靄
冷夏視点です。
照明は打ち上げで、ゆっくり落ちてきます。
なんだろう……。
ざわざわしている……。
ミケさんに蹴飛ばされた。
「起きろ!敵がきた!」
え?飛び起きる。
でも……蹴飛ばさなくても起きるのに……。
「数は8。ワイト。」
ミケさんはテントを飛び出してゆく。
『頭がまわってないな冷夏。』
『ワイトはアンデッドで通常武器は無効。』
『歩き巫女のお前が頼りだ。』
私もテントを飛び出した。
暗闇の中でも淡く光る黄色い靄に包まれたゴブリン4体。
同じく靄に包まれた革鎧を着た人間の死体4つが動いている。
気味がわるい。
「(どうすれば良いのマドウ!)」
死体が動いてるよ。
そうしている間に黄色ゴブリン2体が炎に包まれ燃え落ちる。
『使2残0ミケはもう打ち止めだな。』
「(そうなの?)」
『分析で1、照明で1、魔力付与で3、いまの火球で2、残0』
そういえば、ジグさんの剣もデグさんの斧もちょっと光ってる。
『簡易な魔力付与では攻撃が効きにくいが、前衛3人は大丈夫だろう。』
『問題は残り3体だ。こちらを狙って来てるぞ。ミケがうまく誘導してくれた。』
私、ミケさんに恨まれる様なこと何かした!?
黄色い靄が、ワイトがこちらに向かってきている。
冷や汗が吹きでる。
アンデッドが私を殺しにくる。
殺意がこちらに近づいてくる。
『どうした冷夏?』
『触れられなければ、なんともないぞ。』
「触れられたらどうなるの?」
『生命力を奪われる。3度も触られたら、彼奴等の仲間入りになる。』
ミケさんが私の肩を後ろからつかむ。
痛いよ。
「触られたら死ぬ。だから早く祈れ!」
う~ん。ミケさんいつの間にか後ろに……。
それに私また声に出してた?
「ほら、早く!死神に祈れ!」
私は混乱しながら、思い浮かんだ祈りの言葉を叫んだ。
「[死神よ、その鎌で、ワイトを、刈り取れ!]」
『?、冷夏?、普通は[死神よ、聖なる力で、ワイトを、滅ぼせ]とかではないか?』
(使6残2、狩り取っちゃいますよ~。でも、また死神とかいう人増えてますね~。どうしてですか~。)
3体のワイトが一瞬光った後に
真っ二つになり、そして崩れた。
翌日。雨も止んでいる。
「冷夏。転生者は伊達ではないですね。」
歩きながら、ミケさんが肩を軽く叩く。
昨夜、ロバートさん達もワイトを倒していた。
倒したワイトの死体はない。
アンデッドになった死体は塵になり残らないのだそうだ。
「もちろん、これは私と冷夏だけの秘密。」
ミケさんが顔を近づけてきて囁く。
同性でも鼓動が早くなる。
男の人なら一撃必殺だろうな。
ロバートさんは、戦場跡でのゾンビ討伐依頼の話をしている。
死体が残らないのに、報酬が1体いくらだったから、揉めたとか話している。
明日には街に着くそうだ。
なろうでは、ワイトとか地味なアンデッドとの戦闘少ないですよね。
強敵なはずですが、なろう系主人公は魔法や魔剣、聖剣、標準装備ですから。
私の黒歴史がまた1ページ。




