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魔導書(電子書籍版)と契約し旅にでる  作者: 弓納持水面
第15章 王位と聖女

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聞き耳

ある補給兵視点

「野郎共!小休止だ!一刻で出発する。遅れるな!」

隊長の指示が飛ぶ。


ハルピアでの補給が遅れ、雨で道が泥濘(ぬかる)み古い補給馬車の移動が滞った。

ハマった馬車を押したりした為、大半の兵は泥だらけだ。

だが補給馬車を置いていけるはずもなく、目標に半日以上遅れ妖魔の村に入った。


一刻の小休止。

水、食料の補給も、そこそこに村を出なくではならない。

本来なら数日は村に泊まり英気を養いたいが正直、隊には金がない。

金が無ければ、泥と汗にまみれた酷い臭いのする服も体も洗えないし、酒も飲めない。

今回の作戦を成功しない限り、部隊に明日は来ない。


「十人長集まれ。」

隊長の指示で兵長達が集まる。


隊長は大半の傭兵隊長と同じく正規兵上がりで、その頃からの名残りか十人単位で兵を管理している。

兵員総数は34名。

俺は文字が読め簡単な計算も出来たので、3名の斥候兼補給兵に配置されている。


だからこそ、隊に金がない事を把握しているし、他の一般兵が居ない隙に隊長が指示を出す事を知っている。


「a隊は村で[竜の卵]を仕留めろ。bc隊は先行して待ち伏せる。」

「奴ら以外は農民兵みたいなもんだ。簡単な仕事だろ?」

3人の兵長の前で隊長が喋る。


「俺の隊は単独で聖女だの魔術師だのいる冒険者と殺りあうのか?」

a隊兵長がグズる。


「俺らは2隊で倍以上の冒険者と戦う事になる。農民兵とはいえ数は力だぜ隊長」

bcも愚痴りだした。

金払いの悪い隊長の威光は衰えつつある。


「女が3人。しかも1人は聖女様だ。なかなか犯る機会なんざねぇぜ。魔術師にはコイツをあてがいな。」

小さな壺を渡す。

aは女好きで、しかも女を壊すタイプだ。


「使い方は後で教える。何なら魔術師の前で、あのちっこいの犯ったら面白いだろうぜ」

魔術師と女盗賊は付き合ってると知って煽るのだから、隊長も人が悪い。


「それにaが合流すれば兵差は減る。うまくいきゃ挟み打ちだ。ボロ馬車もマシなのに変えられるぜ?」

隊長は思ってもない事を言う。


隊長の本心はa隊が全滅しても[竜の卵]を1人、2人殺せれば良い。

それで充分足留めは出来る。

そうすれば残りの隊でも護衛冒険者達と互角には戦えるはず。

獲物はこれ以上、(ふと)らないのだから、分前を渡す人数は少なけれれば良い。

先の事は資金繰りを立て直してからだ。

そんな所だろう。


「村に残るんだ、酒代ぐらいは前払いで頼むぜ隊長。」

aが下卑た顔のまま金をせびる。


「銀貨10枚を渡してやれ」

俺は隊長に鍵を借り、馬車の中の資金箱から金を出してやった。


「それと[竜の卵]からの収益金はうちの隊が貰うぜ。危険手当って言うやつだ」

aは笑いながら、銀貨の入った小袋を受け取り、bcは苦い顔してaを見つめる。


「酒は駄目だが、お前らも飯でも食ってこい。仕事が片付いたら浴びるほど飲もうぜ。」

隊長が兵長達に告げて解散になった。


破滅か延命か?

部隊の明日はどちらになるだろう。

この傭兵達は西から流れて来た部隊です。

私の黒歴史がまた1ページ。

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