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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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歩く、笑う

視点、雫≒チャガラ

2つの視点が混ざり、読みづらいのはご容赦下さい。


商隊がノウル伯爵領に入るやいなや、[竜の卵]は城に呼ばれた。

私以外のメンバーはノウル伯ロバートと面識があるらしい。


妖魔の村からノウル伯領までは天候も含め順調だったが、雰囲気は異様だった。

まず投降してきた傭兵の残党が「飯さえ食えれば無給で良い」と商隊についてきたし、他の冒険者達は皆、冷夏を[聖女]と崇めている。


因みに[狂戦士]の遺体は見つからなかった。

ただ、傭兵、冒険者共に、いくつかの死体は見つかってないので、ゴブリンに食べられたのだろう。

僅かな可能性としてはアンデット化して立ち去ったかも知れないが。



「チャガラ〜、[聖女]なんて私のガラじゃないよぅ〜」

城に向かう馬車で冷夏が嘆いている。


「ちょっと余分に神聖魔法使えるだけだからさぁ〜」


「[勇者]も[聖女]も人格で選ばれないっす。たとえ人格的にポンコツでも[勇者の剣]と契約したら[勇者]っすから」


それは聖女もそうだ。

ただ神力48と転生者らしい鷹揚。

これで[聖女]でないなら、2度と[聖女]は現れまい。

御館様から冷夏を殺せと言われたなら、私は里を抜けるかも知れない。


「それって、暗にポンコツって言ってる?」

どうも私は言葉を選べないらしい。


「あっしには肯定も否定も出来ないっす。」

私は笑った。


「チャガラ〜。そこは否定してよ〜。」

私は最近、本気で笑う事を覚えた。




馬車が城に到着した。

扉が開き、私と冷夏は馬車を降りる。

先に降りたブレナと茶渋姉が前を歩いていた。

ブレナの正魔術師の正装は違和感ないが、茶渋姉の借物の正装は違和感しかない。


そして、私の姿を見て城内はざわついている。


「うーん、茶殻。やっぱり衣装借りた方が良かったんじゃない?」


「あっしは一応は妖魔神の司祭っすよ。儀礼用の司祭服は当然っす。」


「でも、確かジナリー王国は妖魔神って禁教だったと思うよ?」


「小さな事は気にしないっすよ。」

私は堂々と冷夏をエスコートして歩いた。

ちなみにデグは一足先に城に入っている。

ロバート伯に先に呼ばれていた様だ。


そして、ブレナと冷夏は直ぐに伯爵に呼ばれて、奥に入ってゆく。

控えの間に私と茶渋姉は残された。


「なぁ茶殻。」


「なんすか?」

茶渋姉が話かけてきたが、薄っすらと殺気を纏っている。


「お前は誰だ?」


「茶渋姉、ボケたっすか?」

正面から尋ねられると、中々返答に困る。

なので躱す返答を返す。


「俺の知っている茶殻は、もっと痩せていて、失言癖はあったが、絶えず人の顔色をうかがう、気弱な奴だった。人買い神殿で半殺しにされてから、妖魔神信仰も、ひた隠ししていた。」

確かにそうだった。

そして後に師匠が滅ぼす、妖魔神カルトに熱心に通っていた。


「少なくとも、公の場で妖魔神信仰を明かし、豪胆に振る舞う奴じゃなかった。」

真剣な目をしている。

武器も隠し持ってるだろう。

さて、どうするか。

その気はないが、万が一に備え隠し武器の小苦無ショウクナイを抜ける様にした。


☆☆☆


いや、どうするもない。

正直に話して、姉に殺されるなら是非もなし。


「茶渋姉。あっしは、あっしすよ。ただ少し大胆になっただけっす。身体は師匠に飯を喰わせてもらったからっす。」


「あっしは人混みが苦手っした。周りを気にして異様に疲れたっす。シノギのスリとか全然駄目だったの知ってるっすよね?」

それで良く茶蕎麦姉と茶渋姉に世話になった。


飯も喰わせてもらったし、上納金を肩代わりしてもらった。

2人がいなければ、死んでいるか、良くても今頃低級娼婦の夜鷹になっていただろう。


「でも、ある時、道さえも真っ直ぐ歩けない自分が堪らなく嫌になったっす。それで、あっしは一念発起して葦原大通りを端から端まで真っ直ぐ歩いたっすよ。」

当時のあっしには、人混みを譲らずに真っ直ぐ歩くだけでも勇気のいることだった。


「それで?」


「そしたら、道が開けたっす。」


端折はしょり過ぎだ。意味わかんねえ」


確かあの時は3度人に、ぶつかった。

世間には人が避けるのを当然と思っている奴と心身を削って避けている奴がいると分かった。

そして、あっしは意地を通した。


あっしは3度目に、ぶつかった奴らと大喧嘩になり、刀を抜いた3人全員を殺した。もちろん自分も死にかけた。

担ぎ込まれた大地母神殿で気がつくと、当たり前の様に[雫]の存在が意識の(かたわ)らにあった。


そして担ぎ込んでくれた師匠と協力して所属していたカルトを壊滅し、師匠が師匠になってくれて今に至る。


「チャシブ様、チャガラ様、伯爵がお呼びです。」

茶渋姉との話は中断せざる得なくなった。


ふと、我にかえった。

茶渋姉と何を話していたかは覚えてないが、まぁ、時間潰しのどうでも良い事だろう。

人間の世界では[妖魔神]信仰は禁止されている国が多いです。

ただ取り締まりは領主の裁量で、黙認している領主から、絶対火炙りにする領主までいます。

法治より人治が強いのです。


私の黒歴史がまた1ページ。

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