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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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キングメーカー

ブレナ視点です。


「嬢ちゃん、ブレナ。呼び出して悪いな。」

ロバート伯爵は、まるで酒場にでも呼び出したかの様に話かけてきた。

先に呼ばれていたデグさんは侍女に連れられ退出していく。


「湯を使わせて、適当に服を着せてくれ。パーティに間に合うようにな。」

侍女は頭を下げたが、デグさんに合う服を探すのは大変だろう。


「アヤメは結婚したんだってな。相手は竜の息子だろ?親父さんは太守になったらしいし、玉の輿だな。」


「うーん、アヤメが望んで嫁いだ訳じゃないから、玉の輿かは微妙だなぁ。」

レイカさんが答える。


「そうか?アヤメ嬢ちゃんは流されて生きるタイプにゃ見えなかった。きっかけは突然でも上手くやると思うがな。」

ロバートさんの洞察力は鋭い。

天啓なのか、冒険者としての経験なのか分からないが、私では足元にも及ばない。


「そうそう、ロバートさん。ロバートさんは次の王様の話知ってるよね?」


「あぁ、勿論だ。嬢ちゃんに推してもらいたい候補がいるから呼んだのさ。俺らの推す候補にゃ聖女が居なかったからな。」

2人が政治的な確信に迫る話を当たり前に始めた。


「ん?候補それぞれに[聖女]がいるの?あ、そうか、[聖女]は言った者勝ちだったっけ?」

レイカさんの教団への皮肉にも取れる表現にロバートさんは苦笑する。


「本来、聖女は、そんなに安くはないんだが……ジナリーでは、まぁそんな感じだ。」

つまり有力候補3人に対して聖女も3人。

血を見ずに収まれば良いが、下手をすれば内戦になる。


「ロバートさんの推し候補って、どんな人?」


「サードっていう6歳のガキだ。先の王太子の1人息子。先王の孫だ。」

ロバートさんに候補に対する敬意は見られない。

やはり王を作る側の人間なのだろう。


「うーん、それって実権はロバートさんが握るパターン?」


「まさか、俺は田舎の伯爵で充分だ。」

ロバートさんは大笑いした。

私は案外良い黒幕になりそうな気もしていたが。



その後のロバートさんからは、リキタ伯爵領にサード王孫が滞在する事。

首謀者は、そのリキタ伯爵な事。

目的は先王が進めた至高神の国教化を元の大地母神信仰に戻す事などが説明された。


元々ジナリー王国は農業国で、大地母神派の国だったが先王が即位するにあたり、至高神教団聖神派の力を借りた為、急激な至高神聖神派の国教化が進められていた。


ただ、その弊害は大きかった。

わかりやすい所では、中央の至高神派貴族と地方の大地母神派貴族の分断。

聖王国派諸国並びに、隣国で貿易相手の妖魔族、魔族との関係悪化などがある。


そして、ついにジナリー王は聖神派諸国の一員として魔王と会戦に及び、国力と兵を損ない、王自らも戦死した。


「次の新王までも、至高神派に選ばれたら、嬢ちゃんの学ぶリキタ大地母神殿まで危ういだろう?力を貸してくれよ」


「うーん、ロバートさんは口が上手いからなぁ~。でも、私も大地母神官の端くれだし、取り敢えずは考えて見るよ。」


「嬢ちゃんは既に端くれじゃないんだがな。まぁ堅い話は以上だ。パーティで飯でも食って行ってくれ。」

チャシブとチャガラさんも呼ばれて、その後パーティが開かれた。


パーティ会場ではロバート伯爵に直ぐにではなくとも仕官しないか?と勧められたが即答は避けた。

私の黒歴史がまた1ページ。

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