだろうけど、大変だ。
「貴女が聖女様?」
私が一応肯定すると、本を閉じて脇に置く。
「隣の闇司祭に気づいているかい?」
驚いた。
綿密に調査しているのか、サード君の天恵なのかは分からないが、6才には思えない。
6才って、前世なら小学一年生だよ?
「火蜥蜴のチャガラっす。レイカとは[竜の卵]の仲間っすから、大丈夫っすよ。調べてたっすか?」
「これだけ妖魔の臭いがすれば、調べずとも簡単に分かるかな。そして聖女様は古い本の匂いがするよ。」
ん?
古い本の匂いって、マドウの事?
(ある種の天恵持ちの様だな)
でも古い本って、なんか加齢臭みたいで心外だぞ、マドウ。
「サーシャ様は犬みたいに鼻が効くっすね。」
「ちょっと、チャガラ!それは失礼だし、言っちゃ駄目だよ」
私は慌てて止めたが、侍女さんは怒った顔をして私達を睨んだ。
「犬か……。違いないね。だがサーシャ呼びは今しばらくは止めて欲しいかな。」
自虐的にサード君は笑い、怒る侍女さんを手で宥めた。
「呼んだのは他でもない。聖女様の実力が見たかったんだ。貴族達の中には先王の仇討ちを望む者もいる。だが相手は魔王なのだ。並の者では敵わないからね。」
魔王討伐。
前世の物語では魔王もインフレ気味で良く倒されてたけど、実際は難しい。
それに魔王は良い子だし戦いたくはないなぁ。
「うーん、将棋でなら魔王とは何度か対戦して五分五分だけど……」
ハルピアでルールを説明しながら1回、駒落ちで手加減しながら数回戦った。
時間とタイミング会えばまた対局したいけど、難しいかな。
「魔王と会った事があるのかい?」
「マジっすか?竜とも対等に会話もしてるし、冷夏がマジ聖女に思えるっすよ」
サード君とチャガラに驚かれ私が逆に驚いた。
「竜とも会っているのか。なるほど聖女様だね。人は見掛けによらないな。」
うーん、さり気なくディスられてる。
でも、こちらも黙っては従わないぞ。
「サード君の私に求める条件が魔王討伐なら、私は降りるよ。無駄だからね。」
はっきりと告げる。
「貴族達が望み、私が命じてもかい?」
「無駄に戦いを求める人を王位に付けない方が良い事ぐらいは私にもわかるよ。重臣が望んだとしても、それを止められない人が王位に就いては困る。」
サード君は笑った。
「リキタ伯は人選を誤った様だね。本物の聖女ではなく、従順で有能な神官を選べば良かったのに。」
そして改まった感じで尋ねられた。
「聖女様。名前をお聞きしたい。」
私は鈴木冷夏と名乗った。
どうやら、サード君的には合格らしいけど……。
本物の聖女かは疑問だぞ。
この世界の城や砦は空飛ぶ敵には無力だったりしますが、あまり空を飛んでくる敵が多くない事もあり機能しています。
私の黒歴史がまた1ページ。




